マークは、グレート・チェンジごときの小さな出来事で、大好きな休日のセント・パトリックを祝うことを止めるつもりなどなかった。
しかし、ちょっとした驚きが彼を待ち構えていたのである。かつては酒に強かったのであるが、そんな彼のアルコールへの耐性が前ほどではなくなってることだった。
その日は、このboiにとってはまさにクレージー・ナイトであった。多量の緑色のビールと、わずかばかりの判断ミス。
翌朝、目を覚ました彼は、裸になっていることに気がついた。知らない場所で、隣には他のboiがふたり、女がひとり、それに黒人男がひとり寝ていた。この男の名前はよく覚えていない。他の人たちも皆、彼と同じく素っ裸だった。
まあ、良い、セント・パトリック・デーだったと言える。
*****
「それで? ケンドリック、何をしたいの?」
ブライアンとケンドリックは幼稚園の時からの長年の親友だった。ふたりは何でも一緒にしてきた。ふたりとも同じフットボールチームに所属すらしていた。ブライアンは、クォーターバックのスター選手。ケンドリックにケンドリックが投げるロングパスを受ける役。
だが、それはグレート・チェンジの前のこと。今は、ブライアンの身体はどちらかと言えばチアリーダーに適した身体になっている。
そして最近、ブライアンの方がケンドリックから「パスを受ける」役になっている。その表現じゃ曖昧で分からないと言うなら、こう言おう。ブライアンは元の親友から毎日のように深々と、そして強く突きまくられる方になっているということだ。
*****
「ヘイ、ハニー! 君が約束してくれてた、すごいセックスをしてもらう準備できたよ! あのストラップオン、装着しててくれ!」
マークのペニスはかつては23センチはあった。グレート・チェンジの後の今は、5センチしかない(しかも調子の良い日で)。
良いことはというと、彼はもはやペニスを必要としなくなっていること。彼の妻キムは、今は彼よりも男っぽい(特に大きなストラップオンを装着すると)。
*****
フレッド、ヒュー、そしてザック。3人はベッドでお尻を突きだした。それぞれの相手の男が楽しい時を与えてくれるのを待っているのである。これは3人にとってはある意味、新しいことだった。確かに3人とも(他のたいていのboi同様)ディルドで遊んだ経験があるし、ザックは2週間ほど前に酔っぱらって、男に家まで送ってもらったことがあった。だが、この3人とも、意識がしっかりした状態で男にセックスされるのは、この時が初めてなのである。
不思議と言えば不思議だった。3人とも男の観点からすれば似た状況を見てきていたのである。彼らは学生寮の仲間であり、それぞれ女子寮の女の子をこのベッドに連れてきて、楽しんだ経験があった。だが、時代は変わったのだ。3人とももはや女の子には興味がなくなっていた。単に、女の子は彼らboiに快楽を与えるようなカラダをしてないというのがその理由。加えて、3人とも、今は男性にそそられるようになっていると自分で認めている。
とはいえ、3人とも不安な気持ちでいるのは事実。本当に本物の方はディルド並みに気持ちいいの? あるいは、もっと気持ちいいの? その答えを知るのに時間はかからなかった。と言うのも、男たちは時間を無駄にしなかったから。
行為が始まって数秒もかからぬ内に、このboiたちがこれをしようと決めたことは正しかったと明らかになった。3人とも何度もオーガズムに達し、3人とも今後、性的衝動を抑えようという気持ちは捨て去った。3人とも男たちが欲しいのだと自覚し、これからもっとしようという気になったのだった。
オマール・ベルがもたらした世界では人生はこういうものなのである。視点の変化。新しい魅力。新鮮な快感。生活様式を完全に一変させた。白人のboiにとっては奇妙な時代だと言える。
*****
ベル博士が生物学的エージェントを大気に放出してから67日目。僕の身体は以前とはまったく変わってしまった。身長は20センチ低くなったし、体重も今は40キロほど。165センチ、50キロだった身体に並べば、今は、その陰にすっぽり隠れてしまうだろう。
この写真は妹の部屋で撮ったもの。僕の服は全然サイズが合わなくなったので、今は妹の服を着ている。それに服を詰めたりするよりも、妹の服を着る方が楽だから。
今日ウエストを測った。58センチ。妹よりも細くなっている。腰回りを測る勇気はない。多分、がっかりしてしまうから。ペニスについても同じ。前より70%は小さくなっているみたいだ。
外見が変わったことのほかに、もうひとつ変化がある。それは、男についてエロティックな夢を見るようになっていること。それが単に心理的なものなのか、それとも生物学的なものなのかは分からない。でも、そういう夢を見た後、目覚めるといつもアヌスが濡れていた。自然の潤滑液を分泌しているみたいに。
今日はここまでにしておこう。明日はどんな変化が起きてるか、考えるだけでも寒気がする。