アンジェラはコントローラを手にし、ゲンゾウが対戦モードを選択するのを受けて、自分のキャラクタが出てくるまでスクロールした。「古き良きユン・ソング」と自分のキャラクタを選択した。
「ふん、それがあんたの選んだキャラか?」 とゲンゾウは怪訝そうな顔をし、自分はサムライのミツルギを選択した。
「侮辱されたい気持になったらいつでも、韓国人キャラであなたの気持ち悪い日本人野郎をぶちのめしてやるから」
アンジェラはゲンゾウが依然としてカウチにゆったりと座っているのに気づいた。ゲンゾウが自分のことを強敵と思っていないのは明らかだった。
ゲームが始まり、第1戦はアンジェラが負けた。だが、これはゲンゾウを油断させるためのアンジェラの芝居だった。そして彼女は、第2戦、第3戦と立て続けにゲンゾウを叩き破った。
「ユン・ソング 勝利!」 ゲームの司会者が宣言し、アンジェラは2本の指を立ててVサインをして見せた。アンジェラが舌を突き出し、ゲンゾウを嘲笑すると、ゲンゾウは、ふんと鼻で笑い「ビギナーズ・ラックだな」とカップの酒を飲み干した。
「もう一回だ!」
だが、またもやアンジェラが彼をねじ伏せると、ゲンゾウは、あからさまに苛立ちを見せるようになった。
アンジェラは思いっきりできる限りの嫌味な笑顔をして見せて、握りこぶしを宙に掲げ、「ダイ・ハン・ミン・ゴク・マンセー![Dae han min gook manseh!]:大韓民国、万歳」と叫び、ゲンゾウに酒を渡した。
ゲンゾウは肩からヤンを降ろし、「ゴメン[Gomen]、ヤンちゃん」と謝り、気合いを入れ直すように、姿勢を正して座りなおした。
「ふーん、ようやく真剣に私の相手をする気になったってところ? ゲンゾウ?」
ゲンゾウはチラリとアンジェラを睨み、無視するようにふんと鼻を鳴らし、首をくいっとひねった。
「あんたが弱いのは知ってたが、思ってた弱さの半分程度だったので驚いてるだけだよ。手を抜いてやるのは、ここまでにする」
「約束ね」
それから2回、戦った後。「ユン・ソングの勝利!」
アンジェラはこぶしを宙に突き上げ、叫んだ。「うっしゃー!」
「バカ![BAGA!]」 ゲンゾウは画面に怒鳴りつけ、アンジェラからさらにもう一杯、酒を受け取った。