「レインさん、お会いできて嬉しいです」 と彼はよく響く声で言った。「素晴らしい評判を得てるお方のようで」
「評判のことは聞いたことがあります」と私は溜息をつき、少し後悔気味に笑った。「でも、ありがとうございます」
大きな手で握手された。とても優しく握られたけれど、ぎゅっと力を入れて握られたら、骨が砕けてしまうだろうと容易に想像できた。椅子に座るよう勧められて、ほっとした。彼の前にいると、膝ががくがくしてきて、立っているのが辛くなってきたところだったから。
そんな私の心境を彼も一目で見抜いたのを知っている。でも、彼の態度はただ物静かに私のことを称賛するだけに留まっていた。
チラリと彼の手に視線を落とし、指に結婚指輪をしてないことに気づいた。でも、どうして、私はそんなことが気になったのかしら?
「アンジー! またあなたに会えて嬉しいですよ。すべて順調だよね? 君のソレ、とても美しく見えるよ」
私は振り向いてアンジーを見た。そして「あなた、私に隠していたのね?」という顔をして、彼女を見つめた。アンジーはただ苦笑いして、ちょっと肩をすくめてみせた。
「先生、とっても順調よ。これ以上ないほど」 とアンジーは明るい声で答えた。「私のコレについては、ずっと素敵な褒め言葉しかもらってきてないわ。それもあったから、私たち、今日ここに来たの。私のお友達のリサも私のコレをとても愛してくれて、だから彼女……。そうねぇ、あなたから言ってよ、リサ?」
罠なのか? 全然、関係ないことなのか? ともかく、これは私を困った立場に追いたてるようなことではない。とりあえず、甘い言葉で調子を合わせること。この安っぽいドラマで、この調子で引っぱり続けること。悪い連中をうまくなだめて、安心させる。そして、連中が頭を上げてきたら、その時は、どっかーんと!
「私、とても恥ずかしくて、うまく言えないんですが、アンジーの胸にとても魅了されてしまって…だから……彼女のような胸が欲しいんです」
「胸だけ?」 とレーガン医師は興味深そうに訊いた。
それを聞いて、首の付け根から髪の毛の生え際まで顔が火照るのを感じた。アンジーが私の手を握った。
「彼女、とてもシャイなの…こういうことについて、とても恥ずかしがっていて。でも、彼女が言おうとしてることは、全部、欲しいということ。おっぱいも、お尻も、腰も、全部。彼女のウエスト・ラインについては、すでに始めているのよ」
レーガン医師が椅子から立ち上がり、こちらにやってきた。
「ちょっと、いいですか?」 と彼は私の胴体に手を伸ばした。
彼はちょっと腰のあたりを触った。私がコルセットをつけているのを知っても、灰色の瞳をちょっと輝かせ、口元に笑みを浮かべただけだった。
「すでに素晴らしい評判を得ているのに加えて、変身も順調のようですね。そもそも、最初から良い体つきをしているようです。ちょっとマイクロレベルで脂肪吸出をして、変身の過程をお手伝いできると思いますよ。本気で砂時計の身体が欲しいのでしたら、肋骨の一部を取り除くという選択肢もあります。それに、お鼻のこのあたりをちょっと削るのもいいかも…」
と言いながら彼は指で私の鼻に触れた。
「…そうすると、もっと可憐なお顔になりますね。それに目元を少しだけ引き上げると、さらにエキゾチックな雰囲気も出てくるでしょう。もちろん、気管も削って…」
と彼は2本の指で喉のところを触れた。
「…この見苦しい出っ張りもなくせます。それらすべてを一回の手術でできますよ。術後1週間で仕事に戻れますし、4週間でほぼ完治状態になります」
「…素晴らしいわ」 と私はためらいがちに言い、自分から話しの方向を次の話題に導いた。「でも、胸は? 胸と他のところは?」
レーガン医師は顔を輝かせながら、デスクにお尻を乗せた。