その後の2ヶ月の間に、世界中で、事態が平穏な状態に戻っていった。ボイたちは、振舞いがますます女性的になっていき、すぐに、法的にもボイたちを女性と似た存在として認識する法律ができた。すなわち、ボイも男性と結婚することが許され、公的な場所での身なりに関しては、女性と同じく胸部を露出すると、不道徳的な露出を禁ずる法律の対象とされるようになった。
ブランドンはどうなったかと言うと、彼は高校を卒業し、夏は特に目立った出来事もなく過ぎた(生れて初めてビキニを着たということは別として)。
毎週、土曜日には、フットボールの試合で、他の女子たちと一緒にチアリーディングをした。ユニフォームは、着慣れるにはちょっと時間がかかったが、しばらくすると、むしろチアのユニフォーム姿の自分が可愛いと感じるようになった。
ブランドンは、自分がフットボールの選手たちの関心をマグネットのように惹きつける存在であることに気がついた。どの選手も自分のことを大好きに思っているみたいに思えた。そう言うわけで、ブランドンも選手たちに色気を振りまいた。とは言え、選手とは一切セックス拒み続けた。そう、彼は品行方正なボイなのであった。
だが、そんな選手たちの中に、ひとりだけ、非常にしつこく彼に言い寄る選手がいた。その選手は、ブランドンが昔とっていたポジションである後衛のポジションをプレーしていた。そして、何と言っても男性性を絵に描いたような存在だった。フットボールのタイトなパンツの中、大きなおちんちんの輪郭がはっきりと浮き出て見えた。それを見てブランドンは、文字通り、口の中に涎れが溢れてくるのを感じたし、彼を見るたび、お尻の穴が湿ってくるのを感じた。その選手の名はリロイという。
ふたりは何度かデートをし、ブライアンは喜んで、リロイにフェラをし、気持ちよくさせてあげた。だがふたりは決してセックスはしなかった。
試合シーズンが進み、チームは勝利を重ね続けた。そして、何と、彼らは全国チャンピオンシップで勝利したのだった。さらにすごいことに、その勝利を決めるタッチダウンを行ったのはリロイだったのである。
試合の後、ブランドンはフィールドに駆けだした。そして、ようやくリロイを見つけると、ジャンプして、リロイの大きな黒い腕の中に飛び込み、情熱的なキスをしたのだった。
「今夜ね」
キスを終えると、ブランドンはそれだけを言い、お尻を振りながら歩き去った。
*
その2時間後、リロイがブランドンの寮の部屋を訪れた。ブランドンは小さなGストリングのビキニだけの格好でドアを開け、彼を招き入れた。ブランドンの乳首は小さなダイヤのように尖っていた。
リロイはブランドンのパンティを引きちぎるように脱がし、床に捨てた。その間、ふたりとも何も言わなかった。ブランドンを素裸にすると、リロイは彼を抱き上げ、ブランドンは両脚を彼のからだに巻きつけ、しがみついた。
リロイは片腕でブランドンを抱きかかえたまま、ズボンのボタンを外し、床に降ろした。そして、次の瞬間ブランドンは熱い硬直が自分のからだの中に入ってくるのを感じた。
ああ、やっぱり、あのディルドなんかよりずっといい。ブランドンはそう思った。
リロイは低い唸り声を上げながら、ペニスを根元までブランドンの奥深くに埋め込んだ。そうしてから、ブランドンの背中を壁に押しつけ、立位のまま激しく出し入れをした。
ブランドンは何度も快感の悲鳴やヨガリ声を出し続けた。だが、リロイは持続力の点でも優れていた。その夜、ふたりはあらゆる体位で交りあった。中でもブランドンが好んだ体位は、後背位である。顔を枕に埋め、お尻を高々と上げ、後ろから逞しいモノで貫かれる。これが一番好きだった。
その夜は魔法がかかったような魅惑的な夜だった。
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その2か月後、リロイとブランディ(ブランドンは名前を変えた)は、判事の前で結婚した。結婚式は挙げなかったが、ふたりともその必要を感じなかった。ふたりは愛しあっていた。
リロイとブランドンを別にして、世の中がどうなっていたかについて言えば、実にドラスティックに変化したと言ってよい。グレート・チェンジの後、当初、白人男性の多くが変化に対応できず、職を失った。彼らが以前に比べて能力が落ちたわけではない。なんだかんだあっても、彼らは以前と同じ人間なのであるから。だが、事実上、外見的に別の人間になったことがもたらす心理的な効果により、彼らに対する外部からの認識や見解が変わってしまうのは必然だった。その結果、多数の小柄で女性的な白人ボイたちは、少なくとも最初は、職場内で徐々に従属的な立場へと追いやられ、本来だったら彼らが主導すべきだった職から解雇されたのである。
だが最終的には、これらの白人ボイたちの精神も平常に戻り、(もちろん以前より女性的になってはいるが)本来の自分自身を取り戻し、元の職に復帰したものも多い。とは言え、この一連の変化により、別の者たちにも影響が生じたのである。女性や黒人男性の多くが、いったん空席となった権力あるポジションに滑り込んだ。そして、その結果、労働市場での平等化の動きが大きく前進したのだった。
文化的にも、これに負けず劣らず大きな影響が生じた。世界が、事実上、ふたつのジェンダーがある世界から、3つのジェンダーがある世界に変わったという事実の他にも、巨大な変化が生じたのである。(少なくともアフリカ系アメリカ人と白人との間の)レイシズムは事実上、消失した。確かに、ごく小さなレイシズムは依然として残ってはいた。皮肉にも、黒人女性で、白人ボイをあからさまな敵意を持って見るものが増えたことである(ヘイトというより競争の感覚からのことであるが)。そういうことはあっても、レイシズムは極度に周辺的なムーブメントになったのは事実である。
ただ、記しておくべき不思議なことがいくつかある。
ひとつは変化が始まってすぐに、豊胸手術を受ける女性が増えたことである。他人にボイと間違われないようにとのことなのだろう。
また、ボイになった後も女性とカップルのままでいる者も多かった。そして、その大半が子供をもうけた(人口受精によってではあるが)。その結果、白人ボイが生まれ続けるというサイクルは永続化した。
さらに、人口構成は女性とボイの集団が男性の集団を上回る傾向が続いたが、次第にそれが平均化し始めたことである。新しく生まれた子供たちの大半が、異人種の両親から生まれるようになったからである。
さて、未来はどうなって行くのだろうか? これは誰にも分からない……
おわり