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ライジング・サン&モーニング・カーム 第8章 (9) 


「トン・ジャエ・サー[Tong Jae Sah:水軍総督] イ・スーン・シン!」 チェンは痛恨の思いに啜り泣きし、両膝をついた。「死に際してすら、あなたは私を救ってくださった」

ノボルは兜を脱ぎ、辺りを見回した。本来なら、この露梁海戦(イムジン海戦)の終わりを祝う場面であったはずの光景だったが、今は、兵士たちは皆、膝をついて悲嘆にくれている。7年にわたって祖国を共に守ってくれた人物が失われてしまったことを嘆いている。

「あなたはやり遂げました…。あなたのおかげでこの国の人々は守られました」 ノボルはそう呟いた。

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国は、偉大な英雄の死の知らせを受け、喪に服した。最大の勝利を収めた、まさにその日の前夜の突然の死であった。ノボルは左全羅道水軍基地の高台に立ち、7年の長きにわたって2国間の戦場となっていた海を見つめていた。

「ナガモリ様、お邪魔してもよろしいでしょうか?」 落ち着いた声で誰かが話しかけた。

振り向くと、そこにはクォン・ジュン(Kwon Jun)がいた。総督の副指揮官の一人で、親友でもあった男だった。彼はノボルの隣に立っていたのだった。

「いや、どうぞ……」

ふたりはしばらく無言のまま海を見ていた。そしてようやくノボルは口を開いた。「あなたがたの総督のおかげで、朝鮮は無事ですね」

クォン・ジュンは、水平線を見つめたままだった。ノボルの言葉に影響を受けていない様子だった。

「いまのところは」

ノボルは彼の謎めいた返事に片眉を上げた。「どういうことで?」

「総督は驚くべきお方でした」 とクォン・ジュンは小さく笑った。「チェン・リエン総督は、イ総督の卓越性を見て、彼が本当に明の人間ではなく朝鮮の人間なのかと、よく不思議がっておられました」 

あの明総督が実に傲慢で頑固であることを考慮すると、その言葉は大きな褒め言葉であることが分かる。

「そうですね。今後の歴史で、彼ほどの不敗の戦績を持つ軍将が出ることはないのではないかと、私も思っています」 とノボルは答えた。


[2013/08/16] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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