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裏切り 第10章 (11) 


「少なくとも、以上が、ジェフがダイアナに言ったこと。実際、私が思うに、スーザンはジェフに情報を操られていたかもしれない。あの時点では、ジェフはスーザンに、自分に疑いの目を向けられないようにしつつ、ダイアナがTガールだと知ってたと説明するのが難しかったのだろうと思うの……

「……いちばん可能性があるのは、ジェフはスーザンに、あなたが他の女と一緒にいたのを見たと吹き込んだことかも。どうやら、しばらく前から付き合っていた様子だったと言ったのかも。だから、スーザンは、あのモートンの店の前で、あなたとダイアナが一緒にいるところを見た時、それにダイアナがすごく綺麗で、あなたが明らかにダイアナに贅沢をさせているのを知った時、彼女、自分が浮気していたよりもずっと前からあなたが浮気をしていたと、簡単に信じ込んでしまったのよ。気が狂ったように嫉妬心でいっぱいになっていたから!……

「……ダイアナは、それをジェフから聞いた時、本当に天にも昇る良い気分だったと私に言ったわ。スーザンほど独占欲が強い女だから、もっと個人的なレベルで喧嘩を売らずに、簡単に諦めるなんて想像できないもの。私、どこか、間違ってるかしら?」

私は、あの月曜の朝に会社の前で起きた出来事を話した。アンジーは唇を歪め、ニヤリと笑い、そして、信じられないふうに頭を振った。

「あのアバズレ女、大嫌いだけど、私と似たタイプの女かもしれないわね。何か欲しいモノを見ると、必ず手を出し、自分のモノにしたくてたまらなくなる、そんな女。スーザンは、その後、現れた?」

私は頭を左右に振った。アンジーはうんうんと頷いた後、何か考え事をするように遠くに目をやり、そして、また私に視線を戻した。

「これも、私の推測にすぎないけど、あの時が、ジェフが爆弾を落とした時かもしれないわね。多分、ジェフはスーザンに、ダイアナを尾行して、彼女がシーメールだと分かったと言ったのよ。スーザンみたいな女なら、自分の男を『男』に取られたと知ったら、簡単に我慢の限界を超えてしまうでしょうよ。その瞬間から、スーザンはジェフが計画することすべてに同意したと思うの。でも、そういうところが、私があのおまんこ女を最低だと軽蔑するところよ! ふんぞり返って、自分だけはキレイなところにいて、汚い仕事は全部ジェフにやらせている。彼女、ジェフが仕事を上手くやってくれる限りは、ことの詳細すらどうでもいいと思ってるはずだわ」

「私は、ダイアナがこの件に最初から関わってるとは感づいていなかった。その点で、私はダイアナのことを完全に読みそこなっていたのかしら?」

アンジーは片手を私の頬に当て、顔を左右に振った。

「いいこと? よく聞いて、リサ! あなたは、あなたが女性をどんな気持ちにさせるか、自分で自分のことが分かっていないの。特に、ジェフ・スペンサーみたいな男と付き合った後にあなたと出会ったら、どんな気持ちになるか!……

「ジェフは、あの金曜の夜に、ダイアナを仕向けてあなたに電話をさせた。そうして、あの夜、デートをすることにさせたのよ。アレが罠の始まりね。そして、あの奇跡のようなバレンタイン・デーの週末の後、ダイアナは人生を完全に諦めて、あなたのマンションから出て行った。私も、同じことをすると思うわ。見たところ、あなたもダイアナに、あなたとスーザンとジェフとの本当の関係を話したんでしょ? そうよね?」

私は首を縦に振った。

「ダイアナは、次にジェフが接触してきた時、彼に、おカネは持ってていいから、それに、その人工的な強力ペニスもいらないと言ったのよ。あなたと一緒にいたいと……。それからね、事態がひどくなり始めたのは。ジェフはダイアナを叩くだけでは充分ではなかった。そもそも、彼がダイアナに暴力を振るったのは、それが最初でもなければ、最後でもなかったからのよ……」

アンジーはまた遠くを見る目つきになった。思考をまとめているところなのだろう。

「ねえ、リサ? ダイアナのような女の子はどうしてもアレを避けられないの……違法なこと……生きていくためには、どうしてもそういうことをしなくちゃいけないの。正規の仕事にはつけない。誰も雇ってくれないもの。ジェフは、ダイアナが行ってる福祉サービスについて知っていた。もちろん、お金持ちの施しなんかじゃなくって、シリアスなサービスのことよね。ジェフは、公衆電話に10セント入れるだけで、ダイアナを監獄に送り込めたでしょうね。もちろん、ダイアナの場合は男性犯罪者の刑務所。Tガールにとって、髪を丸坊主にされ、男として生きていき、同時に囚人たちのセックス玩具になって生きていくというのがどういうことか、想像がつく?」

私はぶるぶる震えた。

「私には、今なら、うまく対処できると思うけど」 と私は言った。

「可哀想なダイアナ。彼女はどうしようもない状況に置かれていたのよ。あなたへの愛と、死ぬより恐ろしい運命への恐怖のはざまで引き裂かれそうになっていた。あの時のダイアナは、あなたが持っている人脈も社会的つながりも、何も知らなかった。彼女は、あなたとジェフを比べて、ジェフの方が強く、あなたがジェフにボロボロにされるかもしれないと感じたのね。彼女は、そんなふうにだけはさせてはいけないと思った。ダイアナは、そうするための唯一のことをしたのよ」

「それは?」


[2014/11/25] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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