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暗示の力 (26-30) 

26
今日、新しいディルドに乗っているときに、ジェニーが入ってきた。このディルド、とてもリアルで、底のところに吸引カップがついてる。だから、手で押さえなくても乗ることができるディルド。今まで、これをしてるところをジェニーに見つからないようにと、とても気を使ってきたのに……。僕の性的妄想が、ストレートな男のそれとは全然違うことがジェニーにバレたらと恐れてきたのに……。あんまり夢中になりすぎてて、彼女が入ってきた音すら聞こえなかった。

昔の僕は、アメフトの大ファンだった。アメフトのシーズンになると、毎週末、テレビの前に座って、全試合を観たものだった。でもドルフィンズが僕のお気に入りのチームだ。しばらく、あまり強くなかったけど、でも、まあ、本当のファンというのは、ひいきのチームにこだわるものだろ?

今も、僕は試合を観ている。でも、今は、試合の最終スコアには興味がなくなっていて、むしろ、あの大きくて逞しい男たちがフィールドを駆けまわる姿を見る方が中心。時々、観てるうちに、あまりに興奮してしまって、アレを……ディルドを持って来てしまうことがある。ジェニーは日曜日は普段いないから、いつもはうまくいったんだけど……

このとき僕が妄想していたのは、こんな状況。僕はチアリーダーのひとり。どうしてもロッカールームに行かなくちゃいけない(いろんな理由から―これは話しには重要じゃない)。そして僕がロッカールームに入ると、周りには裸の男たちがいっぱいいて、彼らに取り囲まれてしまう。これは僕の妄想だから、当然、男たちは僕の可愛い身体を欲しがっている。

ジェニーが入ってきた時、妄想の中の僕は、先発のラインバッカーの上にまたがっていて、ランニングバックのペニスが僕の唇の真ん前に来ているところだった。彼は僕の顔に噴射しようとしているところ。

「ぶっかけて! 味わいたいの! お願い!」

そう、こんな感じで、すべてがバレてしまった。ジェニーはものすごく驚いて、心を傷つけられたような振舞いをしたけど、どうしてなのか分からない。だって、僕をこんなふうに変えたのは彼女なんだから。

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ジェニーに見つかった後、ふたりとも黙ったままだった。僕の叫ぶ声をジェニーが聞いたのは間違いないし、僕が叫んだ言葉から、僕がどんな状況を夢想していたかジェニーには分かったはず。でもジェニーは、ただ悲しそうな、落胆したような顔で僕を見るだけだった。…ああ、目に涙を浮かべているのは見えた。そして、彼女はドアを開けて、出て行った。その後しばらくして、ジェニーは戻って来たけど、その時はあの件の痕跡はまったく残っていなかった。僕としても、とても怖くて、あの件のことを話題にできなかった。話しをしたらジェニーがどうするかとても怖い…。僕と別れる? いま以上に僕を変える? もはやジェニーがどういう人か僕には分からなくなっている。

あの出来事の後、僕たちの性生活は大変化を遂げた。多分、あの出来事はジェニーにとってちょっと目を開かせる出来事だったのかも。最近、(家に連れ込んでくる男たちを優先して)僕をないがしろにしていたこととかを気づかせる出来事だったかも。僕も性的に飢えていて、それを満たすために男に抱かれることを妄想するほどになっていたことを知り、罪悪感を感じたのかも。ジェニーがそんなことを思ってるのが僕には分かった。彼女はそういうふうに思う人だから。事実はそうじゃない。どれだけジェニーに性的に満たされても、僕の妄想は太いペニスをもった逞しい男が中心になっている。飢えてたから、仕方なくというのではない。もっとも、僕はそのことをジェニーに話すつもりは、もちろんないけど。

この2週間ほど、僕たちは、それぞれが求めているものを得られるよう、ちょっと違ったことを始めていた。僕だって、女性がストラップオンで性的な満足を得られると考えるほどウブじゃない。女だったら、やっぱりペニスを入れてもらいたいものだもの。今の僕にはその気持ちが分かる。というわけで、ジェニーが双頭ディルドを買ってきた時、本当にこれは素晴らしい考えだと喝采した。ふたりとも四つん這いになって、互いにお尻を突き出しあって、ピタピタ鳴らす。そうやって、ふたりで同時に挿入し合って、渇望を満たす。これって信じられないほどエロティックだし、いやらしい。

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もうこんな生活は続けられない。あまりに性的にも精神的にもフラストレーションが多いし、身体的にも消耗しすぎる。2年以上を経て、とうとう僕は、もうたくさんだという気持ちになった。自分の未来は自分で変えることにした。自分から動くことにした。

ジェニーに可愛いオンナ男として献身的に、無知を装って尽くす役割を演じ続けても、何も変わらない。もっとずっと前に何かことを起こすべきだったのだろうけど、たぶん、僕は怖がっていたんだろう。ひょっとすると、ジェニーはそういう恐怖心を僕に植え付けたのかもしれない。でも、もう僕はやり過ごすつもりはない。ジェニーの方がずっとずっと酷いことをしてきたのだから……。

僕は自分の生活を自分で仕切り始めた。少しずつ、少しずつ。ジェニーの影響は軽くなってきてるように思う。この日誌のおかげだ。僕がどんなことをしてきたか、僕がどんな人間に変化してきたかについて読み返すと、その行為や変化の当時より、ずっとリアルに物事が見えてくる。最初の頃を振り返っている。あの髪の毛を伸ばし始めたころだ。あの頃から一連の出来事が連鎖し、今の僕につながっている。そう想像するのは難しくない。

でも今の僕はこのとおり。これはコントロールできない。でも、自分の進む道はコントロールできると思う。そう信じなければならない。でなければ、気が狂ってしまうだろう。いや、もう狂ってるのかも……僕のあの強烈な妄想の数々。それが正常じゃないのは充分、承知している。それに、ジェニーが僕の精神に与えた影響から完全に離脱できないかもしれないことも分かってる。でも、僕は自分の未来を自分で決めることができるなら、それはそれで構わないと思ってる。

そういうわけで、その目的のため、僕は昨日グレーブズ博士に会った。僕の姿を観た時の彼の表情。恐怖と憐れみが混じった不思議な顔をしていた。僕に対して申し訳ないと感じている様子だったけど、同時に、僕を助け出そうとし、ジェニーの怒りを喚起してしまうことを非常に恐れている様子でもあった。僕には、ジェニーが、部下に恐怖心を植え付けることができるような人間には決して思えない。だけど、ひょっとするとジェニーは仕事のためなら、僕が思いこんでいること以上のことができるのかもしれない。

グレーブズが言ったことは、僕に家に帰って、全部忘れろと、それだけだった。僕と会ったことについてはジェニーに言わないとは言ってくれたけど、それ以上のことは僕が自分でしなければならない。

正直、グレーブズを責めることはできない。ジェニーが知ったら、彼に何をするか分からないから。彼にどんなことをさせるか分からないから。

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とうとう突破口が現れた。何カ月にも渡る調査で、ようやく探していたものが見つかった。この3、4カ月の間に生化学についてこんなに学ぶことになるとは思っていなかった。ジェニーの会社について、その全体像を調査し、ジェニーが僕に与えた影響を克服するのに役立つ人物を探し、そしてとうとう、その人物を見つけたのだった。

彼の名はアンリ・トゥイサン。ジェニーの元で働いてるフランス人の生化学者だ。プロジェクトの全体像はあまりに謎に覆われていて、その研究所の誰が何を担当しているかについて正確に知るのは難しい。何百人もの従業員がいて、その仕事が明示されてるのは用務員だけときている。でも、運が良かったのか、とうとうアンリを見つけた。

調べて分かったことだけど、治療薬は存在している。あるいは少なくとも治療薬の原形と呼べるものは。いや、これも呼び方が間違ってるかもしれない。治療薬の原形と言うより、ワクチンと言った方が良いのかもしれない。簡単に言って、その薬を飲めば、今後の操作からは免れるというものである。ジェニーが僕に正確に言って何をしたか、依然はっきりとは分からないけど、その答えを見つけても、それは大部分関係なくなってる。重要なのは、治療薬があるということ。それさえ知れば僕はいい。希望が生まれるから。

自分がしたことを誇りに思ってるわけではない。でも、他に方法がなかった。自分の身体以外に手段がなかったから。だから、やった。それにやったことを振り返り、反省する余裕なんかないのだ。

それでも、これだけは言いたい。僕にとっての生れて初めての本物のフェラチオがこんなふうになるとは想像すらしてなかった。何百回も、千回近く想像してきたことなのに。……全然、魅力を感じない男の前にひざまずき、その男のペニスをしゃぶる。ただ単にIDカードを手に入れるために…。とても汚らしいことをしてる感じがした。しかも全然良くないことを。

でも、これはうまくいった。欲しい物を手に入れた。後は僕の情報が正しいことを祈るのみ。そうじゃないと……。

もし僕がジェニーの渾身の仕事を暴露しようとしてることをジェニーが知ったら…。彼女は僕に何をするだろう? 考えただけで身体が震えてくる。

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30
今日は僕が人生を取り戻す日だ。今日はジェニーのサディスティックな精神操作の檻から解放され自由の身になる日だ。でも僕は彼女のことしか考えられない……。

ジェニーは邪悪な人間ではない。僕には分かる。彼女はただお金と権力に囚われてしまっただけだ。それに何より好奇心が勝ってしまった。それが本当だと今の僕には分かる。心から分かる。あるいは、そうであってほしいと僕が思ってるだけかもしれない。いずれにせよ、僕は、ジェニーはサディストに見えるかもしれないが、実際はそうじゃないと信ずることにした。

ともかく、家に帰り、ジェニーが帰ってくるのを待ちながら、僕はこんな格好になっていた。

「ねえ来いよ。前のようにやろうよ。前にしていたように。……僕が変わってしまう前にしてたように」

ジェニーは実際、大笑いした。「それを勃起させるために、いったいどれだけバイアグラを飲んだの?」

「僕は…」

「あなたのこと愛してるわ。でも、自分の格好、見てみたら? このちっちゃなモノを? これで感じれると思ってるの? それに、あなたのそのポーズ。私に見てもらおうとして、そんな格好してるんだろうけど……」

「で、でも……」

「脚を広げて、私ににアヌスをしてもらおうと誘っているようなものじゃない? 無意識的にそういう格好になってるのね? お尻に挿してもらうこと。それが今のあなたにとってのセックスになってるんでしょ? もう、男性だってフリすることすら無理よ」

ジェニーはまだくすくす笑ってた。

「意地悪で言ってるつもりはないの。ふにゃふにゃになって可愛らしいところ、私、大好きよ。何とかして男性的な役割を満たそうとがばってるあなたを愛してるわ。でも、端的に言って、もはやあなたにはその役割は果たせないの」

「ぼ、僕はただ……」

「言わなくても分かってるわ、あなた…。さあ、良い子になって服を着てちょうだい。そう言えば、ジュリオ…ジュリオのこと覚えてるでしょ? 彼が後で家に来るわ。ちょっと楽しいことしに。その時に私を怒らせるようなことしないでね!」

その言葉を最後に、ジェニーは部屋から出ていった。その言葉を最後に、僕は最終的な決心をした。僕は出ていく。振り返ることはしない。あのワクチンを手に入れたらすぐに……。

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[2013/12/24] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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