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続く2ヶ月ほどにわたって、社会文化は変化し続けた。boiが男と一緒に手をつないでいるのを見かけることが、次第しだいに、珍しいことではなくなっていった(相手の男はラテン系、黒人などなど)。ビンセントは、ラテン系の男性で感染した人は多くなかったこともあって、メキシコのboiが暴動を起こしたというニュースに少し興味を惹かれたことを覚えている。
服装に関しては、boiたちは次第に女性の服飾スタイルへと引き寄せられていった。たいていの店にはboi用の売り場ができ、その売り場面積がどんどん拡大していた(もっとも、売られている服は、婦人服の胸の部分だけをboiに合わせて縫いなおしたものが多い)。そして、間もなく、boiたちは最新のファッションに身を包むようになった。それには、スカート、ショートパンツ、タンクトップ、ホールター・トップやホールター・ドレスが含まれる。店舗の中には、見せかけなどかなぐり捨て、boi用のパンティを売り始めるところも出てきた。
ビンセントは、まだ、そのような服を着て歩くまでは至っておらず、ドレスを着たりスカートを履いたりはしていなかった。とは言え、彼にはちょっとしたパンティのコレクションができていた。レースのパンティからコットンのビキニ・パンティに至るまでたくさんあった。それに、うっすらと化粧もし始めていた(今はたいていのboiたちは化粧をしている)。ただ、彼は髪はまだ短くしたままである。
一方のチャックは、すでに完全にboiであることに馴染んでいた。ズボンを履くことはほとんどなくなり、スカートやドレスやショートパンツの方を好んで着るようになっていた。赤毛の髪を長く伸ばし、今は肩より少し下まで伸びている。それに男たちも。基本、男子寮に男性が入ることは禁止になっっているが、チャックは夜遅く、服装が乱れた状態で寮に帰ってくることが多くなった。時には、パンティを履くのを忘れて帰ってくることもあった。
ビンセントとチャックは、その件について話し合ったことはないが、今は、かなり多くの寮生boiが男性とセックスしている。ビンセントも自分に正直になれば、本当は自分もそうしたいと思っていた。だが、まだわずかに男性性が残っているのか、その一線を越えることはできずにいた。その結果として、週末の夜に、彼しか寮にいないことが普通になっていた。
そのような週末のある夜のこと。ビンセントは階段を登り、チャックと共有している部屋に入った。今は驚くことではなくなっているが、チャックは部屋の中を片付けもせず外出していた。床には脱ぎ散らかしたパンティがあちこちに落ちていたし、ドレッサーの化粧箱も開けっぱなし。ドレスやスカートも散乱したまま。
ビンセントは溜息をつき、片付けを始めた。半分ほど片付けたところで、ベッド下にケバケバしいドレスがあるのを見て、それを取ろうと手を伸ばした時だった。何か長くて、硬い、円筒状のものが手に触れた。
引っぱり出してみると、それは大きな、とても本物っぽい形状のディルドだった。ビンセントはしばらく、細い手でそれを持ったままでいたが、その後、不安に取り憑かれた人のようにあたりをきょろきょろ見回した。寮には誰もいないのを知っている。手でディルドの根元から先端まで撫でて、ごつごつ浮かんでいる血管や、マッシュルームのような頭部の感触を味わった。
どんな感じか試してみるだけでも傷つくことになるだろうか? そう自問したものの、すでに、試してみる気になっていたのは自分でも知っていた。その、ほんの数秒後のことであった。ビンセントはショートパンツとパンティを脱ぎ、手に持ったディルドを見つめていたのだった。
どんな姿勢で? ちょっと考えた後、彼は上に乗ることに決めた。
ディルドを根元を下に床に置き、その上にまたがった。ゆっくりと腰を沈めた。最初、アヌスの入り口のところで少し抵抗感があった。だが、ゆっくりと身体を降ろしていくと、あっという間にディルドは根元まで彼の中に入ってしまった。
予想したより気持ちよかった。いや、ずっと気持ちよかった。身体を上下に動かし始めた。ほとんど何も考えていなかった。頭の中が空っぽの状態で、ひたすら動き続けた。腰を沈めるたびに、口から可愛い喘ぎ声が漏れていた。そして彼は絶頂に達した。
床に横寝に横たわり、顔を火照らせながら、絶頂の余韻に浸った。ディルドを入れたままだった。しばらく休んだ後、今度は脚を広げ、自分の手で出し入れを始めた。そして、彼は再び絶頂に達した。ペニスからも噴射し、床に液をこぼした。
それから1時間ほど、彼は疲れ果てるまでディルド遊びを繰り返した。そして、疲れ果てたビンセントは、ディルドを中から出すことすらせず、裸で脚を大開にしたままベッドに横たわった。そしていつしか眠りに落ちた。
その2時間後、チャックが帰ってきて、そんな格好でいるビンセントを見た。チャックはビンセントの身体を揺すって起こした。
「私の可愛いお友達を見つけたようね」 とチャックは笑顔で話しかけた。チャックはスカート丈の短い、ゆったり目のドレスを着ていた。
ビンセントは顔を赤らめた。「ああ、どうやら、そうみたい」
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