「他のお子さんたちはどうなのでしょうか? 確か、娘さんが4人、息子さんがおふたりいますよね?」
右側が言った。「ええ、そう。娘のエディとエッダだけど、このふたりは科学的なことに興味があるわ。アンドリューが言うには、ふたりは世界で最も優れたコンピュータ・プログラマらしいの。もっとも、私たちには他と比べる基準を知らないから、彼の言葉をその通りに受け取ることしかできないけど。彼によると、エディとエッダは、4歳のときにウィンドウズにもユニックスにも、満足できなくなって、自分たちでオペレーティング・システムを書いたそうよ。他よりずっと安定していて、安全なシステムらしいわ…」
「…エディとエッダは、計画しているプログラミングがあるんだけど、それは現在の技術レベルでのハードウェアには複雑すぎるみたい。手に入るRAMとか、内部速度とか、多重並列プロセシングとか何か。分からないけど。なので、ふたりは自分たちでハードウェアの設計もしているの。そのプログラミングを扱えるようなハードウェアね。そういうふうにアンドリューは言ってるわ。エディもエッダも自分たちの仕事についてあまり話そうとしないから」
もう一人が呟く声も聞こえた。「ほんと、あの子たちあまり話さない」
「後は、息子さんおふたりと、娘さんがひとり残りますね。そのお子さんたちはどうなんですか?」
左側が言った。「エリックとイーサンはまだ小さいので、学習段階と言えるわ。エリックは野球選手になりたがっている。実際、よく打つ子なの。Tボール(
参考)のコーチがそう言ってるわ。エリックもイーサンもプログラミングでエディとエッダの手伝いをしてるわよ。それにふたりともモノを作るのが好きね。イーサンは建築家になることをよく口にするわ。建造物と自然とを統合して、世界から人工物っぽい景観を取り除きたいと思っているみたい。もちろん、まだ5歳だし、それはただの夢なんだろうけど。ただ、新人類が多数を占めたら、そういう世界がいつの日か実現することかもしれないわよ」
「それで? 最後に残った娘さんは? 名前は?」
右側が言った。「エマ。エマはちょっと他と違うの。エマは自分で何かしているけど、私たちは、構わず、彼女の好きにさせているの。何をしてるのか、はっきりとは分かっていないんだけど、何をしているにせよ、すごいことをしてるはずと思うわ。ともかく、エマが何に取り組んでいるか訊かない方が、みんな心穏やかにしていられると知ったのよ」
うーむ。これは他とははっきり異なって、妙な答えだわ。
ともかくお子さんたちは素晴らしい才能を持っているようなのは確か。また別の機会に、子供たちのストーリーも記事にすることにしよう。でも、今回は、サイエンティフィック・アメリカンの記事でなくて、コスモの記事を書くための取材。ここに来たのは、もっと濡れ濡れの部分を求めてきたのだ。つまり、創始者とそのハーレムの性生活について。その部分について、もっと話しを聞きたいと思った。
右側が私に訊いた。「レモネードでもいかが? パティオに出て、アンドリューとジェイクのテニスでも見ましょうよ。今は子供たちは仕事や勉強中。Eガールたちはコンピュータ・ルームにいるし、Eボーイは書斎でロシア語のレッスン。もし会いたかったら、喜んでここに呼んでくるけど?」
どうしても訊きたくなった。「どうしてEガールと呼ぶのです?」
左側が笑って言った。「そこがアンドリューらしいところ。気づいたかと思うけど、子供たちの名前は全部Eで始まるの。IAMの観点からすると、子供たちはE世代に属するのよ。ちょうど、私とドニーがD世代に属しているのと同じに。例のプレイメイトの名前がデビーとデリラ(Delilah)であること覚えておいた方がいいわね。彼女たちもD世代。でもアンドリューは子供たちにE世代という呼び方を選んだの。その方がEビジネスとかEメールとかのように、現代風な意味が加わるでしょう? だからEガール」
右側が言った。「あの人の名前はデリア(Delia)よ、ディ・ディ。ボケてきてるんじゃない?」
左側が言った。「私、あの人の胸を見てばかりで名前なんか気にかける暇がなかったわ。アンドリューによると、あの胸、大きすぎて口に収まりきれなかったって。あのおっぱい、本物かどうか怪しいところね」