僕は数秒間、ぽかんと口を開けてマリアに見蕩れていたと思う。彼女は僕に近づき、手を握って言った。
「ズボンの前の盛り上がりからすると、あなたが女の子を好きなのは明らかなようね。だから、多分、あなたは完全なゲイじゃないと。じゃあ、私についてきて。仕事をしなくちゃね」
マリアの後ろについて歩きながら彼女に言った。
「僕は全然、ゲイなんかじゃないからね」
「うふふ。でも、今朝、あなたが着ていた服を見たら、そう言われてもちょっと納得しにくいわよ。何と言っていいか、可愛いピンクのネグリジェ姿でうろついている男がいたら、ベッドの中でも喜んで女の子の役割をやっているはずと思うから。ひょっとすると、あなた、バイセクシュアルかも。それもオーケーなのよ。って言うか、私自身も場合に応じてどっちにも切り替えるし。私のボーイフレンドは気づいていないけど」
言い返そうと思ったのだが、その前に、僕たちはキッチンについてしまった。マリアは、夕食の準備のためにしなければならないことを説明し始めた。さらに、どこにワインが貯蔵されているか、夕食と一緒に味わうにはどのワインが良いかを僕に教えてくれた。
マリアは、僕が知っておくべき事項をすべて説明し終えた。
「私はそろそろ出発することにするわ。だから、あなたも、シシーしか着ないような服に着替えてもいいわよ。明日も、朝食に来る時、怖がらずにあなたの部屋にあるメイド服を着てきていいわよ。私も、あなたがすっかり着飾ったらどれだけ可愛くなれるのか、見てみたいと思っているの」
「どうして、あのメイド服のことを知っているの?」
僕は、マリアがどうしてあの服のことを知っているのか、すっかり頭が混乱していた。
マリアは僕の手を握った。
「あなたがミス・トレーシーのところにいる間に、あなたの部屋に入ったの。私は、あなたがシシーに振る舞うことを、私の兄の時のように、強く押し進めたいとは思っていないわ。ただ、あなたが本気でそれに進む気なら話は違うけど。あなたの部屋にあるあのたくさんの可愛い服を見て、私はあなたもシシーだと分かったの。そういう風にあなたのプライバシーに立ち入るのは良くないことだとは分かっているわ。だから私を許してね。さあ、もう行かなくちゃ。私、今日は彼氏にビーチに連れて行ってもらうのよ」
僕が何も言えずにいる間にマリアは出て行ってしまった。
マリアが出て行った時までに、僕はすっかり混乱してしまっていた。どうして寝室のあの服が僕のものだとマリアは思ったんだろう? 彼女は、僕の前のメイドたちがあのユニフォームを着ていたのを見て知っていたに違いないのは確かだ。あのメイド服は新品であるように見えるものの、彼女があの服を見たことがあるのは確かだ。それに彼女が僕のことをシシーと呼んでいたことも気に食わなかった。一晩、僕がナイティを着ていたというのは確かに認めるよ。でも、そうだからと言って僕がシシーだとはならないじゃないか。それに、どうしてマリアは僕をゲイだと思ったんだろう。着ている衣服で、その人がゲイかどうか決まらないじゃないか。例えば、女の子で男子服を着ている人がいっぱいいるけど、だからと言って、あの女の子たちはみんなレズビアンということにはならないんだから。