僕はチアリーダー風カリフォルニア娘と一緒に店を出た。
「スタジオかなんかあるの?」
「いや、ない。国じゅうを歩き回っているから、いらないんだ」
僕は、会話の流れを上手く操縦して、「僕の家か、君の家か」という微妙というかキワドイところに持っていくのは充分心得ている。もう何十回もしてきたことだ。どっちの家で撮影することになるとしても、ともかく、カメラを取りに僕のアパートに行かなくてはならない。普通は、そんな感じでうまく行く。
もちろん彼女は水着なんか持ってきているはずがない。だが、女の子たちには、全部脱がなくたっていいんだよ、とでも言っておけば、たいてい安心し、そして結局はヌードになってしまうものである。まったく低脳なんだから。
「もちろん、ブラとパンティは身につけたままで全然構わないよ。Tシャツを着たままでもOK。ただ、それだと例の大邸宅に持ってっても役に立たない写真になってしまうけどね。つまり、ヘフナー(
参考)に見てもらうには、ってことだけど」
2人で僕のアパートにはいる。部屋はいつもきれいにしておいている。特にリビング・ルームは。棚の一角には山ほどカメラが置いてある。本当のことを言うと、これは2、3のカメラ屋から、壊れたのとか役に立たなくなったのを拾ってきて置いているだけ。ドアが閉まらないようにするときの押えとかにしか役に立たない。そんなわけで、これだけあっても全部で50ドルもかからなかった。要するに、こいつは小道具ってわけだ。
彼女と雑談をしながら、部屋の中を見せて回った。広くはないが、ナイスなアパートとは言える。少なくとも、部屋の装飾にはちょっとばかり努力をしたよ。それに、リビング・ルームの一角にはかなり広いスペースを作っておいた。モデル撮影の時のためのスペースだ。
「もし良かったら、あっちの部屋で着替えてくれ。その格好のままでここで待ってくれてもいいし。どっちでもお好きに」
そう言って僕はポラロイドカメラを取りにいく。カメラの近くの引出しには、フィルムのパックが94本も用意してある。それに良い方のカメラが壊れたときに備えて、安いインスタント・カメラも用意してある。まあ、保険みたいなものさ。
この高い方のポラロイドカメラは、1週間の給料の半分近くかかってしまった。最新式のモデルだ。オートフォーカスとか、自動光量バランスとか、何でもついてる。女の子の服を脱がす仕事以外は、すべて自動でやってくれる。そこはそれで構わない。というのも、女の子を裸にする仕事だけは自分でやりたいからね。