「ライジング・サン&モーニング・カーム」 第9章 The Rising Sun & The Morning Calm Ch. 09 by vinkb
*****
これまでのあらすじ
16世紀釜山。地元娘ジウンは日本人ノボルと知り合い、ふたりは結ばれた。しかし翌朝、ジウンはノボルの弟サブローらに強姦され、自害する。それに反発したノボルは秀吉に不死の刑を科され、狐使いの美女に半人半獣の身にされてしまう。時代は変わり現代のシカゴ。女医アンジェラはノボルと知り合い、デートをし、セックスで強烈な快感を味わう。ノボルは自分が半人半獣であることを打ち明け、目の前で変身して見せた。その後、二人はアンジェラの家に向かうが、ノボルは何か危険を察知し、彼女を連れて自宅に帰る。サブローが生きててノボルを追っているらしい。ノボルは自分の身体の生化学的な研究を進めていることを説明した。そこにアンジェラのボディガードとしてノボルがつけた男、ゲンゾーが現れた。ノボルは過去を思い出す。狐使いを殺した時のこと。文禄慶長の役での朝鮮水軍の李舜臣との交流のことを。
*****
ゲンゾーはノボルのペントハウスへ上がるエレベーターの中、足をカツカツ鳴らし、苛立ちを露わにしていた。彼はノボルに朝の8時きっかりに来るように指示を与えられていたが、今は8時10分。電話をかけても、全然出ないからだ。幸い、守衛スタッフはゲンゾーがノボルの部下だと知っていたので、問題なくゲンゾーをマンションに入れてくれた。
ゲンゾーは、エレベーターを降り、一体どうなってるのだろうと、ノボルの部屋の前に来て、ドアをノックしようとした。するとドアの向こうから悲鳴や唸り声が聞こえる。ゲンゾーは苛立った溜息を吐きつつも、ふたりがことを終えるまで待った。そして、ノボルが切羽詰まった声で「イク[Ikku]!」と言うのを聞いて、ゲンゾーは携帯電話のリダイヤルボタンを押した。
「モシモシ[Moshi moshi]」
と荒い息の声でノボルが出た。後ろの方でアンジェラがハアハア喘いでいるのも聞こえた。
「ノボル殿、ゲンゾーです。いま玄関の外におります」
急に電話を切る音がし、その30秒後に玄関ドアが開いた。ノボルは顔を赤らめ、済まなそうな様子でゲンゾーに中に入るよう促した。
「申し訳ない、ゲンゾー」 と彼は日本語で言った。
「いや、お謝りになる必要はありません」とゲンゾーは丁寧に答えた。
少し遅れて奥のバスルームからアンジェラが姿を現した。彼女も頬を赤らめ、シャツの前をぎこちない手つきで整えながら出てきた。
「オハヨウ、オジョウサマ[Ohaiyo, Jo-Sama]」 とゲンゾーはお辞儀をした。
「おはよう、ゲンゾー。アンジェラは大丈夫よ」
そう言ってアンジェラは靴を履き、ノボルに情熱的なキスをした。ゲンゾーはそれを見て不服そうな顔をしていたが、アンジェラには見えない。ノボルはキスをされながら不謹慎にも彼女の身体を触りまくり、アンジェラはそうするノボルがローブの中、分身を固くさせて行くのを感じた。そしてそのローブの中に手を差し入れようとした時、ゲンゾーがわざと大きく咳払いするのを聞いた。アンジェラは口を尖らせながら、ノボルの腕の中から抜け出た。
「ランチは家で食べよう」 とノボルは彼女の耳元に囁きかけ、軽く耳たぶを噛んで、彼女を離した。
「そうするわ」
アンジェラはゲンゾーに付き添われながらエレベーターに乗った。ドアが閉まるとアンジェラは恥ずかしそうにゲンゾーを見て、言った。「さっきはごめんなさい」
「いいえ、私に関係のないことですから」とゲンゾーはアンジェラを見もせず、事務的に言い、「それと、あなたのボタン、ひとつ外れていますよ」と付け加えた。
「えっ?」 とアンジェラはビックリして胸元に目を降ろし、ゲンゾーの言うとおりなのを見た。「…ちぇっ!」
アンジェラは服の不具合のことに気を取られ、彼女が蓮っ葉な言葉を使ったのを聞いてゲンゾーが驚いた顔をしてるのに気がつかなかった。