フィリップはダンスレッスンを終え、ぐったりとしていた。ダンス・レッスンを始めてから、すでにもう2ヶ月が経っていた。そしてフィリップは、自分はダンスに関して天性の才能があったのではないかと自分でも認めている。彼の中のスポーツ選手としての部分は、そのことを誇りに感じていたが、彼の中の男性としての部分はそのことに恥ずかしさを感じていた。だが、フィリップは自分の中の男性の部分は押し殺すことにしていた。恥ずかしさを感じても、ここでは良い結果にならない。
ベッドに横になりながら、天井を見つめ、ダンスレッスンのことを考えた。ダンスのステップは想像以上に難しかったが、今は上手くやれるようになっている。明日は、ハイヒールを履いてのダンスレッスンが始まる。インストラクターは名前は決して教えてくれないが、とてもセクシーでゴージャスな女性だ。ひとりは彫像のような身体をした訛りがある黒人女性で、この人にはバレエを習っている。もう一人は背が低い(とはいえ、彼よりも背が高い)白人女性で、ブロンドの髪をしている。
フィリップが悩んでいたことは、このふたりの女性を見たら、本来なら性的に興奮するはずだということだった。彼は、ふたりが裸になっているのを何回も見てきている(実際、ダンスレッスンの大半は全裸状態で行われているのだ)。そして、ふたりとも完璧と言える肉体をしていた。にもかかわらず、フィリップは、ふたりの裸体の美しさを抽象的に褒めたたえることはすれども、それ以上の感情が湧かないのだった。美しい彼女たちのことを思い浮かべても、彼のペニスはぴくりともしなかった。
インストラクターたちは美人ではあったが、ふざけることも多く、よくジョークを飛ばしあう。もっとも、ふたりとも彼の小さなペニスをからかうのが好きなようで、ジョークのいくつかはフィリップをからかうものだったが、それでもフィリップは彼女たちとのレッスンを楽しんでいた。時々、ベル博士が彼のダンスレッスンをビデオ撮影しにくることもあり、その時はフィリップはできるだけ良いところを見せようと頑張った。彼はベル博士の気に入ることをしたいと思っていた。ベル博士が満足してくれたら、早く解放されるかもしれないと思ったからである。
しばらく、そうやってベッドに横たわっていたら、フィリップは小便をもよおしてきた。そこでベッドから降り、バスルームに入った。ショートパンツを降ろし、パンティも降ろした。縮小したペニスを手に、便器に狙いをつけたが、ペニスはふにゃふにゃで、うまくつかんでおくことができなかった。結果、小便は床や彼の手にかかってしまった。こうならないためにはどうしたらいいんだろう? 彼はようやくその答えを悟り、便器に腰かけた。このほうがずっと清潔だ。彼はそう思い、これまで小便をするとき、どうして自分は便器に腰かけなかったんだろうと不思議に思った。
フィリップはトイレを終え、部屋に戻ると、ドレッサーの上に見慣れないものが置いてあるのに気づいた。大きな黒いディルドだった。いつの間にそれがそこに置いてあるのか分からなかった。多分、バスルームにいる間に誰かが置いて行ったんだろう。それにしても、物音ひとつしなかったのだが。不思議だ。
ここに来て初めてシャワーを浴び、敏感になったアヌスを不意に擦った日以来、フィリップは、シャワーを浴びる時、気がつくといつの間にか指でアヌスの辺りを触っているようになっていた。いまでは、いつも指でいじっている。もっとも、長い時間いじることは慎んでいた。羞恥心から、それ以上することを控えていたのである。
だが今は、ふたつの欲望がひとつに収束して目の前にある。ひとつ目は、フィリップは自分をここに幽閉している人たちを喜ばせたいという気持ちだった。彼らを喜ばせたら、自分を自由にしてくれるかもしれない。このディルドを置いて行ったのは彼らだし、彼らがそれを使うのを求めているのは明らかだ。もうひとつの気持ちはというと、それを使うとどんな感じがするか、とても興味を惹かれているということだった。確かに指であそこをいじると気持ちいい。だけど、このサイズのディルドだったら? どういうわけか、彼には、それを使ったら最高だろうなという予感があった。
すでにフィリップの男らしさは大半が消えてしまっていた。なので、彼は気持ちの葛藤すら感じず、素早く服を脱ぎ、リアルな形のディルドを掴んだ。細い女性的な手で持ち、まじまじと観察する。そのゴージャスな姿に彼はワクワクした。茎に沿って血管が這っていて、根元には大きな睾丸がついている。
ほとんど本能的に、彼はぺろりと舐めてみた。だが、ゴムの味がして、思わずうえっとなった。辺りを見回して、アヌスに潤滑を与えられそうなものを探したが、それらしいものは何もなかった。仕方なく、彼はベッドに腰を降ろし、後ろにもたれかかり、脚を広げた。そうして指をちょっと舐め、その指を股間にもっていき、アヌスをいじり始めた。驚いたことに、そこはすでに濡れていた。
もう一方の手で、硬くなっている乳首をいじった。そうしてからディルドに手を伸ばし、肉茎のところを握り、アヌスに向けて押した。ちょっと痛みがあったが、それはすぐに消え、その後はまったく抵抗なく、中に入っていった。
フィリップは、ハアっと溜息をついた。これまで、どうしてこれを試さなかったのだろう?! 根元までディルドを挿しこむと、ひとりでに身体が震えた。そして、ゆっくりと引き抜き、また挿しこんだ。抜くときはゆっくりと、挿すときは速く行った。
何度も出し入れを繰り返した。堪えようとしても、どうしても喘ぎ声が出てしまった。しかも、女の子が悶えるような切ない喘ぎ声になっていた。30秒ほどで、彼は絶頂に達したが、それでも続けた。その3分後、彼はまた絶頂に達した。ディルドを握る手の前腕が疲れてきたので、別の手に持ち替えて、続けた。さらに、その腕も疲れると、ディルドの根元を床につけ、その上に座って上下に身体を動かすようにした。
フィリップは恍惚状態になっていた。こんな快感は生れて初めてだった。
彼は、それ以上続けられなくなるまで、結局、何時間もディルド遊びをし続け、やがて疲れ切って、そのまま眠ってしまった。床に丸くなって横たわり眠るフィリップ。そのアヌスにはディルドが入ったままだった。
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