48時間後、スティーブは、ラファエル・ポーター氏とポーター夫人、それに彼らそれぞれの上司の電話番号を入手していた。ポーター夫妻のそれぞれが勤めている会社の職員に加えて、バーバラが働いている会社の職員も、2、3人ほど、事情をかんがみてか、快く、所有しているEメール・アドレスのリストを提供してくれた。調査会社は、それぞれの個人のEメール・アドレスブックを3、4人分調べ、ポーター夫妻とバーバラがそれぞれ働いている会社の全職員の自宅と職場のEメール・アドレスを事実上すべて網羅したと考えて妥当だろうと判断した。
スティーブは、ポーター夫妻が所有している3台の車のすべてについて、ナンバープレートの番号、登録情報、車種などの情報を得た。加えて、ポーター家の住所と職場の住所も得ている。調査会社から送られた報告書には、おそらくスティーブが決して使わないような山ほどの情報に加え、ポーター氏とポーター夫人、それぞれの、仕事上の生活と私生活の両方について、手際よくまとめた文書も含まれていた。
その情報の大半は、公的な領域にすでに存在している記録から、少しずつ収集されたものだった。恐らく、その情報のうちのいくつかは、厳密に言って、ポーター夫妻やバーバラが働いている会社の職員でない人間とか、彼らが所属しているクラブや組織とは関係ない人間に知らされるようには、想定されていないものだろう。だが、そのような情報に含まれている住所を所有したり、Eメール・アドレスにメールを送ること自体は違法ではない。
「報告書」は10センチ近くの厚さのバインダーに綴じられており、その情報をすべて吸収するには、さらにもう2日ほどかかった。スティーブは、その2日間、仕事を休み、図書館に行って、それを読んだ。スティーブがその時間、職場を離れても十分なほど、新ビルの建築ははかどっていたし、スタッフの組織化も整っていた。スティーブは、写真、記述、その他のデータを、すべてを十分に把握したと感じられるまで、頭に入れた。
スティーブは、書類を見ながら、この数日、常に彼にくっついて離れない鈍い怒りが、間歇的に、最大級の激怒に燃え上がるのを感じた。そのたびに彼は、それが完全に外に現れてしまう前に、気持ちを抑制したのだった。
彼は、この手にした情報すべてを持って、バーバラと対決したいと思った。もっと重要なことは、バーバラの意表をついて、突然にこれを持ち出し、彼女を驚かしてやりたいと思っていた。彼は、心にイメージを思い浮かべて内心喜んだ。彼女がバカな男と思い、影で不貞を働き、裏切った夫。だが、その夫は、彼女が思うほど間抜けではなかったと見せ付けてやるのだ。そのとき彼女の顔に浮かぶショックの表情。スティーブは、それを見たくて待ちきれない思いだった。
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