01
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02
これは被験者番号23についての説明である。このテストの目的は、例の化合物が被験者を変えるかどうかを決定することではない。被験者が変化することは、これまでの複数の被験者から、すでに確定している。その変化が望んだスケジュールで発生するよう、化合物の調整も行ってある。しかし、このテストの目的は、脳に若干の変化を加えることが必要かどうかを決定することにある。
その必要はないというのが仮説だ。性的指向の変化を促進させるには、身体的変化、ホルモンの変化、そしてフェロモンの変化だけで充分であるはずであるということだ。
現実の生活状況を再現しようとする代わりに、普通の白人男性に化合物を与えるという単純な方法を取った。
2年間を置いて、この人物を再訪する。その際には、どうして問題の化合物を彼に用いたかについて捏造した言い訳を伝えるつもりだ。
個々人による変動を排除するため、同じ実験を他のもう4人(24番,25番,26番,27番)に対しても行うだろう。
私の仮説が正しければ、2年半以内に例の化合物を世界に放つ準備ができるだろう。
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03
僕はおちんちんが大好き。この通り。言った通り。こんなことをするなんて考えたことがなかったけれど、でも、やっている。
でも、これはどんな意味があるだろう? これをして僕はどうなるのか? つまり、何と言うか……僕はこんなことをするべきじゃないはずなのに。そもそも僕は女の子ではないし、ゲイでもない……少なくとも自分ではそう思っている。つい何ヶ月か前までは、違っていた。
多分、説明が必要。ああ、これは僕。知っているよ…男には見えないことは。前はこんなじゃなかったし、こんなふうになりたいと思ったことももちろんなかった。
最初から話すべきなんだろうと思う。僕の名前はシェーン。数か月前までは、ごく普通の男子学生だった。男子寮に入って、スポーツをしたり、筋肉トレーニングをしたり。そして、もちろん女の子が好きだった。
以前は身長185センチで体重も90キロ以上あったなんて信じがたいでしょ? 時々、自分でも信じられなくなる。でも今は鏡を見ると……
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04
こんなこと好きになってはいけないとは分かってるけど、おちんちんを口に入れると、何というか……すごく当然のことをしてるように感じる。
ともあれ、僕は普通の男だったんだけど、ある日、男子寮に歩いて帰る時、知らないふたりの黒人男に襲われたのだった。もちろん抵抗して払いのけようとしたけど、相手はふたりだから。そして、妙な展開になったのだ。
彼らのひとりが吸入器(喘息の人が使うようなやつ)を僕の口に当て、もうひとりが僕を抑えこんでボタンを押したのである。そして……僕はその場で気を失ってしまった。でも、連中は僕をその場に放置して去って行った。お金すら取らずに。まったく妙な出来事だった。
2日ほど経って、僕はそんな事件のことは忘れていた……声が変わるまで。ついさっきまで、普通のバリトンの声だったのが、次の瞬間、女の子の声みたいに高い声に変わったんだ。言うまでもなく、病院に行った。医者は多分、風邪でもひいたんだろうと言った。僕もこの通りウブな人間だから、その医者の言うことを信じた。
それから2週間ほど経ち、今度はからだじゅうの体毛が抜け落ちてるのに気づいた。多分、何日か、あるいは何週間かに渡って進行していたんだろうけど、それに気づいたのは一瞬の出来事だった。
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05
僕はまた病院に行った。医者は僕が彼の邪魔をして、何か良からぬことを企んでいると思ったんじゃないかと思う。なので、僕は、その件は放っておくことにした。
その後は病院には行っていない。でも、からだの変化についてリストアップし始めた。……そうして見ると、実際、変化が生じていることに気づいたんだ。
それから半年に渡って、僕の全身が変化しているように思えた。身長は158センチまで縮んだし、体重も46キロまで減ってしまった。からだの形も変わっていた。お尻がちょっと丸くなっていて、腰幅が大きくなっていた。
それに、ペニスも……以前のサイズの半分以下にまで小さくなっていたんだ。
僕は怖くなった。だけど、医者に診てもらいに行く気にはならなかった。体調が悪くなったわけではないし、こんなからだになって恥ずかしかったから。
今から思うと、医者が僕のからだを診ても何もできなかっただろうなと思う。