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親友 (5) 

翌朝、テレンスとマークとジェニーがそろってテーブルで朝食を食べていた時だった。テレンスが言った。

「昨日の夜は、おふたりとも楽しんでいたようだね。悪いけど、どうしても聞こえてきてしまって」

マークは顔を赤らめ、ジェニーは「ノーコメント」とだけ言った。テレンスはアハハと笑って続けた。

「さてと、もう仕事に行かなくちゃ。今日は、早めに職場に行って、解雇されそうになってる男に活を入れてやらなければいけないんだ。確か、ビリーと言ったな、彼の名前は。とにかく、じゃあ、また後で」

テレンスが出て行った後、ジェニーがマークに言った。

「昨日の夜はちょっとしたものだったわね?」

「ああ、そうだね」

「ちょっとあなたに見せたいものがあるんだけど?」

「仕事に行く準備はいいの?」

「今日はいいの。今日は休むって電話入れたから」とジェニーは立ち上がり、部屋から出ていった。

マークは、ジェニーの後ろをついていくと、ジェニーは寝室に入った。ジェニーはノートパソコンを持って、ベッドの上に座った。

「こっちに来て」

マークもベッドに上がり、彼女の隣に座り、パソコンの画面を覗きこんだ。そこには、ある記事が出ていた。「どのボイも知っておくべきいくつかのこと」という題名で、イボンヌ・ハリスという女性が書いた記事だった。

「何、これ?」 とマーク。

「いいから、読んでみて」

その記事は次の内容だった。


何ヶ月か前、オマール・ベル博士は大気に生物エージェントを放出しました。そして、それにより、この2ヶ月ほどの間に、我々の世界から、白人男性という概念が、事実上、消失する結果になりました。いかにもアメリカ人的な逞しい白人男性が消え、その代わりに、(大半は165センチにも満たない)小柄で、少年と女性の中間のような存在が現れたのです。ですが、そのこと自体は別に言うまでもないことでしょう。あなたがこの記事を読んでるとすれば、あなた自身がその変化を体験しているはずだから。この記事の目的は、適切な情報を提供することにあります。世間には、いまだに、男性のように振舞おうと必死で足掻いている白人男性がいます。白人男性とは呼ばずに、以降、ボイと呼ぶことにしましょう。あなたが今だ男性のように振舞おうとしているなら、率直に言って、それは間違いです。あなたは、男性ではないのです。あなたはボイなのです。ちょっと脱線してしまいましたね。この記事では、2、3の主要な問題を扱います。態度、セックス(いやらしいけど!)、それに服装です。それでは早速、論じていきましょう!

今述べたとおり、私が触れる最初の問題は、態度についてです。どういうことだ? と思うかもしれません。まあ、態度という言葉は、どういうふうに振舞うかを、ちょっと堅苦しく言った言葉ではありますが、振舞いにはいろいろな側面があるのです。たたずむ時の姿勢から歩き方まで、すべてを含みます。あなたがたボイがこれまでと違ったふうに振舞うようにしなければならないというのは、奇妙に思われるかもしれません。ですが、率直に言って、あなた方は、男性のように振舞おうとすると、非常にマヌケに見えてしまうのです。例えば、10代の女の子が、その父親のように振舞うことを想像してみてください。どう見ても、変でしょう? それと同じです。ボイが男性のように大股で歩くのは、非常に奇妙にしか見えないのです。

別にあなた方を否定しているわけではありません。ボイは、まさに男性と異なるので、異なった振舞いをすべきだということなのです。この点は、いくら強調してもしすぎることはありません。あなた方ボイのために、いくつか提案をいたしましょう。まず第一に、背中を少し反らすようにすること。そうすると、皆さんのお尻がとても愛しく見えるようになります。第二に、ちょっと腰を左右に振るよう、心がけること。男性はそういう歩き方が好きなのです(この点については、後でもっと述べることにします)。第三に、怖気づくことなく、エアロビクスをすること。皆さんは、常にプロポーションに気を遣う必要があります。太ったボイは、孤独なボイになってしまいます。個人的には、ストリッパー風のエアロビを勧めますが、どんなエアロビでもよいでしょう。以上の3点を述べましたが、最も重要なコツは、女性を観察し、その真似をすること! これにつきます。皆さんは、思っているよりずっと、女性に近い存在になっています(つけ加えれば、性的に何を求めるかも、女性と似てきてるのでは? これも後述します)。そして、女性は皆さんより、ずっと前からこれをしているのです。ですから、ボイの皆さん! 私たち女性を観察し、そして学びとってください!

ふたつ目の話題は服装についてです。大半の皆さんはおそらく、もう気づいているはずです。持っている服がどれも、全然、身体に合わなくなっていることに(もともと、女性的な体つきだった人は別ですが)。そういうわけで、皆さんは、衣服類をすべて買い直す必要があります。たいていのデパートは、ボイの客層を直接狙ったセクションをオープンさせています。ですから、手始めに、そこに行って買い物をするのが良いでしょう。でも、もし経済的に苦しい場合は、恐がらずに、皆さんの身体のサイズに近い、ガールフレンドや奥様、それに姉妹から借りるのもよいでしょう。

でも、いくつか注意事項があります。下着から話しを始めましょう。ボイはパンティを履くこと。そうです。ブリーフはダメ。トランクスもダメ。パンティです。皆さんの体つきが、パンティを履くよう命じているようなものです。パンティを好むようになること。私自身、新しいセクシーなパンティを履くのが大好きです。そういうパンティを履くと、自分に自信がみなぎります! ボイの中には、ご自身の女性性を完全に受け入れ、ブラジャーをつけ始めた人もいます。そのようなボイの方々の順応性には拍手をしますが、個人的な意見を述べさせていただけれな、ボイはブラジャーはつけるべきではないと思います。なんだかんだ言っても、ボイには乳房がないのですから(今のところは! あの狂ったベル博士が何をしたか、誰にもわかりません)。皆さんは女ではないのです。皆さんはボイなのです。ボイには乳房はありません。ですからブラジャーも必要ないのです。

アウターに関しては、基本的に女性が着るような服なら何を着ても適切です。スカートでもジーンズでも、ブラウスでもドレスでも、何でも。良さそうだなと思った服なら、着てみるべきです。ただ、注意してください。紳士服を着ると、変に見えるということ(身体のサイズにあっているのを見つけたとしてもです)。皆さんは決して男性にはなれないのです。婦人服売り場かボイ服売り場(あるいは子供服売り場)、そのいずれかに限定してください。

最後に、セックスについてちょっとお話しします。もし、気分を害されると思ったら、すぐに読むのをやめてください。

よろしいですか? まだ読んでくれてますか? よろしい、では始めます。ボイの皆さんは、性器の部分の大きさが欠けてきたことにお気づきのことでしょう。その部分の大きさに、恥ずかしい思いをなさってる方がたくさんいるかもしれません。ですが、恥ずかしいと思わないこと! ボイが小さなペニスを持っていることは、完全に自然なことなのです。最近の研究によると、平均的な白人男性のペニスは、勃起していない時には、3センチ程度であると示されています。しかも、もっと小さいことも珍しくないということです(実際、私の夫は2センチほどで、これ以上ないほど、キュートなんですよ)。ですから、ボイの皆さん、心配なさらずに! ペニスの大きさなど、これからはさほど重要なことではないのです。その理由をお話ししましょう。

皆さんは、アヌスが前よりかなり敏感になっていることにお気づきかもしれません。皆さんの身体の設計によって、そうなっているのです。その部分を、新しい性器と考えてください。女性にはバギナがあり、男性にはペニスがあります。そしてボイにはアヌスがあるのです。その部分を試すのを恐れないように。ちょっと肝試しにトライしてみると思ってください。彼女のバイブレータを借りてみるのが良いでしょうし(頼みやすいと思うなら、姉妹のバイブでもよいでしょう)。そして街に出かけてみるのです。すぐに、「天国に登る」ような気持ちになれると分かるでしょう(これは夫の言葉です)。

さて、皆さんの人生で最大の変化となることに話しを向けます。多分、もうすでに察しがついているかもしれませんが、そうです、ボイは男性と一緒になるべき存在だということです。その背後にある科学はいたって単純なことです。ボイは女性とほぼ同一のフェロモンを分泌するということです。研究では、ボイは男性のフェロモンに晒されると、女性と同じ反応を示すことが明らかにされました。それが意味することは何か? ボイの皆さん、ごめんなさい。でも、皆さんは、今や男性に惹かれるようになっているのです。しかも、男性も皆さんに惹かれるようになっています。男性に惹かれてしまう衝動に抵抗したかったら、抵抗なさってもかまいませんが、その衝動は自然なことなのです。この事実と、男性が皆さんを喜ばせる道具を持っている事実とを兼ね合わせれば、どうして、ベル博士があの物質を世界中に放出して以来、男性とボイのカップルが400%も増えたか、その理由が分かるでしょう。

ホモではなくヘテロなのに、どうして男性と一緒になることになるのか、このことを受け入れようとしないボイがたくさんいます。そういうボイは、基本的に、自分の妻やガールフレンドとレズビアンの関係になっていることを意味します。あるいは少なくとも、現実面でレズビアンになろうとしていると。女性の大半は男性と結婚します(あるいは男性と付き合う)。それを念頭に置きつつ、皆さんには、近くのアダルトショップに行って、何か……何か、貫くタイプのモノを見てみるとよいでしょう。それを見ているうちに、衝動が湧いてくるはずです。ですから、ご自分を満足させられそうなモノを手に取るのが一番です。

これを読んでる皆さんの中には、まだ、否定的に思ってる方がたくさんいるとは思います。ちょっと厳しい療法をする時かもしれません。いいですか? 鏡を見てください。何が見えますか? その姿は男性と言えますか? 決して言えないでしょう。女性と言えますか? それも違うでしょう。鏡の中、あなたを見つめているのはボイなのです。ボイはボイらしい人生を進むべきなのですよ。

精神科のカウンセリングを受ける必要があると思うかもしれません。それもいいでしょう。政府は、そういう皆さんのために国中にカウンセリング・センターを設置しました。そこに行ってください。そうして、新しい自分を受け入れるのです。この記事がお役に立てればを思っています。ありがとう。来週は、どんなパンティを選ぶと、どういうボイなのかが分かる、そういうお話をいたします。では、また来週。


*

マークは2回読み直し、そして顔をあげ、ジェニーを見た。ふたりは黙ったまま、抱き合った。ジェニーは小さな身体のマークを両腕で包み込むようにして抱いた。

しばらく経ち、マークは顔をあげた。「これからどうしよう?」

「あなたが何をしたいかによるわ。あなたが望まないことは、一切しなくていいのよ」

マークはちょっと考えこみ、そして言った。

「この記事。これの日付は2週間前だ。君はいつ読んだの?」

「その記事が出た日に」

「そういうわけで、あの服を」

「あれは婦人用の服。あなたに買った新しい下着は、男性からボイへの移行が潤滑に行われるように作られたパンティみたいね」

マークはジェニーを見つめた。何か考えごとに囚われたまま、ぼんやりとジェニーの顔を見つめていた。

「分からないけど……何もかもとても……とても変なんだ。自分が変わったのは知っている。僕も盲目じゃないから。でも、このことがどんな結果につながるか、真剣には考えてこなかった」

と彼はそこで沈黙し、そして続けた。「いや、まだダメだ。ちょっと自分で考えてみる必要があると思う。明日までには、ちゃんと気持ちを整理するよ」

ジェニーはにっこり微笑み、彼を優しく抱いた。


[2014/10/06] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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