家に着き、中に入った。家の中、部屋中、電気がついていた。
「クリスティ!」 娘が家にいるかもと期待して、あたしは大きな声で呼んだ。
すぐに階段を駆け下りてくる足音が聞こえた。クリスティはキッチンに来るとすぐに、あたしに抱きついた。嬉しそうに笑いながら。
「ママ、帰って来たのね! やっと帰って来たのね! 全部、お話しして! 何が起きたか教えて!」 信じられないほど興奮しながら、抱きついて叫んでいる。
あたしもクリスティを抱きしめた。ありったけの愛情をこめて抱きしめ、娘の愛情を噛みしめた。こういう愛が欲しかったの!
しばらくキツク抱きあっているうちに、ようやく娘も落ち着いてきて、両手であたしの背中を優しく撫でながらからだを寄せるくらいになってきた。あたしはクリスティの顔にかかっていた髪の毛を優しく払いのけ、改めて娘の顔を見た。ほんと、綺麗になったわねと我が娘ながら感心する。
「さあ、もう大丈夫よ」 とあたしは囁きかけた。「でも、まずは、あなたから話して? あなたとあなたの謎のお友達が何をしていたか。どうやって、あの写真を取りかえしたのかをね?」
ふたりでリビングに入り、カウチに腰を下ろした。クリスティは早速、彼女の冒険の出来事を話し始めた。友だちの名前はバーブラで、その子がフランクのアパートに行って、まだ保持していた鍵を使って、中に入ったらしい。フランクは、この元彼女にパソコンやネット上でのデータ保存装置へのアクセスをするためのパスワードを全部教えたままにしていたみたい。ほんと、愚かなヤツねと、それを聞いてあたしは意地悪な満足感を覚えた。いったんアクセスしたら、後は簡単で、あたしの写真を全部削除できたみたい。
「すごくドキドキしたわ。私たち、まるで、何かの使命を与えられた、シークレット・エージェントになった気分だったから!」 とクリスティは笑った。
「ママ? でも、フランクがどんな画像を持っていたか信じられる? すごかったんだから! でも、いちばんすごかったのは、ネット上のデータ保存場所にあったものだわ」 と娘はサスペンス染みた顔をして見せた。
「教えて、クリスティ! ママに教えて!」 思わず叫んでしまった。どんな画像だったのか、早く聞きたい!
「信じられないかもしれないけど、フランクは……男も好きだったのよ!」 と目に笑いの表情を浮かべてあたしを見た。
「ええ? どういうこと?」
「フランクは他の男と一緒になってるところの画像をいくつも持っていたの! もろに映ってる画像! 私の言ってる意味、ママも分かるでしょ?」 とクリスティはウインクした。
フランクはゲイだった? いや、バイか? ああ、なんと! 想像すらしてなかったわ! フランクは、その部分をみんなにバレないようにしてきたに違いないわね。
「で、あなたたち……その画像も消してきたの?」 いくつかは残してきたと期待して訊いた。
「まさか!」 とクリスティは叫んだ。「消すにはもったいないもの! バーブラはその画像をディスクにコピーして持ち帰ったわ。あっ、あとそれから、私たちフランクのパソコンのハードディスクを初期化してきたわ。バーバラはその方面に詳しくて、一見したところ、パソコンがクラッシュしたように見えるようにしてきたわ」
やったあ! ほんと、賢い娘たち! こうなったら、もしフランクが何かしようとしたら、こっちにも、すごい手段、すごい奥の手があるからね!
あたしはすっかり安心して、両腕を頭の後ろで組んで、ソファに寄りかかった。これで不安なことがなくなったんですもの! ゆったりした気分で、からだを思いっきり伸ばし、背伸びした。他人に操られることから解放された気分ほどすがすがしいことはないわ。期待したよりもずっと良い結果になったのも最高!
ふと見ると、隣に座るクリスティが、あたしの下半身を見ているのに気づいた。背伸びした時に、ミニスカートがめくれ上がって、パンティが見えてしまっていた。
「ママ? それって、ママが出かけた時に履いてたのと違うわよね」 と、不思議そうな顔をしていた。だけど、すぐ娘は目を丸くした。あたしの話しをまだ聞いていなかったことに気づいたみたい。
「そうだ! ママの話しよ! 話して、話して、話して! 全部、聞きたいの!」 とあたしの手を握ってせかした。
あーあ、やっぱり、そっちに来るのよね! あたしはちょっと考えた。あたしが他の女性のあそこやお尻を舐めたことを、どんなふうに娘に話したらいいの? 純真な我が娘に、あたしが女性にも時々惹かれてしまうことを、どう話したらいいの? 話せないわ! そんな考えを娘の心に植え付けるわけにはいかないもの!
結局、あたしはレイブンやリズとのことは省いて、この夜の出来事を話した。クリスティは、時々、短いコメントを挟みながら、熱心に聞いていた。すべてを知りたいのか、詳しく話してと何度か言っていた。