レオンは手綱を引き、イサベラの近くで馬を止めた。飛ぶようにして馬から降り、大股で彼女の元に歩き寄った。その目は、わずかな傷もないかと彼女の全身をくまなく調べていた。金色の瞳に怒りの炎が浮かべながら、イサベラの手首、足首の縛りを解く。
「怪我はないか?」 彼女の両肩をつかみ、身体を揺さぶるようにしてレオンは訊いた。イサベラは胸をこみ上がる感情に言葉も出せず、ただ首を縦に振るだけだった。
レオンはイサベラを立たせ、両腕で包むようにして抱きしめた。そして、縛られて擦れていた手首の肌に軽く唇を当てながら、馬へと彼女を抱きかかえ、こう言った。
「お前を城に連れ戻したら、お前の尻にいやと言うほどお仕置きをしてやろう!」
「ど、どうして? 私が何をしたと言うの?」
イサベラは彼の首に抱きつき、その首元に頬ずりした。温かい、そして懐かしい彼の匂いにうっとりとする。ではあれ、レオンの言った言葉に驚き、訊きなおした。
「いろいろあるが、中でも、夜中に俺を置き去りにしたことだ」
「ああ…あのこと…」 とイサベラは思い出した。彼の身体を縛りつけたこと。そして、その彼に自分からおこなったこと。それを思い出しイサベラは頬を赤らめ、身体をくねらせた。
~*~
「俺の目が届かないところに、もう二度と行ってはいけない。分かったな?」
レオンは部屋の中央、足を大きく広げ、両手を腰に当てた姿勢で命じた。イサベラは弱々しく頷いた。その命令に従う気がなくとも、彼がこの声の調子で言うことに逆らっても仕方ないと充分わかっているから。