「どうして? 僕たちの結婚前から君とダンが愛し合っていたなら、そもそも、どうして僕と付き合いを始めたんだ? なぜダンと結婚しなかったの? 結婚までとは言わずとも、同棲したら良かったじゃないか。どうして僕を巻き込んだんだ?」
「まず最初の質問に答えると、ダンには奥さんがいるの。二つ目の質問には、私はあなたが大好きになったのが答え。法律事務所のあの資料室であなたと出会ったあの日、私、あなたのこととてもキュートだと思ったわ。あなたの私への接し方も大好きだった。バーに一緒に行っても、あなたは決してその状況を利用して私に手を出したりしなかった。あなたはいつも完全に紳士的に振舞っていた。それからの3ヶ月、あなたはこれ以上ないというほど、完璧に振舞っていたわ。だからケルト祭りに一緒に行ったときには、すでに私はあなたにぞっこんになっていたの」
僕はどういうことなのか状況を理解しようと、質問した。
「ダンの奥さんは、君たちがずっと付き合ってることを知ってるの?」
「いいえ。ダンの奥さんは、8年前から医療施設に入っているのよ。多分、施設からは出てこれないでしょう。ダンは、世間体のことを考えると奥さんと離婚はできないし」
アンジーの声にはちょっと悲しみを感じているような雰囲気があった。
「でも、本当に分からないのは、どうして、僕と結婚した後もダンと会っているのかだ。たいていの人は結婚したら、他の人と会うのをやめるものだよ。少なくとも、何年間かは…」
アンジーは僕の声に怒りがこもっているのを察知したと思う。
アンジーは目を逸らして言った。「どうして私がダンと会い続けているか、その理由は知らない方がいいと思うわ」
僕は苛立ちを感じながら言った。「アンジー。話すんだ。君は軽はずみな10代の娘じゃあるまいし、僕に結婚を申し込んだときに、自分で何をしているか分かっていたはずだよ。あの時ですら、君はダンとヤリまくっていたんだろ?」
「ええ、そうよ! あの時もヤリまくっていたわ。というか、彼にヤリまくられていたと言うのが正確だけどね」 アンジーは明らかに怒っていた。「本当にわけを知りたいなら話すけど、あなたは、私の答えを気に入らないと思うわよ」
僕は、この話し合いをクールダウンしたいと思った。互いに大声で罵りあっても、ほとんど良いことはないだろう。僕はできる限り落ち着いた声になって言った。
「君は僕を好きになったと言ったし、僕も君が好きになったのも事実だ。ふたりは愛し合っているんだ。だから、もし、僕たちの関係で何か問題があるとしたら、それをふたりで解決しようよ」
アンジーも落ち着きを取り戻したようだった。
「私たちの関係は、ほとんど完璧だわ。一つも変える必要はないと思うの。私がダンの元に戻ってしまう理由は一つだけ。でもそれは変えることができないこと。だから、私たちは、いわば手詰まり状態にあるの」
アンジーの言う問題が何であるか、僕には分かっていた。そして、それを修復する方法もないというのはアンジーの言うとおりだった。
「僕のペニスの大きさ。それなのか?」
アンジーはほとんど笑い出しそうになっていたが、何とか堪えたようだった。
「あなたの脚の間にあるあの小さなモノをそう呼びたいなら、ええ、そうよ。あなたが気づいていたかどうか分からないけど、私は一度もあなたのアレをペニスと呼んだこともおちんちんと呼んだこともないわ。ダンにはちゃんとペニスがある。大きくて太くて、私をイカせることができるおちんちんが、ちゃんとあるわ…
「…でもね、あなたの小さいアレが入ってきても、私、ほとんど感じられないの。少しでもあなたに挿入していると実感してもらうためには、私の方から筋肉を使って締めつけなくちゃいけないのよ。でもね、それって大変だし、身体が痛くなってしまうの。だから快感なんて全然感じない…
「…現実をちゃんと見据えましょう、ジャック。あなたとの性交は、1本指でされているようなもの。それが私にとっての現実。もっとも指なら少なくともクリトリスも擦れるから、イクことはできるけど。あなたのアレではダメ」
「すまないが、これでも最善の努力はしているんだ」 と僕は憮然として言った。
アンジーは頷いた。「ええ、可愛い子ちゃん、あなたが努力しているのは知っているわ。でも悲しいことに、それでは充分でないのよ。誤解しないでね、あなたは素敵な人で、大好きなの。でもあなたの小さなアレはがっかりなの。あなたのアレは小さすぎて私を満足させられないばかりでなく、あなたにはダンのようなスタミナもない。他のことは何もかも素敵なのよ。舌やお口を使って私に何度も素敵なオーガズムを与えてくれた。でも、私が本物のおちんちんを欲しくなった時はダメなの。あなたには適切なものが備わっていないのよ」
これまでの人生でこんなに気落ちしたことはなかった。うつむいてテーブルを見つめながら僕は言った。
「じゃあどうしたらいいの? 僕は自分の身体は変えられない…」