席に座るとすぐに、飲み物の注文を取りにウェイターが来た。背が高くて若い男の子。テキパキと愛想よく仕事をしている。ひょっとして、クリスティの若さや青い瞳、それにブロンドの髪の毛が彼をそうさせているのじゃないかしら、と思った。彼はあたしたちのテーブルに来ると、視線をクリスティにばっかり向けていた。
「ママ? ちょっとワインでも飲まない?」
「クリスティ。ママは運転があるの。飲めないわよ」
「グラス1杯だけ。それなら飲んでも変わらないわ」
クリスティと会話している間、例のウェイターはずっとクリスティの胸を見続けているのに気づいた。トップが薄地なので、胸の輪郭がはっきり見えている。それにはちょっとだけ、やきもちの気持ちを感じてた。だって、彼は一度もあたしの方を見ないんだもの!
「いいわ、じゃあ、1杯だけ。赤ワイン、グラスでふたつ、お願い」 とあたしはウェイターに伝えた。
「身分証明を見せていただけますか?」 彼はまたもクリスティしか見ていない。
「ああ、ワインはママが飲むの」 とクリスティは即答した。
「ああ、分かりました。そういうことでしたら、すぐにワインをお持ちします」
彼はもう一度、クリスティを見て、去って行った。
「うわあ、ママ、彼が私のことじろじろ見てたの、見た? タンクトップからおっぱいが出るのを見たがってるような感じだったわ」 とクリスティは笑った。
「ええ、ママも気づいてたわ。彼、ママの方には一瞥もしてくれなかったの」 とがっかりした感じで言った。
「ママ! あの人もただの男よ。私がこういう服装してるから、見惚れているだけよ」 とまた笑った。
あたしは、娘の胸や横の露出した肌を見ながら、にっこり微笑んだ。
「賭けてもいいけど、ママがもうちょっと肌を露出したら、彼、ママに夢中になるんじゃないかしら?」 とクリスティはウインクした。
「それはどうかなあ。クリスティ? あなたは綺麗だし、あの人はあなただけに興味があるんじゃない?」
「いいわ、じゃあ賭けてみる? 私なら、あの人にママだけを見つめさせることができるわよ」
あたしは、そんなこと無理と思いながら微笑んだ。「そんなこといいから。あなたはあなたで視線を浴びることを楽しんでなさい。ママはその必要ないから」
「でもママは、一瞥もしてくれないって言ってたじゃない? ちょっとだけでも見てくれたらいいのにって言ってたじゃない?」 と指で1センチくらいの隙間を作って見せながら言った。
「まあ、ほんのちょっとなら、確かにね」 とあたしは笑った。
「オーケー、じゃあ話しは決まりね。善は急げよ。まずは胸の谷間を見せなきゃダメ。トップのボタンを外さなくちゃね」
娘はそう言って、手を伸ばしてきて、あたしの地味な服のいちばん上のボタンに指を掛けた。すでにかなり興奮しながら、自分の胸元に目を落とし、胸の上のところが露出してるのを見た。
「ええっ、ママ、ブラをしてきたの?」 クリスティはがっかりした声を出した。
「当り前よ、ママは結婚しているんですもの。うふふ。人の妻たるもの、むやみによそ様にからだを見せびらかしてはいけないの」
「ダメダメ、それ、外さなくちゃダメ。これがうまくいくには、まずはそれが必要だもの」 クリスティは期待しながらあたしを見つめた。
はあ……と溜息をついた。もう、あたしったら、何をしてるのかしら? でも、どうしてだか分からないけど、心の奥で、今は娘と一緒なんだから大丈夫と思ってるところがあった。母親と娘がちょっとふざけてるだけ。と、そんな感じ。
「うーむ、クリスティが言う通りかもね。ブラくらいは外してもいいかも」
そう言って立ち上がり、テーブルの反対側に回り、テーブルに若干覆いかぶさるようにして娘の方へ前のめりになった。脚を組んで、腰を横へセクシーに突き出すような格好にもなった。どう? 大人の女の魅力よ? これだと、クリスティにはあたしの胸がこぼれ出そうに見えてるはず。
「じゃあ、ママはちょっとトイレに行って準備してくるわね? その間、クリスティは、あの哀れなウェイターさんの興味をつなぎ止めていて」
そう言って、くるりと後ろ向きになり、誰も見ていないのを確かめたうえで、ドレスの裾を掴んで後ろを捲り上げた。お尻にひんやりした空気を感じるまで。お尻が外に出てるのを感じ取れる。すぐにクリスティがハッと息を飲む声が聞こえた。それを聞いて満足したし、興奮してゾクゾクした。そして、ドレスを捲り上げたまま歩きだした。可能な限り長く捲り上げた状態を保ったままで。でも、他のお客さんたちがいるところまで来た後は裾は元に戻した。
ほとんど駆けるような足取りでトイレの個室に入った。ドアの鍵を掛け、ドレスを捲り上げて、パンティを脱いだ。ひっくり返して股間のところを見たら、薄い生地の真ん中のところに湿った染みができていた。それを見ながら、ゆっくりと、トイレに来たのはパンティを確かめるためじゃなかったんだと気づいた。ブラを外すために来たんだったわ! ほんと、あたしって、エッチなことばかり考えてる淫乱女ね!
ああ、またこの言葉! それが頭の中に浮かぶと同時に唇から小さく喘ぎ声が漏れ出てしまう! あたしは何をしようとしているの? 濡れたパンティは履きなおしたくなかったので、このまま、脱いだままでいることにした。クリスティは、自分の母親がどれだけ淫乱な母親なのか知ったら驚くはず。知る必要はないけど。
トイレにはハンドバックを持ってこなかったし、ドレスにもポケットがなかったので、脱いだパンティを丸めて、トイレット・ペーパーの後ろのところに置いて、それからブラを外した。
後でここに入った女の人があたしのパンティを見つけた時、どんな顔をするか見てみたい気持ちだった。その人、あたしのパンティをどうしようとするかしら? 何も考えずに捨てちゃう? それとも、もしかして……もしかして、匂いを嗅いだりするかも…。持ち帰るかも……あるいは、履いてしまうかも……。ああ、見ず知らずの女の人のあそこをあたしが履いてたパンティが包む! そんなことを想像したら、あそこがまたじゅんっと濡れてきたし、心臓もドキドキしてきたわ。
ダメダメ! 落ち着いて、ケイト! ドレスの裾をきちんと直し、トイレから出た。
「ずいぶん時間がかかったわね!」 テーブルに戻るとクリスティが言った。
娘の隣に座りながら、彼女にブラをポンと投げ渡した。
「あの可哀想なウェイターさんに見てもらえるよう、身だしなみを整えなくちゃいけなかったのよ」 と返事した。
テーブルにはワインが置いてあった。そのグラスを取り、ごくごくと一気に飲んだ。グラスが空になるまで。