父が何も言えずにいる間に、僕は話しを続けた。
「・・・だから、僕がアクメ社のポジションに移ったのも皆も分かると思う。今の3倍の収入を得ることになるんだ。・・・僕は、今の小さな会社の社員でいるのはやめたいわけで・・・」
そう言いながら、シンディに書類のファイルを渡した。
「・・・僕は離婚の手続きをファイルしたよ、シンディ。弁護士を見つけて、裁判所で採決してもらうまで、30日ある。彼女が不貞を働いたことの証人として、お母さん、ジョイス、テッドの3人の名前を書いておいた。もし、3人のうち誰か1人でも嘘をついたら、僕は、シンディの子宮にいる胎児に関してDNAテストを実施するよう主張するからね。そして、代理人に、嘘をついた人に偽証罪で訴えるよう依頼するから。この離婚に関して、僕は一切、慰謝料を払わないつもりだよ・・・」
「今、僕の家の前に出ている『売り家』の看板は、即時、撤去する。シンディ・・・、君はこれから24時間以内に自分の荷物をまとめて、家から出て行くように」
テッドが立ち上がった。それを見た僕は、大きな声で呼んだ。
「ロバート!! ダニー!!」
巨体の男が2人、裏のドアから家に入ってくる。
「テッド。僕は、君と殴り合いをしたら、確かに負けてしまうだろう。でもね、頭脳戦なら、居眠りしていても、君を簡単にやっつけられるんだ。ま、身体的に僕を脅かそうとする者が出てきたときのために、僕はここにいる2人の紳士を雇っておいたわけだけど」
テッドは、すごすごと腰を降ろした。
父はようやく口をきけるようになったようだ。父が発した言葉はただ一つ。
「どうして?」
「お父さん? お父さんはね、ウインプなんだと思うよ。よく分からないけど。僕がお父さんに言えることは、僕が感じていることだけだ。これまでの状況について、確かに、僕は許容してきたのは事実。妻もお母さんも愛していたからね。このドブねずみ野郎が、ずけずけとのさばり、やりたい方題するのを許容してきたよ。だけど、こいつは、僕の妻とセックスしたいときにセックスできるだけじゃ、満足できなかったわけなんだ。こいつは、僕がこれまで一生懸命働いて建てた家も手に入れようとした。さらに僕をとことん侮辱したし、僕が自分の命より大切に思ってきたシンディとお母さんにも、僕を侮辱させた。おまけに、シンディを妊娠させて、こいつの腐った心根を受け継いだ子供も作っちゃったしね。たいていの男なら、これでもうたくさん、と思うんじゃないのかな?・・・」
「・・・だけどね、僕が決心した原因は、そこじゃない。僕はシンディとお母さんに、助けを求めに行ったことがあったんだ。僕はゲイでもバイでもないので、テッドに性的に使われるのだけはごめんだと。そうしたらお母さんたちは、まるで、悪いのは僕の方のような態度を取ったんだよ。その態度で、2人が、僕のことなど実際どうでもよいと思っているのを、僕は悟ったんだ。まるで、街で拾った安娼婦にするのと同じような扱い。この2人にとっては、僕は存在していないも同然、存在意義があるとすれば、テッド、シンディ、お母さんの3人を性的に喜ばすためならば、いるのが許される、そんな存在になっていたんだよ。2人の頭の中ではね・・・」
「お父さん? お父さんは、そういう風に扱われるのも耐えられるほど、自分が結婚した、このあばずれ女を愛していてるのかもしれない。みんなの目から見たら、僕は、確かに、男らしい男ではないかもしれないよ。でも、もう本当に、僕はみんなにはうんざりしているんだ。僕の気持ちを変えようとしても、誰も何もできないよ。これから半年くらいで、みんなが当然、入ってくるものと思っていて、これまで気ままに吸い取ってきたお金が、干上がって、なくなってしまうだろうね。ところで、今の会社にいる優秀な社員はみんな僕と一緒に移ることにさせたよ。あの社員たちが、僕のスタッフの中心幹部になるはずだ」