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裏切り 第9章 (5) 

明らかに、私とアンジーは、ふたりの若い天才投資家を表敬訪問しにきたロイヤルファミリーか何かのような受けとめられ方をしていた。ほんとに、たくさんの男性たちが私たちを2度も3度も振り返って見ていた。ロブとジムは、まさに熱い注目を浴び続けていた。それは、彼らの成功ゆえの注目でもあったけれど、彼らが連れるコンパニオンの選択ゆえの注目でもあった。

シカゴ市長ですら、さすがに抜け目のない政治家であるだけあって、お世辞を忘れず、私たちのことを、「偉大なるシカゴ市をさらに偉大にしている輝かしい実例」と言っていた。市長の視線の先を考えると、彼が私たちの会社の成功のことを言っているのか、私とアンジーのバストラインのことを言っているのか、あやふやだった。

ロブ・ネルソンについて私が尊敬することはたくさんあるけれど、そのひとつは、他の人を褒めるとなると、完璧に無私になれるという点。

「私は皆様にお伝えしたいことがございます。確かに今回の成功は、おおまかな戦略は私が充分計画したものの、実際はというと……」 と彼は私の方に顔を向けた。

ロブは文の途中で発言を中断した。それは、私のスティレットのヒールが彼の足の甲に食い込むのを感じたから。私は人に気づかれない程度に頭を横に振った。そして彼の腕をぎゅっと抱きしめ、大きく息を吸った。そうやって胸を大きく膨らませて見せた。

「……ぎりぎりの時にひと踏ん張りできたお礼として、私のコンパニオンのリサ・レインに感謝の言葉を述べたいと思います」 ロブはアドリブをした。「リサと彼女のお友達のアンジェリーナ・トレスは、寛大にもハリウッドでのお仕事の合間に、この2ヶ月ほどジムと私のところにいてくれて、精神的応援をしてくれました。それがどんな応援か、お分かりですよね? 直観的に想像がついたら、それに従うのが一番です」

ロブはとっさの機転もきく。男性でもこういうことができる人が私は好き。これ以上ないほどの素晴らしい作り話をしてくれた。多分、この話を聞いた人は、大予算のハリウッド映画では私たちの名前も、顔も、身体も見つけられないだろう。当然、ここの男たちは今夜急いで家に帰った後、他のタイプのDVDをチェックするに違いない。

普段なら慎み深く他人の目を避ける私が急にバストを強調したり、ロブに抱きついたりしたのはなぜか。何も突然、気持ちが変わったからではなかった。私は、人々の群れの中に点在している、他の「やりたがりの男たち」、しかも、フットボール関係の男たちをチェックしていた。

私の本能は、チカチカと警戒信号を発していた。今は、注目を浴びるのはまずいんじゃないの、と。でも、バストを押し上げるコルセットをつけて、このドレスを着てたら、どっちみち、注目を浴びてしまうもの。

このような社交の場ではよくあることだけど、会話の内容も会話の相手も刻々と変化し、その力学によって、私たちのグループは自然にばらばらになっていった。私はと言うと、産業界の人たちのグループとかなり長時間おしゃべりをしてて、あの人たちにズボンを脱ぎたくなると思わせるほど魅了していたと思う。(もちろん、これは比喩的に言っているけれど、実際、あの人たちがそんな気がないかと言うとそうでもなさそう)。

そんな時、私の真後ろに人がいる気配を感じた。私に触れているわけではないけど、妙に私に近い位置にいたのは確か。ロブは、こういう場であまりあからさまに親密に見えないようにして愛情を巧みに表現することがある。ひょっとして、後ろにいるのはロブかも……。私は笑みを浮かべながら、少しだけ後ろにお尻を動かした。そして、少し経ってから後ろを振り向いた……。


[2013/11/01] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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