双子のひとりが言った。「ちょっと見てみて、ディ・ディ。この人たちのこと覚えてる?」
多分ディアドラだと思うけど、もうひとりが言った。「まあ! 名前、何て言ったっけ? デビーとデリラ。なんかそんな名前よ」
最初の人、たぶんドナだと思うけど、彼女が答えた。「デリラ。そうよ、デリラよ。可愛い人だったけど、こんなに美人というわけじゃなかったわ。エアー・ブラシ担当の人、残業して頑張ったに違いないわね」
ディアドラが笑った。「意地悪なこと言わないの、ドニー。このふたり、いい身体をしてるもの。おっぱいも顔もいいし。去年、彼女たちがアンドリューのところに来た時、私、この人たちプレーボーイの素材みたいと思ったわ。あれから1年ちょっとしか経っていない。出産後、こんなに早くスタイルを取り戻したことは評価してもいいはずよ」
私は彼女をドナだと思っていたけど、ディアドラは彼女をドニーと呼んだ。そのドニーが例の男性に言った。
「ジェイク? テニスの試合をして来なさいよ。あなたがこのことを利用してアンドリューを地面に這いつくばせたがっていたのは分かってるわ。どうぞ、遠慮しないで。あなたがアンドリューをやっつけたら、その後は私たちが引き継ぐから。今夜は面白くなりそう!」
私は腰を降ろして、ノートを取り出した。たったいま目撃したちょっとした光景についてメモを取り始めた。私が想像していたようには進まなかった。私は、このアンドリュー・アドキンズという男性を独裁者的な嫌な男と思っていた。屈従的で気の弱い妻たちを脅かして、変態じみたライフスタイルに引きずりこんでる男と。でも今は、この家を誰が仕切ってるか分からなくなってきている。
「おふたりは、このことにそんなに怒っていないように見えますが…」
ふたりも椅子に座った。また、どっちがどっちだか分からなくなってしまった。ともかく、ひとりが言った。「怒る? どうして私たちが? 私たち、これを公にしようとした時から、何をしているかちゃんと理解していたのよ。政府が子供たちを狙っている。それが明るみになった以上、残りのところも隠せるはずがないでしょう?」
「でも、あなたは、ご主人が、このような他の女性と一緒になっていても怒らないのはどうして? 私の理解が正しければ、彼はすでに何百人という女性と関係を持ってるはずですが」
もう一人が答えた。「いいえ、すでに1000に近づいてるわね。彼がこれをしてるのは、私たちがそうしてと頼んだから。IAMの女性たちは妊娠するのが非常に難しいのです。気が狂うほど子供を切望してる人も多いの。で、アンドリューはなぜかそういう女性たちを何ら困難なく妊娠させられる才能を持っている。何か遺伝的なことだと思うけど。ともかくアンドリューは私たちを喜ばすためにこのような女性たちに自分自身を捧げているのです。私たちが彼にやめてと言ったら、彼はすぐに他の女性に目もくれなくなるでしょう」