ことを終え、ふたり腕を組みながらメインのフロアに戻った。歩きながら、通りかかったウェイターからシャンパンをもらった。その冷えたシャンパンを啜りながら、ジェフとおしゃべりを始めた。
「絶対にもう一度会いたいなあ。さっき始めたことを最後までやり遂げたいし」 とジェフは私の耳元に囁きかけた。
「もっとあるの?」 とわざと無邪気に問い返した。
「ああ、もちろん。ずっとたくさん。…今度の土曜日はどう?」
私は頭を横に振った。
「ごめんなさい。予定があって。何時までになるか分からないの」
ジェフはがっかりしつつ、頷いた。
「本当を言うと、僕もなんだ。うちのプロモーション関係の人に、ヒルトンで開かれる同性愛関係の催し物に顔を出すように言われてるんだ。そこのファッションショーにモデルと一緒に出ることになっている。そのモデルのひとりは知ってる人だけどね。ああ、他のモデルたちがイヌみたいな容貌のヤツじゃないといいんだが…」
私は顔を輝かせ、「ワン、ワン!」 とふざけて吠えてみせた。
彼は呆気にとられて私の顔を見つめた。
「冗談じゃ…君なの?」
私はにっこり笑って頷いた。そして、部屋の向こうにアンジーがいるのに気づいた。他の人たちとおしゃべりしている。私は素敵にマニキュアをした人差し指を伸ばし、彼女の方向を指差した。
「それにあそこにいる私の友だちも一緒。私と彼女、お似合いののペアに見えるでしょ?」
「スゴイ…」 とジェフはかすれ声で囁いた。「僕はもう死んで、天国に来てるのかも。この週末には、片づけなければならない別のもっと個人的なビジネスがあるんだ。その日が僕にとって今週の、今月の、いや今年のハイライトになると思っていたけど、今度は、君とあそこにいる君のお友達も加わるとは……」
ジェフは声を落として言いかけた言葉を止めた。そして、私を後ろ向きにさせた。
「その時にまた一緒に。いいね?」
瞬間、彼の肩越しに向こうを見ると、スーザンがものすごい勢いでやってくる。私はもちろん我慢できなかった。背を伸ばしてジェフの頬に優しくキスをした。
「もちろん、絶対よ」
スーザンはすうーっと絹のような滑らかさでジェフの脇の下に腕を指しこんだ。明るい笑顔を浮かべていたけど、眼は氷のように冷たい眼をしていた。
「私が忙しくしてた間、私の彼氏のお相手してくれてありがとう」 とスーザンは悪意のこめて皮肉っぽく言った。
私は目を輝かせて、頬を赤らめたジェフの顔を見上げ、「いいえ、こちらこそ」と笑顔を見せ、後ろを向いて立ち去った。わざと腰を振って歩いた。
「後で会うことになるかしら? えーっと…」 とスーザンは私の背中に声をかけた。
私は振り返ってウインクをして見せた。
「リサよ。うふふ、リサ・レイン。確実に会うことになると思うわ」
スーザンはジェフを睨みつけていた。その表情の意味はたったひとつ、家に戻るまで待ってなさいよ、と。