「どういうことか言うまで、どこにも行かせない」 と私は意図的に平坦な調子で言った。
「信じられない…」 とアンジーは啜り泣きになった。「あなたと二人でいろんなことをしてきたのに、結局はあなたにとって私はそういう存在ということ? 『安っぽくて、意味のないセックス?』 ええそうよ、これまでもずっと私はオフィスのエッチな可愛いオンナだったわ。私はとんでもないバカだった。ええ、ひとつだけ、あなたの言ったことで正しいことがあるわ。私は本当に安っぽい存在だということ」
その時点で心に浮かんだ唯一のまともな思考を、私は口にした。
「はあ?」
「ご異存がなければだけど、私は月曜の朝に元のSTG部門に戻ることにするわ。私の代わりにデビーを送るつもり。彼女なら気に入ると思うわよ。簡単に言いなりになる人だから」
「時間切れ!」 と私は怒鳴った。もはや声質が変わっていて威厳がなかったけれど、それなりに威厳を持った声で怒鳴った。
アンジーの腕を引っぱって、椅子に座らせた。そして彼女のデスクに腰を乗せ、彼女を睨みつけた。アンジーの方も負けずと私を睨み返していた。
「私が言おうとしたことは…」 と注意深く、考えながら言葉を切りだした。「あなたは、自分にとって本当に意味がある人を探そうとしたことがないの? あなたは、そもそも出会った最初からはっきりと言っていたわ。欲しいと思った男なら誰でも自分のものにできると。こんなことを言って浅薄に聞こえたら悪いけど、私は、あなたが気まぐれに征服する人のひとりになるのはうんざりなのよ。私がスーザンと別れてから、たった3ヶ月だけど、単なる安っぽいセックス相手以上の関係が欲しいし、必要としてるの!」
アンジーは口をあんぐりと開けて私を見つめた。そして、何か考えを振り払おうとするかのように、頭を振った。
「ちょっと話しを整理させて」 とアンジーは私と同じくゆっくりと正確に言葉を選んで言った。「あなたは、自分のことを、私にとって単なる気まぐれセックスの相手にすぎないと思っていたということ?」
私は頷いた。突然、どこからともなく平手が私の頬に飛んできて私を唖然とさせた。
「どうしてそんなふうに!」とアンジーは泣きそうな声で言った。「そんなに素敵なルックスなのに、そんなにセクシーな淫乱娘に変わってこれたのに、あなたは、今だ、時々、みっともない男になってしまう!」
「じゃあ、どう考えればいいのよ!」 と私は叫んだ。
「私が、欲しい男なら誰でも自分のモノにできると言った時はね」 と彼女も大声で言い返し始めた。「私はあなたのことが欲しいと言ったのだと理解すべきなの。あなたに初めて会ったその日から、ずっとあなたのことが欲しかった。リサがいると知るよりずっと前からよ。そしてリサが存在すると分かったら、もう、私はあなたなしでは生きていけないと悟ったわ」
「でも、そんなこと一度も言ってくれなかったじゃない!」 と私は強く言い返した。
「そうする必要がないからじゃない! 女の子はそういうことを察することができるものなの」
私は両手にこぶしを握って、振った。
「言葉が大事なの、アンジェリナ」 と私はちょっと落ち着いた声で言った。「私は人の心を読める人間じゃないわ。どれだけ頑張ってもそんな人間になれない。スーザンはひとことも言わなかった。その結果がアレだ。多分、彼女はそもそも、そういう気持ちを持っていなかったのかもしれない」
デジャブ?
アンジーは涙をぬぐいながら椅子から降り、私の手を取り、私を立たせた。そして私をきつく抱き寄せ、私の顔をまっすぐに見つめた。
「私はちゃんとそういう気持ちを持ってるわ。そして、ちゃんと言葉に出してあげる。私はあなたを愛してる。あなたのことが欲しい。呼吸する空気と同じくらい、あなたがいないと生きていけない。あなたは私の人生。この私の言葉に対して、あなたの言葉は?」
正直、私は間違っていた。
「言葉では言えない」
アンジーは頭をわずかに横に傾け、そして近づいてきた。
「いい答えね」 と小さく溜息をついて、唇を開いた。「ディックの店なんかどうでもいいわね。早速、要点に入りましょう!」