ジョンは立ち上がって言った。「あっ、ビニーおじさん! ちょっと、友だちが楽しんでるだけだよ」
ジョンの叔父はジェシーと僕に目を向けた。そして、僕たちが楽しんでるわけではないことを察知した。
「お前の友だちは楽しんでるようには見えないぞ。何をやってるんだ? お前、この人たちを、ちゃんと、もてなしてないんじゃないのか?」
「いや、そんなことないよ、ビニーおじさん! 何も問題ないよ」
ジョンは、この場の状況について、この叔父に知られたくない様子なのが分かった。ひょっとすると、僕たちはこれでここから逃げさせるかもしれないと思い、口を出した。
「ちょっとジョンと馬鹿げた賭けをして、それで……」
「それで充分!」 とジョンが遮った。
「この人に話させるんだ」 とビニーが言った。
僕は説明を続け、ビニーにすべてを話した。
ビニーはちょっと黙っていたが、その後、ジョンに言った。「お前は、この女にラップ・ダンスをしてもらう代わりに1000ドル賭けたのか?」
僕はこの男に助けてもらおうと期待していたが、今になって、ジョンがどうして僕に黙るよう言ったのか、そのわけが分かった。この男は恐ろしい男だったのだ。
ジョンは何か言い始めようとしたが、ビニーは制止した。
「お前は知ってるはずだぞ。1000ドルだったら、女は、少なくとも2時間は、客が言うことを何でもするもんだ。20ドルのラップ・ダンスなんかじゃねえ。お前、なにバカなことを言ってるんだ」
「彼女なら、その価値があると思って…」 とジョンが弱々しく答えた。
「おい! 確かに綺麗な女だが、賭けが1000ドルで、こっちの男が払えねえと言うなら、この女にカネの分はやってもらうべきだろう」
ビニーはそう言ってジェシーに近づき、笑いながら彼女の顎に指をあてた。
ジェシーは恐ろしさに、後ろに下がった。
「どうやら、こちらさんはその気はなさそうだな」
ビニーはそう言って指をパチンと鳴らした。途端に、ふたりの男がドアから入ってきた。ビニーは男の一人に何か囁いた。するとその男は大きな拳銃を出し、僕の横に来て、僕の頭に銃を突きつけた。僕はごくりと生唾を飲み込み、ジェシーはハッと息を飲んだ。
「いいか、これが取引だ。お前の旦那は俺の甥と賭けをした。1000ドル分のサービスを賭けてな。俺はこの店のオーナーだから、場所代の分け前がある。2時間、しっかりサービスしてもらうことだ。最初は俺にラップ・ダンスをし、その後、俺がセックスできるよう、その綺麗な脚を広げることだ。もしこれに応じなかったら、お前の旦那は死んだものと思え。分かったか?」
ジェシーはおどおどしながら頷いた。そしてかすれた声で言った。「あなたが言うこと、何でもするから。だからお願い、あの人に銃を降ろすように言って」
ビニーは頷き、男は銃をふところのホルスターに戻した。
「いいか? 素直に俺の言うことを聞くことだな。それにお前の旦那も妙なことを考えんことだ。さもないとお前たちふたりの死体を湖に投げ込むことになるからな」