俺はミセス・グラフの目を見つめながら、ただ微笑んだ。そして手を伸ばし、彼女の手を握った。ふたりの指が絡まり合う。
「ジェイコブはどこまで話したの?」 とミセス・グラフは俺の手を握り返しながら訊いた。
俺は咳払いをし、何を言うか考えた。俺の兄がミセス・グラフとどんなふうにセックスしたか、俺は知っている。だが、その艶めかしい話しのすべてを、直接、ミセス・グラフの口から聞きたいと思っていた。
「まあ、どんなことが起きたかは訊いてるけど、お前から話しを聞きたいな」 と俺は微笑んで彼女の指を揉んだ。
ミセス・グラフは大きく溜息をつき、辺りを見回した。ちょうどその時、ウェイトレスがパイを持ってやってきて、テーブルにそれを置いた。
「他にご注文は?」
「いいえ、今はこれで結構よ」
そんなやりとりをし、ミセス・グラフはウェイトレスが立ち去るまで待ち、その後、話し始めた。
「去年の夏、夫とふたりでカリフォルニアに休暇に出たの。天気は素敵で、暖かだったし、空には雲一つ浮かんでなかったわ。私たちは、ビーチにすぐ前の、海岸沿いのホテルに泊まっていた」
と彼女はパンプキンパイをひとかじりした。彼女がパイを飲み込むまで、しばらく間が空いた。俺もひとくち食べ、コーヒーで飲み下し、話しの続きを待った。
「あなたのお兄さんと出会ったのは、そこに行って3日目だったわ。彼が軍に入ることは知っていた。でも、軍に入る前に休暇を取る予定だったことは知らなかったの…」 と彼女はコーヒーをひとくち啜った。
「夫とプールに行って、泳いだりプールサイドでくつろいでいたのだけど、急に夫が具合が悪くなって、部屋に戻ったの。私もついて行って看病しようと思ったのだけど、夫はプールで楽しんでいなさいと言ってきかなかった」
「そこで兄に会ったんだね?」
ミセス・グラフはゆっくりと頷き、またパイをひとくち食べた。ウェイトレスが戻ってきて、様子を伺い、また立ち去った。
「私はただ自分のことだけ考えて、プールの端で日光浴をしていたわ。その時、ジェイコブが私のことを見たの。とても恥ずかしかったわ。私はソングのビキニを着ていて、そんな格好でいるところを受け持ちの生徒に見られたことがなかったから」 とミセス・グラフは顔をすこし赤らめた。
「兄はそこでお前に言い寄ったのかな?」 と俺はコーヒーを啜った。
「いいえ。彼は完全に紳士的に振舞っていたわ」 と俺のセックス・スレイブは俺の目を覗きこみ、指を握った。
「彼は私の隣の椅子に座り、ふたりでおしゃべりをした。私たちがまったく同じ時期に、まったく同じリゾート地で休暇を取ってるなんて驚きだと、ふたりともビックリしてた。ジェイコブは、他のところに行こうかと思ったけど、やっぱりカリフォルニアを見たかったからと言っていたわ」
ミセス・グラフはうつむき、テーブルを見ながら優しく微笑んだ。