俺はまたトリスタと見つめあった。美しい緑の瞳。見てるだけでうっとりしてくる。
「私、今日は何もできないの。タミーが休むって連絡入れてきたので、早めにバイトを終えることができないし、夜も教会でビンゴ大会を開くからってお父さんの手伝いをしなくちゃいけないの」 とトリスタは顔をしかめながら言った。
「それはいいよ。しょうがないよ」 と俺は言い、彼女の指をぎゅっぎゅっと握った。
「多分、明日の午後なら、一緒に何かできると思う」 と、トリスタは店の客たちを見回した。
「ああ」 と返事し、俺はコーヒーを一口すすった。
その時、俺の脚のふくらはぎあたりを誰かの足が優しく愛撫するのを感じ、俺は危うくコーヒーを吹き出しそうになった。俺はカップを置いて、両手を腿のあたりに降ろした。そうするついでにテーブルクロスを少し動かし、下をチラリと覗いた。
驚いたことに、バルが足で俺の足首を擦ってる。バルは顔を上げ、俺を見てニヤリと笑い、何食わぬ顔でコーヒーを啜った。俺はトリスタに気づかれないようにと、顔を上げ、再び彼女の瞳を見つめた。
「今日は、一緒にビーチに行けたらいいなと思っていたんだ」 と手を握りながらトリスタに言った。
「ああん、一緒に行けたら面白そうなのに…」 とトリスタはがっかりした顔になった。
「うん、そうだね…。でも、また別の日に絶対…」 と俺はコーヒーを注ぎ足しするトリスタに言った。
「トリスタ? もう休憩時間は終わりだよ」 とカウンターの向こうに立っていた店主がトリスタを呼んだ。
トリスタは素早くブースから出て、立ち上がった。そして向こうで手を振って呼んでいる店主を振り返った。それからまた俺の方に向いて、手でキスを送る仕草をした。本当はキスしたかったのだろうが、俺とトリスタの間にバルがいたので、できなかったようだ。
「今夜、電話して」 と言い残して、トリスタはカウンターの向こうへ戻って行った。
その後、俺は座ったままコーヒーを飲んでいたが、隣にバルが座っているのが、何だか変と言うか、居心地が悪い感じだった。バルは俺の隣に座ってるばかりか、俺の方に身体をもたれかかってもいたからだ。足はまだ俺の脚の上に乗せてるし、俺の瞳を覗きこんでくる。
「もし連れが欲しいなら、私が一緒にビーチに行ってもいいわよ」 とバルは笑顔で言った。
俺はすぐに返事をせず、ひとくちコーヒーを啜って間を置いた。コーヒーを飲み、カップを置いてからバルの目を見つめた。
「ちょっとやめておこうかな」
そう答えると、バルの顔が笑顔から、しかめつらに変わった。
「おねがーい」 とコーヒーに指を入れて、指でかき混ぜながら言う。
返事しようとした時、バルがその指を口に入れ、唇をすぼめて、ちゅーっと吸い、そしてゆっくりと出すのを見て、一瞬、声を出せなくなってしまった。
「ほんとに、お願いだからーん」 と頭を俺の方に傾け、下から俺を見上げる。
この交換留学生が、こんなふうに誘惑遊びをするのを受け、俺の分身がズボンの中で息を吹き返してくるのを感じた。トリスタの姿を探したが、どこにも見えなかった。昨日会ったとき、ひょっとしてバルは俺に気があるのかもしれないと思ったが、今日のこの態度で、その印象は確信に変わった。
「たぶんね」 と答えながら、俺は視線をバルの美しい茶色の瞳から、彼女の胸の谷間へと移動させた。