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再生 (10) 

ガスが返事をくれた。できるだけ自制するつもりだと言っていた。それに、その女の子は明瞭に写った写真を持ってくること、および、先に送った書式に記入して返送するように言っていた。その後、いつどこで会うかの指定と、かかる費用について知らせてきた。費用は5000ドルとのことだった! これは俺が予想していた額を上回る額だったが、ガスは悪い奴ではないのは俺も知っている。

俺は早速、書式に記入した。新しい名前はアナスタシア・ハーパーにして送り返した。苗字のハーパーは俺の苗字であるが、こうしておけば、俺の従妹と主張するのに都合がよいだろうと思って選んだ。

そこまで作業を終えると、後は今の仕事から辞職することだけが残った作業だった。だが、今日は日曜なので、辞職願を出すのは明日まで待たなければならない。

ひと段落終え、俺はフードコートを出て、モールの中を歩き始めた。

歩いてみて、初めて男たちの視線を感じた。みんなじろじろ俺の身体を見ている。さっきまでは空腹で頭がいっぱいで気がつかなかったのだが、今ははっきり分かる。実際そういう視線を浴びてみると、ある意味、気持ちいいものだったが、同時に、裸にされているような気にもなった。

だが恐ろしく感じたこともあって、それは、そういう男たちの何人かがキュートであると思ったことだった。知らぬ間にそう感じている自分がいたのだ。以前は、こんなふうに思ったことは一度もなかった。だが、あの怪物が俺にしたことや、俺が自分でやってることは、見方によっては、明らかにゲイっぽいことだろう。

まあ、これは困ったことだが、とりあえず、考えないことにし、さしあたり必要となる物を探していろんな店を見て回ることにした。

以前は身長が高く、周りのみんなを見降ろしていたのだが、それに慣れた感覚からすると、周りのほとんどの人より背が小さくなってる今はちょっと奇妙な感じがした。

まずはH&Mでソックスとカジュアル服をいくつか買った。それに可愛いトップやスカートやドレスも何着か。それからビューティ・サロンに行って、髪を切ってもらい、マニキュアとペディキュアをして、化粧をしてもらうと同時に眉毛も整えてもらった。この眉毛のシェーピングがやたら痛かったのには驚いた。

化粧してもらう時、担当の女の子がどういうふうにするか注意して見ていた。いずれ自分でできるようになればと思ってである。だが、こんなに上手にできるか自信がなかった。それほど、素晴らしい出来栄えだったから。俺ってこんなに綺麗になれるのか!

すっかり綺麗にしてもらった後、必要となる化粧品や髪の手入れ用品を全部買ってサロンを出た。そして、またモールの中を歩きだす。途中、写真のブースを見つけ、新しい身分証明のために必要となる写真を撮った。

次に見つけたのは靴屋だ。早速、女物の靴を何足か買った。大半は俺が履きやすい靴だ。明るい色の可愛い布製スニーカーとか、ちょっとドレッシーな平底靴だ。だが、膝まであるスウェードのブーツがあって、どうしても我慢できず、買ってしまった。ゾクゾクするようなスティレットのハイヒール・ブーツなのである。こんなブーツ、履いたとしてもどうやって歩いたらよいかさっぱり分からなかったが、トライしてみるのも面白そうだと思った。

俺は店の中で濃紺の二―ソックスに履き換え、買ったばかりのすごく可愛い赤いスニーカーを履いて店を出た。


[2013/08/29] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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