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屈服のスチュワーデス3 (3) 


空港ターミナルを出た後、アーチーは不安顔でブロンド髪の獲物のあとを追った。彼女が道路を横切り、左に曲がるのを見る。そしてバス停前に立ち、シャトルバスが来るのを待つのを見た。

「よーし! いいぞ!」

アーチーは喝采を上げた。あのバス停から出るシャトルは「従業員用」の駐車場へ行く。アーチーは、まだ急ぐことはないと、ターミナルの入り口前で待った。シャトルバスは出発まで少し待つはずだと知っていた。3車線の道路を横切って乗り場まで行くのに充分すぎる時間がある。

向こうの角をシャトルバスが曲がってくるのを見てから、アーチーは何気なさを装って、内側の車線を横断した。これから空港に入る乗務員たちがバスから降り始める。

アーチーはわざと他の客たちに先に行かせ、ロリイ・ロジャーズがバスに乗り込むのを確認した。バスに乗り込んだ後は後ろの席へと向かった。まだ疑念を持っていないロリイに、意識されるのを避けるためだった。さっきのコーヒーショップで隣のテーブルに座っていたことを彼女が覚えていたらマズイからだ。

その日、朝早く空港に来ていたので、アーチーの車は「従業員用」駐車場の入り口近くに停めてある。駐車場の区域に入って最初のバス停でアーチーは降りた。降りた後、シャトルバスが次のバス停に止まるのを見ながら、自分の車へと急いだ。

そのバス停ではストライプのブラウスと黒スカートの制服の人が誰も降りなかったのを確認した後、車に乗り込み、遠くのシャトルバスの尾行を始めた。

あのシャトルにはロリイと同じ制服の人がいないといいんだが。それなら、あの女が降りて車に向かうときが確実に分かり、人違いをする可能性がなくなる。アーチーはそう願った。

ロリイ・ロジャーズはケリーと同じ24歳である。ケリーとは大学1年の時に知り合い、女子寮では同じ部屋で生活した。それ以来、ふたりはいちばんの親友になっている。ふたりは好きなもの、嫌いなものがまったく同一で、本当の姉妹のような間柄になっていた。幾度となく、ふたりでダブルデートもした。互いに相手のことを一番に思いやり、いかなることでも相手を傷つけることなど夢にも思わない間柄だった。

ケリーと同じく、ロリイも大学時代に真に愛すべき人と出会った。彼女の婚約者のカートは、ケリーが結婚するブライアンとは、男子寮での先輩にあたる。当然、ロリイとケリーが一緒に参加した行事等のすべてとは言えないが、その多くでカートとブライアンは一緒になることがあり、こちらのふたりも親友になっていた。実際、ブライアンとケリーの結婚式ではブライアンの兄が花婿の付き添い役の代表を務め、カートがその次の付き添い役を務めることになっている。同じことが3ヶ月後のロリイの結婚式にも言え、ケリーが花嫁の付き添い役となり、ブライアンはカートの付き添い役を行うことになっている。

車に乗り込んだロリイは、空港でケリーと偶然会えたことが嬉しくてたまらなかった。ふたりとも国じゅうを飛び回っているので、同じ時間に同じ場所にいるなんて奇跡としか思えなかった。来週が楽しみで仕方がない。カートと一緒にポートランドに飛び、ケリーとブライアンの結婚式の準備を手伝う。ロリイは次週のことを思い、それに夢中になりすぎていた。普段なら神経質なほど注意深いロリイは、警戒心を忘れ、すぐ後ろをつけていきている黒い四輪駆動車の存在に注意を払っていなかった。

アパートまでの続く25分間、ロリイは、一定の距離を置いてつけている黒い車のことにまったく気づいていなかった。アパートのビルの駐車場に車を入れ、降りる。その駐車場の入口が面した道路の反対側、黒い車の中から彼女の様子を観察している男がいた。階段を駆け上がり、部屋に入るロリイ。彼女は知らぬうちに邪悪なストーカーに自分の居場所を教えてしまったのだった。

アーチーはあたりを見回し、このビルの様子を観察した。あの若いブロンド美女の部屋に入るには、どの計略を使おうか? ひとブロック先にバーガーショップがあった。アーチーはそこに車を走らせた。その店の駐車場に車を止め、ハンバーガーを買い、歩きながら戻ってくることにしよう。ハンバーガーを食べながらコーラを飲み、ぶらぶら歩く男のことなど、誰も怪しいと思わないはずだ。

アパートのビルの入り口前にはバス停がある。アーチーはそこに立って、バスが来るのを待ってるフリをした。この位置からだと、アパートの各部屋のドアノブの種類、こじ開けなければならない鍵のタイプがよく見える。このアパートは賃貸だ。だとするとすべてのドアもカギは共通だろう。住人は玄関を入った後、内側からチェーンなりフックなりを掛けるようになってる。彼がいる位置からは、デッドボルト(参考)はなさそうだ。だがこれは確かめなければならない。

ビルにチラチラ目をやってはいたが、人が入って行ったり出てきたりしている。アーチーはひと気がなくなる時を待った。

誰もいなくなったところで、素早く駐車場へ進み、建物の中に入り、最初のふた部屋ほど見てみた。やはりデッドボルトはない。アーチーはニヤリと笑った。あるのは標準的な錠で、しかも市場で最もありふれている2種類の錠のうちのひとつだった。アーチーは専門と言える技能は何もないのだが、空き巣に関しては山ほど経験があった。

必要なのは固いプラスチックのクレジットカードだけだ。それがあれば、住人が出て行った後の部屋に入ることができる。

……何年か前にかっぱらった電話会社の作業着が理想的な服だな! そう、そう ……………………… 片手に電話、片手に道具箱を持って! そうすれば誰にもバレない! ドアの前で15秒ほど時間があれば、あの女の部屋に入れるぞ……

次の日の午後、ロリイは車でアパートに帰る途中だった。ケリーの式まで仕事は休みで嬉しかった。カートがシカゴから戻って来ていたらよかったのに。一緒に素敵な食事をして、また彼の腕に包まれて愛してもらえたら……。でも、ケリーとブライアンが夫婦の絆を結ぶ来週まで、楽しい休暇となっているのも悪くなかった。ロリイは、7か月前からずっと薬指にはめているダイヤの指輪に目を落とし、これほど幸せな人生はないと思った。ケリーたちに続いて、彼女がカートと夫婦の絆を結ぶ日が来るのが待ち切れなかった。


[2014/07/31] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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