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私の離婚弁護士が木曜の朝に電話をくれた。スーザンへの離婚訴訟を開始した時、弁護士と私との連絡は、会社の交換機を通してではなく、私の携帯電話を通して行うよう指定した。今は「リサ」も自分の携帯電話を持っているけど、私は、まさにこのために元々の携帯電話を保持していた。アンジーのことはとても尊敬しているけど、そしてそれゆえに、私自身の「汚れた洗濯物」をアンジーにも、会社の他の誰にも知られたくなかったから。今から思うと、私は先見の明があったと喜んでいる。
その弁護士は調査士を使って、多くのことが説明できる情報の金脈を探り当てていた。
まず、ジェフ・スペンサーには大きなギャンブル問題を抱えているということ。「何百万ドルのスター選手」とは言われつつも、ギャンブルの胴元にかなりの借金をしているらしい。スーザンは経済面で彼の面倒を見てきているのだが、スター選手にふさわしい生活を見せかけるために、今は彼女も借金の限界まできているようだ。どうりでスーザンは私に戻ってきてほしいと言うわけだ!
で、スーザンはどんな策略を使おうとしているのだろうか? 私と生活しながら、愛人を支えるためにこっそりと私からカネを吸い上げる? それとも、「大変な間違いをしていたの。全部、私のせいよ。だから私を許して?」と言って、ゴミ収集に出すように、あのクオーターバック選手を捨て去る? だけど、スーザンは、ジェフを捨てたとしても、また新しいカラダを求めて漁り始めるまで、どのくらい我慢するだろう? もう、まっぴらだ。
もうひとつ、気になる展開があった。電話の傍受により、ジェフと、おそらく女性と思われる別の人との間で怪しい行動パターンがあることが分かった。最初、調査士は、ジェフにはスーザンの知らない愛人がいて、そのうちの一人だろうと考えた。しかし、傍受した通話の録音によると、ジェフはある種の罠を仕掛けているらしく、しかもその罠のターゲットは私だということが分かった。
明らかに、その罠の意図は、公の場で、私の個人的な評判を落とすことにあり、それによりスーザンが「公然で悪質な不貞」(
参考)との私の主張をかわし、私からカネを巻き上げることを可能にする目的なのだろう。
現時点では、この策略にスーザンが絡んでいるかどうかは分からない。録音にはスーザンの声が一度も現れなかったからである。通話は、プリペードの使い捨て携帯電話を通じて行われており、調査士は発信元を突きとめられなかった。
いま、調査士は携帯電話会社の記録を入手しようとしているところである。それがあれば、通話を扱ったアンテナが確定でき、少なくとも、この人物が地理的にどこにいるかを割り出すことができる。
一方、弁護士は私に、仕事の上でも私生活でも細心の注意を払うようにと警告している。法的にまずいことになりそうな行動にかかわらないようにと。もっと大切なことは公的な評判を落とすような行動は慎むようにと。
ああ、とうとう言われてしまった!
これは陰謀論者の甘い夢ではあるが、こういう話も考えられると思う。ジェフが接触している人は「女性と思われる」人物だった。最近、私の人生には「女性」が新たにたくさん関わってきている。その大半は、仮に公にされたら私の目の前で確実に大爆発を起こすことになる方向へ私を追いやるのに夢中になる人たちと言える。
そういった方向は、実際、会社組織的にも確定されたばかりだ。つまり、「ランス」は職場を去り、代わりに「リサ」が重役に就任したのである。その措置を夢中になって推進したのはアンジーだった。アンジーは、いわば脅迫して私をその方向へと追いやった。
それに、ダイアナについても、私にそれはやめておいた方がよいと説得したわけではなかったし、リンガーズの女の子たちも同じだった。
もっと言えば、ダイアナというゴージャスなTガールと会うようになったのは、まさに彼女がジェフと「デート」したからというのが理由だった。ついでに言えば、仮に私がスーザンと別れようとしていることに彼女が仕返しをしようとしてるとして、その目的にとっては、私がダイアナと付き合っているというのは、まさにうってつけのシチュエーションになるだろう。そもそもスーザンと別れる原因を作ったのがスーザン自身なのではあるが。