アモスは山小屋に戻り、ジーンズのオーバーオールを着たトビーが薪割りをしてるのを見た。
「いい子だ! 薪をちゃんと割ってたな! お前は父ちゃんの自慢の息子だ。だから、特別にいいモノを用意しておいたぞ! 今日、お前が本物の男になるのを父ちゃんに見せてくれ」
20になる息子が褒められてニコニコするのを見てアモスは嬉しかった。トビーは小学校レベルの教育しか受けてないし、その中でも「遅れ気味」の知能だったので、なおさらだった。
アモスはトビーに命じて、車の牽引棒をジープに載せた後、トビーを乗せ、ジープをBMWが止まってる場所へと走らせた。車を走らせながら、アモスは息子に、現場に着いたらどうするか指示を与えた。
現場に近づいたところで、アモスはスピードを落とした。そして、あのセクシーなブロンド女が木陰にたたずんでるのを見つけると、トビーに言った。
「あそこにきれいで可愛い、女の人がいるだろ? 今日、あの人がお前を男にしてくれる女だ、トビー! 父ちゃんからのちょっとしたプレゼントだ。気に入ったか?」
トビーの嬉しそうな顔と、口元から垂れた涎れがすべてを物語った。
トビーが牽引棒をチェーンに装着するのを見て、ビルは、どうして牽引棒が必要なのかアモスに訊いた。アモスは、チェーンだけだと高級なBMWに傷をつける可能性があるから、牽引棒も使った方がいいんだと答えた。
実際には、チェーンだけで車は引き出せるのである。だが、牽引棒は後ほど、ジープでBMWを山小屋に牽引するときに必要になるのであった。
ジルは、車が穴ぼこから引き出されるのを見て、白いハイヒールを汚さぬよう、乾いたところを選びながらつま先立ちでピョンピョンと跳ねて、嬉しそうにBMWに近づいた。車に近づきつつも、乾いたところはどこかと、視線は地面に集中していた。そして、その時、すべてが急速に展開していたのだった。
「きゃあぁぁぁぁぁぁッ………!」
ツルのようにしなやかではあるが、力強い男に突然、捉えられ、ジルは叫び声を上げた。助けを求めて顔を上げて、彼女は愕然とした。この男の身体の大きな息子が、ぐったりと意識を失ったビルの身体を右腕に抱え、左手で車のトランクを開けるのを見たからだ。彼女の見ている前で、ビルの身体は軽々と持ち上げられ、BMWのトランクに放り込まれたのだった。
「トビー、ほら、この綺麗なご婦人をこの高級車の後部座席にお連れしろ。その間に、父ちゃんは、この人の旦那の手足をテープで縛るからな!」
アモスは暴れるジルを両腕で抱きすくめながら、トビーに命令した。
「お……お願い……。お願いです……、やめてください……何してるの?…………どうして私たちにこんなことを! お願い…………、お願いだから…………。お金なら出します……。だから、私たちを離して!」
ジルはアモスに押さえられもがきつつも、啜り泣き、必死に訴えた。
「あんた、何か仕事してるのか? どんな仕事だ?」 とアモスはジルをぐらぐら揺すりながら訊いた。
「き……教師を………小学2年生を教えてます!」 とジルはつかえつつ答えた。
「そうか、そうか…………。トビー! きれいな学校の先生を手に入れたみてえだぞ! これ以上いいことねえぞ、トビー。きれいな先生に、1から10まで全部教えてもらえるんだ!」
啜り泣くジルを息子に預けながら、アモスはくすくす笑った。
早速、アモスは、車のトランクに放り込んだビルの手足を縛り始めた。車のドアが開き、そして閉まる音が聞こえた。息子があの美人教師を車に乗せたのだと分かる。
トランクを閉めた後、アモスはジープに乗りこみ、エンジンをかけた。そしてゆっくりと動かし、BMWとその持ち主を彼の山小屋へと連れて行くのである。