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普通の男 (10) 

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ベル博士が声明文を発表してからおおよそ1年半がすぎた。そしてビリーの人生は劇的に変化していた。

いま彼はパンティを履き、もっぱらboiの服だけを着ている。メアリと外に出ると、男たちの視線を浴び、彼はその視線を嬉しく感じるようになっていた。すでにハイヒールを履いて歩く練習もしている(ヒールに慣れるため、ヒールを履いてエアロビクスをするようになっている)。特に気に入っているのは、スカートを履いて出る時だ。スカートを履くと、まるで、誰でもいいから、いつでもいいから、お尻をヤッテいいと言ってるような気分になれるのだ。どこでもいいから、彼を前のめりにさせて、スカートをめくり上げ、後ろから突っ込みさえすればいいのだから、と。

ビリーは、自分で化粧することにもすっかり慣れていたし、髪の毛も自分でスタイルを決めるようになっている。もっとも、彼は(他の多くのboiたち同様)髪の毛を比較的ショートにするようにしている。ショートだと、自分がboiであって女の子ではないと男たちに分かってもらえるからだ。誰でも、いざ、その時になって、驚くのは、望んでいないものだから。

ある日、メアリとビリーはモールの中を歩いていた。ジュエリー・ショップの前に来た時、ビリーは立ち止り、数々のジュエリーを見始めた。

「耳にピアスをしたいなあ。おへそにも。どう思う?」

「セクシーに見えると思うわよ」とメアリは答えた。

というわけで、ふたりはタトゥ―とピアスのパーラーに入った。パーラーを出た時、ビリーは、左右の耳とおへそにピアス、そして背中の腰のところに小さなタトゥ―を誇らしげに見せていた。タトゥ―にはSexy Boiの文字が書かれていた。

ビリーは、自分がものすごくキュートになったような気持ちだった。ふたりはビクトリアズ・シークレットにも立ち寄り、ビスチェ、ソング、ガーター、そしてストッキングのセットを白黒、2組買った。

ビリーは空に舞い上がった気分だった。

*

「どこかに遊びに行かない?」 とメアリが言った。ふたりは1時間ほど前にショッピングから戻って、家でくつろいでいたところだった。まだ、時間が早かった。

「どこに?」

「ダンスよ! すごくセクシーな服装になって、メイクもセクシーにするの。楽しい時間をすごせると思うわ」

ビリーはためらわなかった。「よさそうだね」

メアリは丈の非常に短い赤いドレスを着た。ビリーはゆったりとしているが、やはり丈の短いピンクのドレスを着た。胸元が大きく開いているし、背中も露出していて、できたばかりのタトゥ―が露出している。ふたりはハイヒールの音をコツコツ鳴らしながら玄関を出た。

クラブに着き、ふたりは中に入る客たちの列に並んだが、クラブの見張りの男(でっぷりとした黒人)は、迷わず、ふたりを優先的に中に入れた。

「こんなこと、前にはなかったよ」とビリーは笑った。メアリも一緒に笑った。

その夜、始まりは、予定した通りだった。ビリーとメアリは、もっぱらふたりだけで踊り続けた。ビリーは、ダンスに関して天性の才能があった。生れてからずっとダンスし続けてきたかのような身体の動き。

しかし、すぐにふたりは他の客たちの関心を惹きつけることになった。だが、それも避けられないことだったと言える。ビリーもメアリも、その機会を逃すことはなかった。当初の予定とは異なり、ふたりは別々になり、それぞれに言い寄ってきた黒人男性とダンスを始めたのだった。

ビリーはプロのダンサーのように腰を動かし、パートナーの股間にお尻を擦りつけた。そして、その見返りとして、彼は、相手からみるみる固さを増す部分で擦り返してもらった。ビリーはスカートの裾をちょっと捲り上げ、お尻の頬肉を露わにし、その生肌でさらに擦りつけた。彼は音楽のビートに揺れながら、我を忘れた。パートナーの男はビリーの身体じゅうを触りまくっていた。そしてビリーもそれを喜んだ。彼のあそこは濡れていた。

ようやく音楽が終わった。ビリーは相手の男が耳元で囁くのを聞いた。

「一緒に、ここを出ようぜ」

ビリーは息を切らせながら答えた。「いいわ。でも、私の…私のルームメイトを探さなきゃ。私の家に来てもいいわよ」

ビリーは、メアリを見つけた。他の男と踊っている(ビリーの相手ほどはハンサムではなかったが)。ビリーはメアリを引っぱるようにして男から離した。

「何なの?」 とメアリは迷惑そうに言った。

ビリーはおどおどしながら答えた。「もう家に帰ろう」

「いま来たばかりじゃない?」

「一緒に家に帰りたい人がいるの…」

「向こうであなたと身体を擦り合わせていたオトコ?……いいわよ。でも、私も相手してもらうからね」

メアリはビリーがちょっと気落ちしたのを見て微笑んだ。「私、がっちりとセックスされたいもの」

そしてビリーも答えた。「僕も……」

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[2014/07/02] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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