次の木曜日。アーチーが持っているフライト・スケジュールによれば、クリスティが乗っているファーイースタン機は、この日も午前9時に到着することになっていた。先週、空港からクリスティを尾行してタウンハウスに戻った時の時間を考えると、この日も、クリスティは午前10時20分には家に戻ってくるはずである。途中、どこにも立ち寄らなければの話だが。
アーチーは例のコーヒーショップでタウンハウスを監視していた。そして午前9時50分に、あの忌々しい白人坊やがタウンハウスの前門を開き、ピックアップトラックから大きな箱を出し、それを抱えて中に入って行くのを目撃した。
時計を見た。あの可愛い東洋美女は、もう30分もすれば帰ってくることになる。それを考え、アーチーはチャンスがある間に、突撃することに決めた。
コーヒーショップを出て、車に乗り込み、タウンハウスの駐車場入り口の近くに止めた。あの白人坊やはトラックから荷物を運び出している最中だ。彼がピックアップから大きな箱を出し、タウンハウスに入って行くところを見計らって、アーチーは車から飛び出し、彼が部屋に入るちょうどその時、彼の真後ろについた。棍棒を手に彼の後頭部に一撃を加える。アーチーは気を失った男を引きずり、クリスティの家に入ったのだった。
この日、ジョンは大きな荷物をタウンハウスに持ち込もうと、ピックアップトラックをレンタカーで借りていた。そのことをクリスティは聞いていなかった。ジョンはトラックをタウンハウスの来客用の駐車スペースに停めていた。したがって、クリスティが車を専用スペースに入れた時、もちろん、そこにはジョンの車は停まっていなかったので、彼女は、ジョンはたぶん少し遅れてやってくるのか、それとも午前中に不動産関係の仕事が入ったのだろうと思ったのだった。
クリスティは、ひょっとして、あちらに停めてるのかもと、ちょっと期待して、来客用の駐車場にも目をやった。だが、そこにはトラックは停まっていてもジョンの車はなく、がっかりしてしまう。できれば、ジョンが仕事に出る前に、ちょっとだけでも会えたらと期待していたのだった。今回はずっとずっと会いたいと思っていたのである。
クリスティは車から降り、部屋に通じる階段を上がった。そして、何も疑わず、玄関ドアの鍵口にキーを差し込み、ドアを開けた。すぐに悪夢のような出来事に会うことになるとも知らずに。
家に入り、帽子を脱ぎ、カウンターに置いた。まずはまとめていた髪を振りほどいた。それから冷蔵庫に行き、オレンジジュースを出して、喉の渇きをいやした。そして廊下を進み、寝室に向かう。着替えをするために。
だが、寝室に入った瞬間、大きな手が伸びてきて、彼女の口を塞いだのだった。気がつくと、近くのベッドへとぐいぐい引きずられている。その男はクリスティよりはるかに大きく、はるかに力が強かった。足が床から離れるのを感じた。この男に、まるで羽毛のように軽々と抱きあげられている!
ジョン・ハンプトンは暗いクローゼットの中、ようやく意識を取り戻した。強烈な頭痛がする。からだを動かしたが、ロープで椅子に縛り付けられていて、身動きできない。
クローゼットの隙間から寝室の中が見えた。美しいクリスティの背後に巨体の黒人がいて、彼女の口を塞ぎ、押さえつけてる。
「んんんんんッ ……………………… んんんッ!」
必死に叫んでも、猿轡されていて、くぐもった声にしかならない! クリスティがクイーン・サイズのベッドに引きずられていくのが見えた。ベッドはここに来た時とは違ったふうに見えた。ベッドカバーが剥がされ、ピンク色のシーツが露わになっている。しかも、四隅の支柱から、それぞれ長いロープが伸びていた。
男がクリスティにも猿轡をつけるのが見えた。その後、各支柱のロープを引っぱり、クリスティの両手、両脚に縛り付けるのが見えた。ジョンは、なすすべもなく、ただその様子を見ているほかなかった。恐ろしさで、眼だけはギラギラと輝き、ベッド上の様子を見つめている。
男の大きな黒い手が、クリスティの胸を服の上からまさぐり、むにゅむにゅと揉むのが見えた。クリスティが両手両足を拘束されたまま必死に身をくねらせている。
「ああ、何てことだ ………… ううッ! …………………… あ、あいつ、クリスティを犯すつもりだ ……………… ち、ちくしょう! ……………… やめろぉぉぉッ!」
血走った目で、ジョンは心の中、叫び続けた。