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暗示の力 (8) 

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今日は僕の誕生日だった。23歳。誕生日を友だちナシで過ごすのって変な感じだった。友だちと言うか、元の友だち。最近の僕の服装を見たら、あいつらが何て言うか想像できる。

僕が女物の服を着てるかなんて、誰が気にするって言うんだ。その服の下に、可愛い女物のブリーフを着てるのがバレたら、大ごとだろうけど。特に、ジェニーが僕に買ってくれたこの青いブリーフは可愛い。黄色い縁がついていて、僕のお尻を「ファンタスティックに」見せてくれる。これはジェニーが言った言葉であって、僕が言ったことではない。

今日は、さっき、ちょっとした出来事があった。ジェニーから誕生日プレゼントをもらった後、彼女と一緒にワインを飲んでいた時だった。ふと、うつむいてうつ向いて自分の姿を見たとたん、僕はパニック状態になってしまったのだった。急に、自分が何て格好をしてるんだと、信じられない気持になったのだった。自分がすごく弱くて、飢えてて、そして…女性的だと感じた。自分が女物の服を着てる事実を痛烈に意識したのだった。滑らかな肌、長い髪の毛……何もかも度が過ぎてると。僕は叫び声をあげ、たぶんその後、気を失ったのだと思う。気がついたら、ジェニーの膝を枕にカウチに横になっていたから。ジェニーは、愛しげに僕の髪を撫でていた。

すると、不安感が急に消えたのだった。再び、何もかも、普通のことに感じられるようになった。

ジェニーは、たぶんちょっと飲みすぎたからだろうと言っていた。アルコールのせいで、自分の人生の選択について、何か抑圧された感情が表に出てきたのだろうと。「あなた、こんなにたくさんのことを変える決断をしてきたんだもの、当然だわ」と。

確かに、ジェニーの言うとおりだ。僕はいろんな変化を決断してきた。でも、何か僕を浸食しているものもあるのは事実だ。僕は黙ってただ座っていた。10分くらい沈黙していたと思う。そしてふと気づいたのだった。もし、僕が自分の決断にそんなに居心地の悪さを感じてるなら、その不快さの痕跡があるはずじゃないかと。でも、そんなものはない。僕は完璧に心穏やかな状態だったのだ。

そして、まさにその点が僕にとっては謎だった。

[2013/11/26] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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