別のカップルがレストランに入ってきて、残念なことに、ウェイトレスは、そのカップルを俺たちの隣のテーブルに案内してしまった。隣とはブースの壁一枚だ。それを見てミセス・グラフがさらに神経質になるのが見て取れ、俺は立ち上がって、ミセス・グラフの隣に移動した。こうすれば、密着できるので、ひそひそ声でも話しが分かる。
いまさらながらに気づいたのだが、ミセス・グラフはスカートを履いていた。組んだ脚を動かすと、スカートの裾から生足の太腿が垣間見える。俺はシートの端に手を突いて、さらにミセス・グラフに密着した。
「それから、どんなことがあった?」 とひそひそ声で訊いた。
ミセス・グラフはコーヒー・カップを見つめたまま、ちょっと無言でいた。肩越しに隣のカップルに目をやっている。気が散っている様子だ。俺は腕を彼女の肩に回し、セクシーな肩の柔肉を軽く揉んでやった。
「いいから、話せよ。あいつらには聞こえないから」
実際、隣のカップルは自分たちの会話に夢中になっている。
「やっぱり病気の夫は私を必要としていると思ったし、こんなふしだら女みたいな振舞いはやめなくちゃいけないと思ったわ。というわけで、立ち上がって向きを変え、ホテルに戻ることにしたの。そしたら、あなたのお兄さんが私の手を握るのを感じた。振り向いて彼を見上げた。その時の彼の瞳! 私に催眠術を掛けるような瞳だった! お兄さんは私の手を握ったままビーチの方に歩き始めたわ。そして私も気がついたら、彼の後に付いて歩いていたの。抵抗して、手を離そうとしたけど、手をしっかり握られていたし。気がついたら、板張りの道を歩いて、海辺に向かっていた」
俺はゆっくりと空いている方の手を下へ降ろしていた。ミセス・グラフは深い溜息をつきながら、コーヒーカップを見つめていた。俺は手をゆっくりとミセス・グラフの方に動かし、白いスカートの上から太腿のところに手を置いた。
ミセス・グラフは俺に脚を触られたと気づき、ちょっとからだを引っ込めた感じになったけど、俺が、そのまま告白を続けるようにと、優しく太腿を揉んであげると少し落ち着いた様子だった。
ちょうどその時、ウェイトレスがウェイターを連れて俺たちのテーブルにやってきた。
「お客様、こちらケビンです。この時間からはケビンがお客様のお世話をいたします」
「こんにちは、ケビンです。何かご注文の時には、どうぞお声を掛けてください」 ウェイターはそう言って、微笑み、向こうへ歩き去った。