ケビンは、ピックアップ・トラックから、非常にゆっくりと降り、周囲の車の通りを確かめた。交通量はあまり多くはなく、後ろについていた車は、路肩を使って通り過ぎていった。ケビンは男に声をかけた。
「やあ、ホント、済まないことをした」
「ああ、そうだな。あんた、本当に済まないことをしてくれたよ。あんた、どうしたんだい? えぇ? あんたのせいで、車の中にいる俺の仲間は、みんな首をひねっちまってよお、回らなくなってしまってるぜ。俺の車の後ろもめちゃくちゃになっちまったし。あんた、保険はあるんだろうな?」
ケビンの保険は3ヶ月前に切れていた。掛け金が上がり、ケビンには払いきれなくなったからだ。ケビンは男の車のダメージを調べ、それほどひどい状態ではないのが分かった。とはいえ、彼が自由にできる資金では、恐らくまかないきれないだろう。困った。なんとかして、この男と交渉できたらとケビンは期待した。男の方に向き直り、話しを持ちかけた。
「申し訳ない。今は保険に入っていないんだ。それに、この損害の賠償をするだけの現金も持っていない。毎月、少しずつ返済するのならできるんだ」
「おい、俺にそんなデタラメ言うなよ」 男はケビンの言葉をさえぎった。
ケビンが返事をする間もなく、車の中から、さらに3人、巨体の黒人が出てきて、話しに加わった。
「こいつ、なんて言ったんだ? ラブ?」
「保険を持ってねえって言うんだ。金もねえので、損害を払えねえとよ・・・。ニック、警察を呼びに行ってくれるか?」
「あっと・・・ええっと・・・ちょっと警察抜きで、これを解決できないか、確かめてみないか?」
ケビンは、再び警察にかかわるのは避けたいと思っていた。ケビンの保険料が上がった理由として、彼が半年前に起こした小さな事故があった。その夜、ケビンは2杯ほど酒を飲んでおり、ハンドルを切り損ねた彼は、側溝に落ち、街路灯に衝突したのだった。ケビンは酒酔い運転で起訴され、判事は、彼に厳しい罰金と1年間の保護観察を言い渡したのだった。
ケビンは、もし今回、警察が介入してくると、免許証を取り上げられ、恐らく一定期間、拘置所に送られることになるのではないかと恐れた。さらに悪いことに、車のシートの下には、ある知り合いに手渡すように言われた包みが隠してあった。その中身は、ケビン自身は知らないが、ドラッグ類のような気がしていた。
「ひゅ~! 見てみろよ!」
別のラブの仲間がメアリを指差して言った。メアリはトラックから降り、ケビンのところに歩いてくるところだった。
「大丈夫? ケビン?」
「いやあ、お嬢さん、それが大丈夫じゃねえんだよ」 ラブがメアリに答える。
ラブは改めてメアリの姿を見た。ハイヒールから始まり、徐々に視線を這い上がらせ、彼女のセクシーな体を舐め回すように見る。誰が見ても、かなり興味を持って彼女の姿を見ているのが明らかな視線だった。特に、彼女の胸の盛り上がりには、いつまでも視線を向けたまま、無意識的に舌なめずりをしていた。メアリは、あからさまに体を見られ、頬を赤らめた。彼女を見ていたのはラブだけではない。他の3人も、同じく彼女をじろじろ見ていた。