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僕は露出好きなの? それとも、ジェニーの影響で、僕はこんなことをしてるの? 僕たちは再び湖畔の別荘へ来た。今日はその初日。でも、僕には、とてもとても恥ずかしい一日になった。僕は特に恥ずかしがり屋なわけではない。でも……ああ、あの人たちのあの視線。思い出すだけでもぞっとする。
僕たちはビーチにいた(湖にもビーチがある? 何であれ、僕にはビーチに見えた)。ジェニーとふたりでビーチでくつろいでいた。分かると思うけど、日光浴をしたり、ごろごろとして本を読んだり…。ごく普通のこと。ビーチの向こうに4、5人の若者たちのグループがいたけど、僕たちは無視していた。あるいは少なくとも僕は無視していた。そんな時、ジェニーが言ったんだ。
「あの人たち、あなたから眼が離せないみたいよ」 僕は彼女の言葉を無視した。するとジェニーは、こうも言った。「彼らに見せてあげたら?」
「見せてあげるって? どういう意味? 僕は別に……」 そう言いかけたけど、すぐにジェニーに遮られた。
「ほらほら、いいから…。私が言ってる意味、知ってるはずよ。それにあなたも注目を浴びることが好きなのも知ってるんだから。だからごまかさないで。ただ水着を脱いで、あの人たちにあなたの姿を見せてあげるだけでいいのよ」
そう言われた途端、急に興奮してしまった。どうして興奮したのか分からない。でも、彼らをそうやってからかうのもすごく面白そうに思えた。でも、僕はまだ抵抗した。
「違法行為だよ。わいせつ物陳列で牢屋に行くなんて、まっぴらだよ」
「ここには他に誰もいないわ。それにあの人たちも、誰にも言わないはず。約束してもいいわ」
どういうわけか、そう言われただけで僕は納得してしまった。ビキニを脱ぎ始めると、彼らが興奮して騒ぎ出す声が聞こえた。ある種、その騒ぎ声でいっそう僕も乗せられたように思う。自分でも気がつかないうちに、僕は全裸になっていた。タオルの上に座って、両脚を広げ、こっちを見てって誘うようにして……。ああ、何てことを! 脚の間にはアレがついてることすら忘れてしまうなんて。彼らが大笑いしてるのが聞こえた。明らかに嘲り笑ってるのを感じた。見ろよ、あのオンナ男!
僕は振り向いてジェニーを見た。不安、怒り、悲しみ、そして無力感が僕の顔に浮かんでいたと思う。でも、心の中では、高揚感もあった。あの人たち、僕をバカにしてはいたけど、僕を指差して大笑いはしていたけど、僕の姿から眼を離せずにいるようだったから。
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ジェニーが他の男とセックスしている。僕は怒るべきなんだけど、でも、違った。……ただ、悲しかった。……それにちょっと興奮もしていた。本当は僕はしばらく前から知っていたし、ジェニーも僕が知ってることを知っていたと思う。だから、彼女が僕に何をしてるか分からないけど、その手を使って、僕に彼女の浮気をOKにするよう仕向けたんだと思う。浮気を知って僕が興奮するようにも仕向けたんだと思う。
この件には皮肉な点があって、僕はそれに引っかかるところを感じている。ジェニーが僕たち夫婦の信頼の一線を越えてしまったのは、僕がもはやなることができない存在を求めてのことだった。つまり、男性的なセックス相手。でも、そうなってしまったのは、ジェニー自身のせいだということ。ジェニーは僕がこうなってしまうのを知っていながら、行って、その結果、一線を越えてしまってる。
僕はふたりのところに乱入して、男にやめるように言い、ふたりにいるべきところに戻るように要求したかった。……普通の男なら誰でもそうするように。でも、僕にはそうする能力がない。もはや。
心の中、いろんな感情がせめぎ合っていた。自分が何者か知りたい。自分が何を求めているのか知りたい。でも、その時は、僕はただ、彼女の…いや僕たち夫婦の寝室の外に立って、ふたりがセックスしてる音を聞いてるだけだった。とても、シュールな感じだった。ジェニーも男も隠そうとすらしなかった。ジェニーは普通に彼を家に連れ込んできた…まるでごく日常的なことのように。彼女は彼に僕を紹介すらした(ルームメイトだと)。
ジェニーが何か僕に影響を与えてる。それが、もう今は、かすかに感じ取れるといったレベルを過ぎていた。ジェニーが僕に何かしている。それを僕が気づいてることにジェニーは気づいてると思う。そして、彼女は、僕がどう感じてるかなど、もはやどうでもよくなっている。僕が彼女の求めることをしてる限り、彼女にはどうでもいいんだ。
彼女の目の表情にしっかり現れてる。ジェニーは、もう以前のような眼で僕を見ようとすらしない。男として見てないのみならず、愛する女性としても見てない。ジェニーにとって、僕は単なる好奇の対象になってる。いじって遊ぶ、おもちゃのようなもの。
そんなことを何もかも知ってるのに、僕はここに立って、ふたりが愛しあう声を聞きながら、頭の中は、たったひとつのことに占領されていた。あの男に犯されてるのが僕だったらいいのに。もっと強く、激しく犯してと叫ぶのが僕だったらいいのに。もしジェニーが誘ってくれたら、喜んで、何も聞かずにふたりに加わるのに。
そうしたら、彼は僕の方を気に入ってくれるのに。
これが今の僕の世界。これが今の僕の姿。