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ライジング・サン&モーニング・カーム 第9章 

ゲンゾーに付き添われて、アンジェラは彼女の診療所についた。鍵を開け、中に入った。ゲンゾーは待合室の椅子に座り、鞄からノートパソコンを出した。

「あら、ゲンゾー? あなたも中に入っていいわよ。最初の患者さんは9時まで来ないから」

ゲンゾーは無言のまま、彼女の後について中に入った。彼は窓際の梁に腰を降ろし、忙しそうにパソコンで作業を始めた。その間、アンジェラはその日に予約がある患者のための準備をした。

アンジェラには、ゲンゾーが彼女に注意を払っている様子がまったくないように見えた。このような人にガードされるというのも変な感じがした。8時55分になると、ゲンゾーは静かにノートパソコンを閉じ、アンジェラを見るでもなく部屋を出て、元の待合室の椅子に座った。

アンジェラは、その日の午前のセラピーで、何かが普段と違うことに気づいた。もちろん、彼女はいつも患者の感情に同調し、注意を払っているのではあるが、この日は、特に患者の精神状態がいつになく明瞭に知覚できているような気がした。

ある患者の診察時、アンジェラは休暇を取る予定だとその患者に伝えた。するとその患者は、表向きは陽気な顔をし、休暇を楽しんできてくださいと言っていたが、アンジェラは患者の感情が一気に怒りに染まるのを察知し、驚いた。この患者は1年以上も診てきているが、このような深い怒りが潜んでることを察知したのは、今回が初めてだった。

また別の患者についても、表向きは数か月の間、良好な状態であり、今も順調だし、気分も良いと口では言っていた。だが外見は以前の診察時と変わらないものの、アンジェラはその患者の心にわずかな悲しみと不安があるのを感じ取ることができた。アンジェラがその患者にちょっと悩みでもあるのと優しく訊いた途端、彼は急に頑固になり、どこも悪くないと言い張った。

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午前の最後の患者の診察を終え、アンジェラは椅子に座って、診察記録をつけ始めた。その時、待合室で誰かが口論してる声を聞いた。何事だろうとドアに近づくと、その声がケンとゲンゾーの声だと気づいた。

「おい、あんた。あんた、自分が何者だと思ってるのか知らないが、俺はアンジェラにはお昼には患者を見ないのは知ってるんだ。だから、頼むよ、中に入れさせろよ」

「いいえ、アンジェラ様に面会する予約がない以上、私はあなたを中に入れるわけにはいきません」

「なんだ、こいつ。分かったよ。俺を中に入れなかったら…」

ケンの声が言葉の途中で消え、取っ組み合うような音が聞こえた。アンジェラは急いでドアを開けた。そこにはゲンゾーに首根っこを掴まれてるケンの姿があった。

「ゲンゾー。すぐにその人を離しなさい!」 とアンジェラは叫んだ。



[2013/09/23] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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