ラブの頭にある計画が浮かび始めた。この弱そうな白人坊主は、俺の体格の大きさや強そうなところにびくびくと怖気づいているのがありありとしている。それに俺には仲間もついている。このケビンって野郎は、警察を巻き込むのは避けたいと言っていた。こいつ、前に何か問題を起こしているんじゃねえのか? ひょっとすると、俺たちが望むものを何でもこいつからぶん取ることができるかもしれない。
「おい、兄ちゃんさあ、こういうのはどうだ? そこにいるあんたの連れの人に損害を払ってもらうっていうのは?」
ラブは、タイト・スカートに包まれたメアリの尻を横目で見ながら言った。
「いや、申し訳ないんだけど、妻にもそのお金はないんだ」
「なんだよ、どっちも払えねえってかあ?」
ラブは、わざとふざけた調子で大声を上げた。
「これって、ひでえ話と思わねえか?」
他の男たちも、ラブがしようとしていることを察知し、彼の言葉に頷いて、声をそろえて、ひでえ話だと訴えた。
「でもなあ、ケビンの兄ちゃんよ、あんたの奥さん、他にも財産持ってるだろう?」
ケビンは、ラブの言い方に嫌な予感がした。メアリを見ると、瞳に不安そうな表情を浮かべている。
「どういう意味だ?」
ラブは沈みかかっている夕日に視線を向けた。
「あんた、俺の見るところ、弁償する方法は1つしかねえな。奥さんに、俺たちのパーティのお客さんになってもらうのさ。あのお日様が上がってくるまでには終わってるはずだ」
ケビンには、この男が何を考えているのか分かっていた。メアリに目を向けた。彼女は、大きな茶色の瞳に恐怖の表情を浮かべて彼を見ていた。この連中が考えていることをメアリが察しているのかどうかは分からない。だが、怖がっていることだけは確かだ。
「妻にそんなことはさせられない」
ラブは、太い腕をケビンの肩に回した。
「なあ、ケビンよお、あんた今、厳しい状況にいるんだぜ? あんたは、俺の車をこんなにしちまったってえのに、その弁償ができねえって言う。それに、俺の仲間にはむち打ちになっちまったのがいるかも知れねえんだぜ? もしそうだったら、もっと金がかかるんだ。なのに、警察沙汰にはしたくねえと来る。あんたには選択肢が2つしかねえんだよ。あんたの奥さんを俺たちのところに来させるか、俺たちが警察に電話するかだ」
ラブは歯を見せて笑顔になった。
「なんなら、あんたも一緒に招待してもいいんだぜ?」
ケビンは何も言わなかった。
「何とかして、ケビン。私、この人たちと行きたくないわ」
ケビンにできることはなかった。一瞬、車に飛び乗って、ここから逃げ出すことを考えた。メアリが車の中に留まっていてくれたらよかったのに。彼女が外に出ている以上、2人とも逃げるのは不可能だった。それに、この連中は、そもそも、自分がどんなことをしても、メアリを連れて行くつもりなのではないかとも思った。ひょっとして、自分に、かなり痛い目に合わせるつもりなのかも。だが、もし、ここで同意したら、連中は自分に危害を加えることはなさそうだ。連中は自分も一緒に連れて行くと言っていた。だとしたら、少なくともメアリと一緒にいられることになる。自分も一緒なら、連中としても、メアリに暴力を振るうことはないのではないか?
「彼女を連れて行け」
ケビンはそれしか言わなかった。メアリを見ることができなかった。
「ケビン!!」 メアリが叫んだ。