ディルドは防潮ゲートを開け、ビンセントの男らしさの最後の一片を取り除く結果になった。翌日、ビンセントとチャックはショッピングに出かけた。ふたりは、ドレスやキュートなスカートやセクシーなランジェリ、さらには(夏がもうすぐになっていたので)ツーピースのビキニ水着に至るまで、多量の衣類を買いこんだ。
加えて、ビンセントは耳とおへそにピアスをしたいと思ったので、ふたりで地元のタトゥ店に行った。タトゥ・アーティストはビンセントにトランプ・スタンプ(
参考)をするように説得した(ほとんど説得の必要はなかったが)。ビンセントは小さなピンクの蝶の柄を選んだ。
その夜、ふたりのboiは、セクシーなミニの黒ドレスに身を包み、地元のバーに出かけた。その店で、ふたりは男たちの注目の的になった。ふたりは男たちにしょっちゅう言い寄られたが、ビンセントの方は、まだ、そのステップに進む心構えができていたわけではなかったので、彼は独りで寮に帰った。チャックの方は、中東系の男に誘われて、その男の家に行った。
酔っていたのか、ビンセントはふらついた足取りで部屋に入り、そのままベッドに倒れ込み、眠ってしまった。
*
その次の週、ビンセントは、偶然、またあのグレッグと出会い、彼と何分か立ち話をした。グレッグは医学部の学生で、キャンパス内の黒人の男子寮のひとつに住んでいると分かった。グレッグはその週末に行われるパーティにビンセントを誘い、ビンセントはその誘いに乗った。
「友だちも連れてきて。楽しめるはずだよ」 別れ際、グレッグはそう言った。
ビンセントは、寮に帰る道、ワクワクしてお腹のあたりが落ち着かなかった。男子寮の他のboiたちも、同じくワクワクしている様子だった。もちろんチャックも大いに乗り気だった。
週末までの日々、もう2回ほどビンセントはグレッグと会ったが、それ以外には特に何事もなく時間がすぎた。ビンセントとグレッグは、電話番号を教えあった。
パーティ当日、ビンセントは極度にそわそわしていた。
セクシーに見える格好にならなければいけないとは分かっていても、何を着てよいか分からなかった。クローゼットの前、裸で立ちながら、たくさんのドレスやスカートやブラウスを見つめ、当惑していた。
「ブルーがいいよ」 部屋に入ってきたチャックが言った。「それを着ると君の目が引き立って見えるから」
ビンセントは微笑みながら、青いドレスを出して、ベッドに放り投げた。それから、パンティが入った引き出しを開け、マッチした青色のVストリング(
参考)を出し、早速、それに滑らかな脚を通した。そしてドレスを頭からかぶって着て、身体に整えた。
丈が短いドレスで、お尻の頬がかろうじて隠れる程度。ゆったりとしているので、ダンスをしたら、マッチした色のパンティが、男たちにもしっかり見えることだろう。前のところは胸元からお臍のあたりまでざっくりと切れ込んでいて、丸い形をしたおへそや、そこのピアスを見せびらかすデザインになっている。
ビンセントは鏡を見ながら、グレッグを夢中にさせてあげようと思った。
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ビンセントを含め男子寮のboiたちがいっせいにパーティ会場に現れた。すでに会場内は大いに盛り上がっていた。boiたちは中に案内されると、すぐに音楽に合わせて踊り始め、それぞれに逞しい黒人男性がパートナーとして名乗り上げた。
ビンセントはグレッグを探したけれど、どこにも彼の姿は見えなかった。そのうち、ビンセントはアルコールを差し出され、彼は受け取り、早速、飲み干した。すると、またすぐにおかわりが提供され、彼はそれもすぐに飲み干した。何回かそれが続き、ビンセントはかなり酔ってしまった。
だが、パーティなんだし、パーティではお酒を飲むのが普通なのだ。酔ったビンセントの前に男性が現れ、ダンスに誘った。ビンセントはその男とダンスをした。男はビンセントの身体を触りまくり、ビンセントもお尻を彼の股間に擦りつけて、それに応えた。
ビンセントは、ほんの1メートルほど離れたところでチャックが黒人男性と踊っているのを見かけた。相手の男は、チャックと身長差がほとんどない、背の低い黒人だった。
さらにもう何分かダンスをしていると、ビンセントもチャックも人混みに押された形で、一緒にされ、ふたりはそれぞれのパートナーと一緒にくっつきあうような形で踊っていた。さらにそれから何分か身体を擦り合わせ踊った後、チャックがビンセントの耳元に囁いた。
「向こうに行って、座らない?」
チャックに誘われるまま、ビンセントは彼について行き、ふたり、ふかふかのクッションの椅子へ向かった。ビンセントが座ると、チャックはストリップを始めた。ドレスの肩ひもを引っ張って解き、床にドレスを落とした。後には小さな白いソング・パンティだけを身につけたチャックがいた。
このストリップはみんなの関心を惹きつけ、すぐに男も女も、boiたちも周りに集まってきた。
チャックは踊り続け、ビンセントに身体を擦りつけた。一方のビンセントも酔いつつも両手でチャックの身体を擦り続けた。1分か2分ほどそうしていた後、チャックはビンセントに手を差し伸べ、椅子から立たせた。そしてチャックはビンセントの唇にキスをした。周りのみんながいっせいに歓声を上げた。
チャックはビンセントのドレスの肩ひもを引っ張り、彼のドレスも床に落ちた。パンティだけの格好になったふたりのboiが身体を擦り合わせながらキスを続ける。
そのうち誰かが叫んだ。
「パンティも脱いでしまえよ!」
みんな大騒ぎしながら、ふたりを見つめた。
チャックは肩をすくめ、パンティを脱ぎ、群衆に放り投げた。ビンセントは最初、ためらったけれど、まあ、いいかと思い、チャックと同じことをした。
素っ裸になったふたりのboiはさらに踊り続けたが、観客たちはそれでは満足しなかった。当然、いつの間にか、ビンセントはカウチに仰向けになり、脚を広げていたし、チャックは床に座って、ビンセントの脚の間に位置取り、指で彼のアヌスをいじりながら、吸茎していた。ビンセントにはペニスを吸われてもそれほど感じなかったが、観客たちのために、感じまくっているフリをして見せた。
だが、観客たちはそれでも満足せず、さらにもっと刺激的なものを求めた。それに促されて、ビンセントも床に降り、親友とシックスナインの体位になった。ビンセントとチャックは、互いに相手を舐め、吸い、そして指でいじった。それを何分か続けていた時、女の子のひとりが叫んだ。
「お尻とお尻でヤッテよ!」
どこかで見たことがある女の子だった。そして、あっ、あの子かとビンセントは思い出したのだった。その女の子は、彼がセックスした最後の女性だったのである。あの、パーティでセックスし、その後、素っ裸のまま放置した女の子。
(そもそも、どうしてそんなものが男子寮にあったのかなど、問うのは野暮だろうが)誰かが双頭のディルドを出してきた。ビンセントとチャックは早速、尻を向けあう姿勢になった。ビンセントはディルドが入ってくるのを感じ、ヨガリ声を上げた。指よりずっと気持ちいい。チャックもディルドが入ってくるのを感じ、同じように女の子のような声で喘いだ。そしてふたりは前後に動き始めた。ふたりのお尻の頬がピタピタ叩きあう音が聞こえた。やがてふたりは一緒に絶頂に達した。
だが、ふたりとも絶頂の余韻に浸っている時間はそう長くは与えられなかった。ぐったりとうつ伏せに突っ伏していたビンセントだったが、急にその細いウエストを誰かに抱えられるのを感じた。力強い手。そして身体を抱え上げられるのを感じた。振り向くと、そこには裸になった逞しい黒人男がいた。ビンセントは床に降ろされると、すぐに男の前にひざまずき、フェラチオを始めた。怪物のような巨大なペニスで、口に入れるのがやっとだった。
ビンセントは2分ほどしゃぶっていると、再びその男に抱え上げられ、今度はカウチの肘かけ部分に覆いかぶさる格好にさせられた。そして、その黒人男は、何ら予告も躊躇いもすることなく、ビンセントのアヌスに巨根を突き入れた。まさに串刺しするように。
「あああんッ!」
ビンセントは快感の悲鳴を上げながら、別のカウチに目をやった。そこにはチャックがいて、彼と同じようなことをされていた。
ふたつのカウチのそれぞれで、ビンセントとチャックのふたりとも同時進行的に本物の男に抜き差しを繰り返された。ふたりのよがり狂う声が部屋を満たした。ふた組とも、何度か体位を変えた。だがビンセントが気に入ったのは、最後に取った体位だった。ひとつのカウチに男二人が並んで座り、その男たちの上にビンセントとチャックがそれぞれ乗っかり、並んで身体をバウンドさせる体位である。
ふたりは、激しく身体を上下させながら、互いに顔を近づけ、キスをした。それを見て、観客は再び歓声を上げた。
チャックとキスをしたすぐ後、ビンセントはアヌスの奥に男が激しく噴射するのを感じた。
男は射精を終えると、ビンセントの身体を持ち上げ、ペニスを引き抜いた。そして、用済みのおもちゃを捨てるように、ビンセントの身体をカウチに置いて、どこかへ立ち去った。チャックの方も仕上げにかかっていたし、その仕上げになるまで時間はかからなかった。
やがてふたりのboiは強烈なオーガズムによる疲労と酒の酔いでぐったりとし、カウチの上、素っ裸のまま気を失ってしまった。全裸でうっとりとした顔をして、重なり合うように横たわるふたりのboiたち。そのふたりともアヌスから白濁を垂れ流していた。
*
翌日、ビンセントは割れるような頭痛を感じながら目を覚ました。前夜に何をしたかはぼんやりと覚えていたが、大半は思い出せなかった。身体を起こし、カウチに座った。部屋の向こうに男たちがふたりほどいて、ニヤニヤしながらこっちを見ている。その視線が気になった。
パンティはすぐに見つかり、素早く履いた。ドレスの方は見つけるのにもうちょっと時間がかかったが、見つけることができた。チャックの姿はどこにもなかった。ビンセントは、そそくさと急ぎ足で部屋から出、男子寮へと向かった。たくさんの男が彼に視線を向けているのを背中に感じた。
寮の部屋に戻ると、ベッドにチャックが寝ているのを見つけた。彼を起こそうとしたが、急にシャワーを浴びたい衝動に駆られ、チャックを起こすのは後回しにし、急いで服を脱ぎ、シャワールームに飛び込んだ。かなり時間がかかったが、何とかアヌスから乾いた精液をすべて洗い流すことができた。シャワーから出た時には、ちょっとはさっぱりした感じになっていた。
疲れていたので、前夜の出来事についてチャックと話すのは後にすることにした。
*
その、チャックと話しあう「後に」の時間は結局、ふたりには訪れなかった。ふたりともパーティでの出来事を思い出す気分になれなかったからである。そして、時が流れた。
グレッグからの連絡は、あのパーティ以来、途絶えていた。後になって聞いたところによると、グレッグはあのパーティに来ていて、ビンセントを見ていたらしい。ビンセントが、身体を求めて言いよる男たちと、誰かれ構わずセックスをし、激しく悶え狂うのを見ていたようで、ビンセントは彼が求めるタイプのboiではないと判断したらしい。
ビンセントはそれを知って落ち込み、回復できず、学生期間の残りをずっと、パーティから遠ざかって過ごした(一方のチャックは、その点ではビンセントとは歩調をそろえなかったが)。
その1年後、ビンセントは卒業し、有力な日本人ビジネスマンのアシスタントの職についた。人からの話しによると、チャックは結局、ストリッパーになったらしい。
そして再び時が過ぎた。ビンセントには女性の恋人ができ、その後、ふたりは子供を持つことにした。人工授精は成功し、子供が生まれた後、ビンセントは母親になった(boiは決して父親になれないことになっている)。彼は仕事を辞め、可愛い赤ちゃんboiを愛し育む専業主婦になっている。
世界の他のところではどんなことが起きているか? それについては、また今度。
おわり