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裏切り 第8章 (10) 

あまりに多くの情報に、頭がクラクラする感じだった。豊胸などの身体改造に同意したのは私の策略だった。仮に、陰謀をたくらむ者たちが私が改造をするつもりだと知ったら、その展開に満足し、自分たちの手の内を露わにするかもしれない。

実際にメスで身体を切られる前に何か事を起こすとして、2日間は余裕がある。それに、実際に身体改造をするとしても、レーガン医師が言うとおりだとすると、まったく手術を受ける必要がないかもしれない。

ジェフ・スペンサーの電話につけた盗聴器が重要なことを明らかにしてくれるかもしれない。それに、何度も自問してきたことだが、ジェフが私を潰す計画が本当に「リサ」と関係があるとする証拠がそもそもあるのだろうかという疑問もある。アンジーには嘘はついていない。ただ、ともかく、リラックスしたかった。でも、疑わしい人とリラックスするのは避けたかった。

熱いフライパンから逃れて、火の中に飛び込んでしまうとは、このことか?……私はダイアナに電話した。ダイアナはこの夜は何も用事がないと言った。

私はダイアナをアーミテージ通りのゲジャの店(参考)に連れて行った。フォンデュの専門レストランである。私は前からライブのクラシックギター演奏が大好きで、それを聞くのが最もくつろいだ気分になれる。それが欲しい気分だった。

テーブルに置いてあるピーナッツ・オイルのフォンデュー壺にフォークでステーキ、チキン、ロブスター、生野菜を挿し入れ、さっと熱を通して私の手からダイアナに食べさせた。そうしていると、この前の日曜日にピザで誘惑した時のことが頭によぎった。

そしてデザートの時間になった。エンジェル・フード・ケーキ(参考)、マシュマロ、それに生フルーツを熱いチョコレートに浸して食べるデザートだった。

ダイアナは目を輝かせていた。多分、彼女はフォンデューのフォークで互いに相手にデザートを食べさせあうこととは違うことを思っているのではと思った。

私がサクランボをチョコレートに浸し、彼女の唇の前に差し出すと、彼女は舌を伸ばし、滴るチョコを優しく舐めて見せた。その姿はお金では買えないほど素晴らしく、この夜のディナーの費用全額に値するものだった。チョコを舐め取った後は、歯で優しくサクランボを挟み、フォークから引き抜き、美味しそうに食べた。その繊細な食べ方と言ったら……

少なくとも、何とか家の玄関を過ぎるまでは我慢できたが、玄関ドアを入るとすぐに、ふたりとも引きちぎるようにして相手の服を脱がせ始めた。うねりのように高まった情熱に、寝室に行くのすらもどかしく、素裸になった私たちは暖炉の前の深いじゅうたんに横たわった。デュラ・フレーム(参考)の薪は軸の長いマッチならマッチ1本で着火できる。部屋の照明は燃える薪の火だけでも、燃えてるのは薪だけではなかった。

その夜、最初のセックスは愛しあうというものではなかった。何日も離れていたことにより生れた切実な欲望を満たしたいという気持ちから、狂ったような、欲望を剥き出しにした切迫した身体のむさぼり合いのようなものだった。少なくとも私にはそうだった…。彼女に私の中に入れてもらって初めて完結できる。もし、ダイアナが陰謀に関わっていると知ったら、私は心を粉々にされるだろう。でも今は、その可能性を心の中から消しておきたいと思った。今はただ流れに身を任せたい……


[2013/09/01] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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