「心が望むものをすべて」 第5章 by AngelCherysse
もう、どうしようもなかった。私はぼろぼろになっていた。こんなことはなかった。まずは、できるところから、していく。
まず、すべてのレイプ被害者が行うべきことを行った。警察の性犯罪課のドッティ・ハンソン捜査官が私の通報を受け取った。彼女にエスコートされて病院へ行き、性犯罪検査(レイプ・キット:
参考)を受けた(もっとも、事後、シャワーを浴びた以上、私も捜査官も、使えるような証拠が出てくるとは期待していなかったが)。加えて、薬物検査と、STD(性病)検査も受けた(これを思うと身の毛もよだつ)。
「ロン」と「テリー」は以前から通報されていた。それも数回。彼らは、バーなどで、女の子を引っ掛けたその場で薬を飲ませ、後に、恐らくモーテルなどのどこか人の目につかないところに連れ去るのが普通だった。彼らが時間を置いて「遊んだ」犠牲者としては、私が2人目だった。彼らは、巧妙で入念だった。彼らは、言っていたのとは異なり、問題のスポーツクラブの従業員ではなかった。これまでの事件では、彼らは住所や電話番号も明らかにしていない。現時点では、警察は、2人の名前が本当の名前なのかも、この地元に住む者なのかすらもはっきりしていなかった。
コンピュータのデジタル・スライドは、その点、捜査に関して突破口となりえるものだった。まして、そこに写っていたダニーの存在も、そうである。ドッティにはダニーのことを捜査外に置くよう、苦労しつつも、何とか説得することができた。少なくとも今は捜査外とされている。
ドッティ捜査官は、ダニーに対して全国指名手配しそうな勢いだった。・・・あなたがレイプされているのに、ご主人はそれを見ていて、止めようとしなかった? その直後に姿を消した? なのに、あなたは少しも疑っていないの?・・・
私は彼女に説明した。これまでも私は不実をしてきたこと。それからすれば、ダニーは、目にしたことが、それまでとほとんど同じようなことではないと考える理由がなかったのだろう・・・もっとも、それまでと同じと言っても、(彼女にとっては)極度に侮辱的なことだったのは確かだが・・・いずれにせよ、そのことで彼女が突然に姿を消したことを簡単に説明する。彼女には、ひょっとすると、私が完全に理性を失っているように見えたかもしれない。もしそうだとしても、まあ、私が気が変になるほど激しくセックスされているからだと彼女が考えたのだろうと思うし、そういう風になるのは、行為の前に1杯か、いや、2杯か3杯、お酒を飲んでいると、私の場合は特に変わったことであるわけではないから。
ドッティは依然として納得していなかったようだが、私がダニーの写真を見せたら、その様子が変わった。その写真は、モールにある、飛び込みオーケーのグラマー写真スタジオ(
参考)で撮った写真の1枚だった。裾が短いタンクトップで、胸の谷間と、両手で回しきれる程の細いウエストを見せびらかし、罪深いほどミニのフレア・スカートにプラットフォーム底のアンクル・ストラップ・サンダルを履いた姿だ。彼女のおへそにピアスで穴あけしたが、その傷も癒えていたので、私はそこに可愛い小さな宝石リングをつけた写真が欲しかったのである。
それをドッティに見せたとき、私は、事実上、彼女のあんぐり開けて落ちそうになったあごを押さえ、私の手で元通りに口を閉じさせてあげなければならなかった。
「これがあなたのご主人?」 彼女は信じられないという風に訊いた。
「違います。私の妻です」 私はにやりと笑いながら答えた。
ドッティは頭を振りながら、興味深そうに笑みを浮かべた。そして溜息混じりに言う。
「分かったわ。あなたの言いたいことが」