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裏切り 第9章 (4) 


黒いネクタイを締めて、タキシード姿のロブはロブは確かに颯爽としていた。その彼が、私の姿を目に留めるや、口をパクパクさせた。先の鮫の話ではないけれど、海の生き物のたとえを使うなら、海から引き揚げられた魚のように、口をパクパクさせている。彼を正気に戻し、あからさまに私に接近するのをやめさせるには、かなり腕っ節の強い人が制止に入らねばならなかった。

会場に向かう間、私たちはずっと「有名スター」的な振舞いを続けた。ロブは私をエスコートしてリムジンの後部座席に案内し、その後、私の隣に座った。途中、ジムとアンジーを拾い上げ、ワシントン通りにある元中央図書館、現在のシティ・カルチュラル・センターへの道をシャンパンを啜りながらドライブした。

「遅かれ早かれ、そのドレスを着ると思っていたわよ」とアンジーが堰を切ったようにしゃべりだした。「もう、ほんとに、あなたったら…。深呼吸したら、絶対、はみ出しちゃうわよ。恥知らずなんだから!」

私もふざけまじりに辛辣さを装って反撃した。「でも、その言葉、ドナテラ・ヴェルサーチ(参考)のオリジナル服をフレデリックス・オブ・ハリウッド(参考)のように見せてしまう身体をした人が言う言葉?」

実際、黒サテンのビスチェ風(参考)のシース・ドレス(参考)に身を包んだアンジーはハッと息を飲むほどセクシーだった。このドレス、私たちが木曜朝の会議の後、すぐにオフィスを抜けだし、ニードレス・マークアップ(参考)のドレスメーカ・サロンで見かけたもの。

アンジーはこれを試着して、三面鏡で自分の姿を見た時、目をらんらんと輝かせたが、その直後に値札を見て、みるみる目に涙を溢れさせた。そこに私はプラチナ・カードを出したのだけど、そうしたら、アンジーは公の場所なのに泣きだしたのだった。

「いいこと? あなたのせいで3か月前にこんなことに巻き込まれることになったのよ。私ひとりだけでやるとなったら怒るんだから」

そして、ウソ怒りを和らげるためにアンジーの頬に優しくキスをした。

「それにね……あなたはその服を着る価値のある人だし」

そんなことを思い出しながら、さらにシャンパンを飲んだり、カナペを食べたりしているうちに会場に到着した。

メインの会場には弦楽四重奏団がいたし、それより小さな、かつては参考書類が置いてあった部屋にはハープ奏者もいた。この雰囲気は、有名企業の社交文化にしばらくいた人たちにとってすら、珍しい雰囲気だった。苗字がホットドッグやベーコンの包装紙に載っている人はもちろん、公共の建築物や企業のロゴに名前がついてる人たちと一緒に会場にいて、肘を突き合わすようにしていて、ちょっと恐れ多い感じもした。いわゆるセレブたちに囲まれて、アンジーはすでに有頂天になっていたし、私もそれに近い気持ちになっていた。

[2013/10/23] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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