「仕組まれたスチュワーデス」 Set-up Stewardess by Black Demon
http://www.blackdemonstories.com/setupstewardessx.html 「淫虐のスチュワーデス」の続編。
もともと、ビル・ウェーバーは、地域のセールス・マネージャのポジション競争には加われないと思っていた。確かに、上司には、良い仕事をしていると褒められていたし、ポジション競争の候補にもなれると言われていた。だが、現実はしっかり直視しなければならなかったのだ。つまり、最終的な候補の推薦を行うことになっている重役は、名うての女たらしであり、ポジションの競争相手には女性社員が何人かいるという現実である。競争相手の女性社員がちょっと色仕掛けを使ったら、ビルには勝ち目はないだろう。そう思って、ビルは諦めていたのだった。
だが、今は違う。ビルにはエース級の切り札ができたのだ。それを使えば、昇進を目指す女たちを簡単に勝負から放り出せることができる。今はただ、すべてを首尾よく仕組むことをすればいい。
来たる週末に、会社のディナー・パーティが予定されていた。会社の販売関係のトップたちが集まるパーティである。これは、ビルの計画を実行に移す絶好の機会だった。
その日の夕方、帰宅したビルは妻メリッサといる場で、わざと落ち込んでる様子をしてみせた。
「あなた、どうしたの?」
「いや、会社で大きな昇進の可能性がある線上にいるんだが、どうやら、落とされるのが確実のようなんだ」
「どうして?」
「いや、競争相手の中に女性が数名いるからね」
ビルはそれしか言わなかった。メリッサがもっと話しを聞きだそうとするのは知っていて、わざとそれしか言わなかった。
「どうして? 今だに女性がマイノリティと思われていて、仕事の点で優先されるなんて、信じられないわ」
「いや、今回の場合、それとは話が違うんだ」 とビルはまたもそこで話しをやめて、妻を当惑させたままにした。
「でも、だったら、本当にどうして?」
「まあ、何て言ったらいいのかなあ? アル・ラングドンは女たらしで、その地位を利用して欲しいものを手に入れていると、それだけ言っておこうか」
メリッサが驚いた顔をするのを見て、ビルはようやく彼女が言ってる意味を理解したと知った。そして、付け加えた。
「エレン・バーンズとアンジー・マクブライドはかなり魅力的だと言えるよ。だから、そのふたりのどっちかが有利な立場になると思う。どっちでもいいがアルの要求に喜んで応じたら、その人が昇進することになるだろうさ」
メリッサはエレン・バーンズとアンジー・マクブライトの両方に会ったことがある。確かにふたりとも魅力的と言える。
「でも、ふたりとも仕事のためにそんな犠牲を払うとは、とても思えないわ」
次の日の晩。会社のパーティの前日。ビルは相変わらず、大きな昇進を得る見込みが薄いことに失望しているフリをし続けた。
そんなビルを見てメリッサが無邪気に訊いた。
「ねえ、ビル? 私にできることはない?」
ビルは頭を振って答えた。「いや、望みはないよ! 唯一、僕に競争に加われる望みがあるとしたら、誰か娼婦を雇って、あの女たらしをもてなした場合くらいかな」
「じゃあ、明日の夜、私がその人とダンスをしましょうか? ちょっと密着させてあげたら、効果を発揮するかもしれないわよ!」
ビルはちょっと笑って頭を振った。「いいかい? 容姿の点で言ったら、エレンもアンジーも君のクラスには到底、及ばないのは事実だよ。君ならふたりとも、その場で降参となるだろう。でも、アル・ラングドンが求めることは、そんな密着ダンスなんかじゃないんだ!」
パーティ会場のエレガントなホテルに向かう車の中でも、ビルは演技を続けた。アル・ラングドンに会ったことがないメリッサのために、彼はアルの説明をした。50代に入ったばかりで、身長は185センチほど。ちょっと太り気味。アルに落とされた女たちの噂も話した。だがビルがメリッサに伝えなかった重要な事実があった。それはアル・ラングドンが黒人であるということ。
「そんな感じなら、その人とダンスしても問題はないと思うわよ」
「ああ、それはそうだね。でも、今のうちちょっと警告しておくけど、アルはダンスフロアにいても君の身体を触ろうとするかもしれないよ。だからショックを受けないように!」
ホテルに着き、ふたりはカクテルなどが出される隣接したラウンジに入った。そこでビルはメリッサを他の人たちに紹介して回った。そしてアル・ラングドンに紹介する番が来る。
「メリッサ? こちらが、地域担当の重役のラングドンさんだよ!」
ビルはラングドンを紹介しながらメリッサの顔を伺った。アルが黒人だと知ってショックを受けた顔をしている。アル・ラングドンが握手をするために手を出すと、メリッサはおどおどしながら手を出し、握手をした。
アル・ラングドンは、かねてからビル・ウェーバーの妻が美人だとの噂を聞いていた。だが、これほどの美人だとは予想していなかった。メリッサの柔らかい手を握りながら、アルは言った。
「奥さん、そんなに堅苦しくならないで。私のことはアルとかビッグ・アルと呼んでくれ。私の友人がみんな私をそう呼ぶのでね。ともかく、これだけは言える。奥さんはこの場所を一気に照らして明るくさせている。ここにいる中で一番の美人じゃないかな。それにこれも言えることだが、私たちは皆ビルのことを誇りに思っていますよ。彼が会社のために大きな業績を残していると自慢なのです!」