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無垢の人質 第11章 (7:終) 


~*~

「殿! 殿にお会いしたいという男が来ております。奥様について知らせがあると」

馬に乗ろうとしていたレオンは動きを止めた。「どこにいる?」

「城門のところです」

レオンは片脚を振り上げ、手綱を握って鞍に座った。「私から会いに行く」

レオンは速足で城内を駆けた。部下たちはその後ろをついていくのがやっとだった。レオンは城門のそばに馬を止めた。

「どんなことを知っている?」 とレオンは男に声をかけた。彼は初老の農夫で、恭しく帽子を脱ぎ手に持った。

「マリイ様が、殿にコローの近くの廃墟とお伝えするようにおっしゃったので…」

何てことだ! レオンは男に持っていた金の入った袋を投げ渡し、蹴るようにして乗馬し、駆けだした。そして城を取り囲む堀の橋を叫びながら疾走した。部下たちもすばやくレオンに続いた。罠が待ち構えているのは間違いない。

~*~

人の声がし、イサベラは目を覚ました。目を覚ますとともに、頭痛がし、小さなうめき声を上げた。その声は、しかし、くぐもっていた。口に猿轡をされていたからだ。横寝にされていて、両手は後ろ手に縛られていたし、両足も縛られていた。苦痛で床についた方の顔を歪ませた。

イサベラはまばたきし、顔にかかる髪の毛ごしに薄暗い部屋の向こうに目を凝らした。

冷たい石壁の部屋。その中央には使い古された低い椅子があり、そこに、彼女の父が座っていた。そして、その父の下腹部にマリイがまたがっていた。両手を頭に上げ、セクシーに長い黒髪を持ち上げている。

また私はこのふたりに囚われてしまったの? 恐怖がイサベラの中にふつふつと湧いてきた。どうして私はこんなに愚かなことをしてしまったのかしら?

イサベラは、マリイが両手を前に添え、小さなボタンを一つずつ外し始めるのを見た。胸元のボタンからから、ひとつひとつ、外していく。外し終えると、前を開き、中の絹のシュミーズを露わにした。クリーム色の肌の胸の隆起も見える。

マリイは、背中を反らせ、胸を突きだしながら、イサベラの父アランの両手を握り、自分の胸に近づけた。アランの下腹部の上、腰を前後に動かしながら、呟いた。

「触って…」

アランは高笑いしながら、シュミーズの上からマリイの胸を手荒に揉み始めた。やがて、彼は、マリイのシュミーズに手をかけ、繊細な生地を引き裂き、彼女の豊満な乳房を露わにした。

アランは両手を出し、その露わになった乳房を鷲づかみにした。両手の指が柔肌の乳房に食い込む。それを受けて、マリイは淫らな喘ぎ声をあげ、頭を後ろに倒した。美しい首筋が見える。自分の身体を彼に差し出している。そして、その間もゆっくりと腰を前後させ、しきりに求め続ける。

アランはマリイのガウンに手をかけ、乱暴に引っぱった。ビリビリと生地が裂ける音が響いた。それは何度も繰り返され、マリイは最後にはリボンで結んだ下着一枚だけの姿で彼の上にまたがる姿にされた。

するとマリイは腰を浮かせ、一度アランから離れ、自ら下着を降ろした。むっちりと肉づきのよい尻と太腿、その太腿の間に茂る濃い縮れ毛の三角形が露わになる。その熟れた女性美にイサベラは目を見張った。

しかし、それより驚いたことは、マリイの全身の肌が不自然なほど光沢を帯びていたことだった。暖炉の火明かりのなか、キラキラと輝いている。それを見てイサベラはショックで叫び声をあげそうになった。マリイは何をしたの?

全裸になったマリイは、アランのチュニックに手をかけ、頭へと引き、脱がした。それから両手を蛇のようにズボンの中へと滑りこませ、中から彼の分身を引きだした。愛しそうに両手でアランの勃起を撫でながら、再びマリイは彼にまたがった。

「はあぁぁぁ……」

マリイは艶めかしい声を上げながら、ゆっくりと腰を沈めた。

「自分で動け、マリイ。淫乱女らしく、淫らに腰を振るんだ」

アランはマリイのツンと尖った乳首をつまんだ。マリイは身体を上下させながら、両腕をアランの首に巻きつけ、抱き寄せ、アランの背中を擦った。アランの背中がオイルで光沢を帯びてくる。

イサベラは目をつむった。だが、目をつむっても、ふたりの出す音が聞こえなくなるわけではない。男女の肉がぶつかり合う湿った音。男の低い唸り声。女の漏らす溜息。

イサベラは音を立てないようにして、手首を縛る縄から逃れようともがいた。だが、きつく縛られた縄は簡単には解けない。イサベラは、どうしようもないじれったさに、泣きそうになった。

マリイとアランの行為は延々と続いた。やがて、イサベラの父の息づかいは、次第に苦しく、途切れ途切れになり始めた。それと共にマリイが上げる喜びの声はかすれた声に変わっていった。アランがほぼ意識を失った状態になっても、まだ、激しく動き続けている。イサベラは、早く終わってと祈った。

そしてアランは死んだ。その死は決して静かな死ではなかった。

イサベラは涙をこらえつつ、その死を見届けた。行為を終えたマリイは全裸のまま、イサベラのところへ歩み、彼女を見降ろした。全身の肌が興奮でほのかに染まり、アーモンド・オイルで輝いていた。彼女の瞳も輝いていた。

「あいつを憎むことにしたのよ」と彼女は微笑んだ。恐ろしい笑みだった。

~*~

イサベラは岩だらけの道を進んでいた。歩くたびに雑草が服に絡みついたが、気にせず進んだ。彼女の背後には廃墟の石塔がそびえ、彼女に影を落としていた。

地面が響くのを足を通じて感じ、イサベラは顔を上げた。遠くの平原を何十頭もの馬が埃を巻き上げながら走ってくるのが見えた。その騎士たちの装具も武具も、お馴染みの黒と黄色なのが見えた。そして、その先頭を走るレオンの姿を見て、イサベラの胸は膨らんだ。石塔を取り囲むよう部下たちに大声で指示をするレオンの声が聞こえる。

イサベラは歩みを止め、軽く身体を傾けた。もうその必要はないのよ。そうレオンに言うこともできただろう。彼女はマリイから、父の部下たちが遁走したことを聞いていたからである。レオンが、アランの味方をした者を捕まえたら金貨1000枚の報償を出すと聞いて、みな遁走したのであった。

「イサベラ!」

レオンが馬から飛び降り、彼女のところに走ってきた。怒りと恐れで顔色が悪い。レオンはイサベラを抱き上げ、いたわるようにして、部下たちが集まっているところへと運んだ。その間、イサベラは顔をレオンの胸元に押しつけ、しがみついていた。彼の匂いが懐かしい。

「こんなに俺を心配させやがって…。俺は、お前を抱いてキスすべきかどうか、迷ってる」

「どうして私の居場所が分かったの?」 イサベラは囁いた。ずっとレオンにしがみついたままで、もう決して離れないと言わんばかり。

「マリイが伝言を残したんだ。マリイはどこだ? あいつに傷つけられなかったか?」

「いいえ、マリイはあることの始末をしているところ。私、自分でできると思っていたけど、でも今は……。ほんとに夢のよう…。でも本当になったのね。とうとう」

「お前は謎めいたことを言う」

「すべてが終わったの、レオン。マリイのおかげで、ようやくすべてが…」 とイサベラはレオンの喉元に唇をつけた。男っぽい塩辛い味が嬉しい。

「キスでごまかせると思わないように。お前のせいで俺はどれだけ心配したか。その償いを一生かけてしてもらうからな」

イサベラは顔を上げて、笑顔でレオンを見上げた。その顔がぱっと明るくなった。

「それはそれでいいわ。だから、早く私を家に連れ帰って」

おわり



[2013/09/30] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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