部屋を出たノボルは玄関ドアを閉め、何か知りたそうな目をしてゲンゾウの顔を見た。
「それで? お前はどう思う?」 と日本語で訊いた。
「いや、私は答える立場にありません」
「ゲンゾウ、お前は私の友人だ。お前の意見を買っているんだ。お願いだから、率直に意見を述べてくれ」
ゲンゾウはちょっとためらっていたが、ようやく口を開いた。
「私はあの方のやり方に慣れておりません。アンジェラ様は私がそばにいることを拒否なさるでしょう」 と言い、そして間をおき、付け加えた。「アンジェラ様はとても奇妙な質問をされました」
「例えば?」
「あの方は、今回の任務について、私自身がどう感じているかをお聞きになりました」 とゲンゾウは、あまりに滑稽な質問だと言わんばかりに鼻で笑った。「まったく的外れな質問です」
「アンジェラは人の気持ちを心配しているんだよ。彼女はそういう人なんだ」
「アンジェラ様の執務室にセキュリティ・カメラを設置するだけでは、なぜ駄目なのでしょうか? 私には理解できません。その方がずっと安全だし、はるかに効率的なのに」 とゲンゾウは、苛立ちを感じさせる言い方で尋ねた。
ゲンゾウが新しい任務にこんなに強く反応しているのは珍しいとノボルは思った。
「アンジェラは医者なので患者の信頼を維持しなければならないし、患者の了解を得ずに監視すると、多くの法的問題になる可能性があるからね。彼女の人生は、わたしのせいで、すでに軌道を外れてしまっている。これ以上、悪いことにならないようにしたいんだよ」
「ワカリマシタ[Wakarimashta]。明日、また来ます。オヤスミナサイ[Oyasumi-nasai, gozaimasu.]」 ゲンゾウは頭をさげ、エレベーターに乗り、ノボルの前から姿を消した。
「あの人、面白そうな人ね」 ノボルが部屋に戻ると、アンジェラはちょっとふざけ気味に言った。
「まだ察せていなかったとしたら言うけど、ゲンゾウは非常に日本人的な男なのです」
「彼とはどうやって知り合ったの?」 とアンジェラはベッドの自分の隣のところをトントンと叩いて言った。
ノボルはベッドに上がり、アンジェラの頭を膝に寄せ、彼女の髪を撫でた。指に絡まる髪の絹のような感触が心地よい。
「たいていの日本人同様、ゲンゾウは個人的なことを明かすのを極度に嫌っているのです。私も、ゲンゾウへの敬意から、彼の許可なく彼のことを明かすつもりはありません。ただ言えることは、彼はシノビ[shinobi]であるということだけ」
アンジェラは驚いて身体を起こした。「ゲンゾウは忍者なの?」
「ええ」 とノボルは驚いたアンジェラを横眼で見た。
「うわー、私にはサムライの彼氏と忍者のボディーガードができたということ?! すごい! 私の人生はいつからこんなに面白くなったのかしら?」
ノボルはアンジェラを抱き寄せ、身体を回して、彼女を自分の上に乗せた。
「上になって」
「ノボル? 疲れることがないの?」 アンジェラは身体の下、ノボルがすでに固くなっていて、下から突き上げてくるのを感じた。
「私はあなたのことを4世紀も待っていた…」 ノボルはアンジェラのあそこの唇を分身で開け広げながら言った。「…私が疲れるのは、まだまだ先です」
アンジェラは彼が中に入ってくるのを感じ、ハアーっと溜息をついた。