俺の手は依然としてバルの胸を押さえたままだ。バルは俺とまっすぐに視線をあわせていた。淫らっぽい表情が浮かんでいる。
「本当かなあ。トリスタのお母さんは世界中で一番善良なご婦人だと思うけど」 と最後にもう一回バルの柔らかな胸を握った後、手を上へずらした。
首にかけてオイルを塗り始めると、バルがさらに身体を起こし、俺に近づいてきた。ふたりの顔が近づく。彼女のセクシーなアーモンド形の目を見つめる。彼女の温かい息が俺の顔に当たる。
「彼女のお母さんは淫乱よ」 とバルは小さな声で言った。
それを聞いて、俺は手を止めた。突然、トリスタの母親のワインセラーで自慰をしてる姿が浮かんだ。
俺はそそくさとバルの首にオイルを塗り終え、彼女から離れ、仰向けになった。
「よしてくれよ」
「いいえ、本当よ」 バルは小さな声でそう言い、乳首を覆っている小さな三角布の位置を調節した。気づかぬうちに乳輪の端がはみ出ていたからだった。
「じゃあ、話せよ」 と期待してるのを伝えるような声で言った。
「どこまで知りたいの?」 とバルはニヤリとしながら、俺の手に手を重ねて言った。
「全部、教えてくれよ」 と彼女の手を握りながら頼んだ。
「あの人、確かに隠すのが巧いけど、でも私は見たの。ワインセラーでオナニーするところをしょっちゅう見てるわ。それに教会の秘書官と時々、外で会ってる」 とバルは顔を上げ俺を見た。
「ほんとによしてくれよ」 と俺は話しを聞いてビックリしているように演じた。
「真面目に言ってるのよ。あの人、マルチナと一緒にどこかのクラブに行って、一晩中、無茶苦茶にやりまくってるのよ」 と小さな声でくすくす笑った。
「でも、あの石頭の旦那に見つからずに、そんなことできるのかなあ?」
「旦那さんがぐっすり眠るまで待ってるのよ。それから教会の地下室に行って、そこから外に出るの」 とバルは俺の手に指を絡めながら言った。
「信じられないよ」 と半ば驚いてるふうに俺は返事した。
「じゃあ、信じなくてもいいわよ……でも、私には証明できるわ」と自信を持ってるふうにバルは言った。
「どうやって?」 と俺は身体を起こし、バルと対面した。
「今夜、遅くだけど、何か用事ある?」 とバルはビーチにいる他の人をちらっと見やった。
「寝てるよ」 と俺もあたりを見回した。
「真夜中の12時に、教会の地下室のところにいるから、会いに来て」
「どうやったら見つからずにそこに行けるんだ?」 と俺はまた仰向けになった。
「教会の裏に階段があるの。そこを降りて。私がカギを開けて、あなたのこと待ってるから。そうしたら証拠を見せてあげるわ。私が言ったことを信じるはず」 と彼女も仰向けになった。
ちょっと考えた。今日は何をしなければいけなかったのか。まず、ブラッドの家に行って、ステファニからカネを巻き上げなくてはならない。その後、6時半にはミセス・グラフに会う。
「ああ、分かった。行くよ」と返事した。トリスタの母親が本当に淫乱なのか確かめたい。