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ポルノ・クイーンの誕生1(2) 

して触れてみたくなる。鼻はボタンのように可愛らしく、濃い青の瞳と厚い唇が魅力的だ。身長は180センチはあるが、体重は45キロに満たないのは確かだ。脚は細いがとても長く、ウエストは驚くほど細い。それでも胸は巨大と言ってよく、とても小さめに見積もってもDカップであると思う。

トレーシーは、いつも誰かとの出会いを求めているように見えていたが、僕には、よく、夫とランチを食べることになっていると言っていた。でも、彼女は、わざわざそのようなことを言って、僕に結婚していることを伝える必要はなかった。というのも、彼女の指にある大きな氷の固まりのようなものが見えていたから。それは僕が知っている中でも一番大きなダイヤモンド・リングだった。あれだけでも一財産になるのは確かだと思う。

彼女の笑顔は温かく人を惹きつけた。彼女が微笑むたびに僕の唇にも笑みがもたらされたと思う。彼女はいつも僕に 「調子はどう?」と尋ねてくれたが、僕は僕の事情を何一つ彼女に話すことはできず、「万事順調だよ」としか答えなかった。彼女と一緒にいるだけで、どんなことも気にならない気持ちになれそうだった。

いや、勘違いしてもらっては困る。どうやっても、トレーシーが僕と何らかの性的な関係になるなどあり得ないのは、僕も自覚していた。つまり、彼女は僕の住む世界とはあまりにもかけ離れていて、まるで僕と彼女は別の惑星の住民であるようだったということである。それでも僕は、もし彼女とベッドを共にしたらどんな風だろうと思い浮かべざるを得なかったのも事実だ。

7月の末になると、トレーシーの天使のような笑顔ですら、憂鬱な状態から僕を介抱することができなくなっていた。2ドルのコーヒーに対して彼女が置いて行ってくれる8ドルのチップですら、僕の塞ぎ込んだ気分を直すことはできなかった。トレーシーは僕に何か困ったことが起きていることは察していたが、その時は彼女は何も言わなかった。

仕事の勤務交替の時間が近づいたとき、トレーシーは再び店に来て、僕の担当する席に座った。僕がコーヒーを持っていっても、勤務終了の時間が来てしまうので、彼女が置いていくチップを手にするのは、次のウェイターの人になる。

トレーシーの前にコーヒーを置くと、彼女は突然、僕の手を握った。

「スティーブン? 仕事の時間が終わったら、この私が座っている席に来て一緒に座ってくれる?」

うん分かった、そうするよと返事するまで彼女は手を離してくれなかった。

勤務時間が終わり、僕はソーダを手にトレーシーの席に腰を降ろした。彼女は優しい笑みを浮かべていた。

「最近、あなた、何か心がここにないみたいよ。何か悩みでもあるの? 私に助けられるようなこと、何かない?」

悩みなんか何もないと答えつつも、僕は彼女の目を見ることができなかった。向かいに座るトレーシーはテーブルの向こうから手を伸ばし、綺麗にマニキュアをした指で僕の横顔に触れた。

「私に嘘はつかないで。困ってることがあるのは分かるわ。さあ、私に話してみて」

なぜかと訊かれても困るが、僕は抱えている問題をすべてトレーシーに話し始めていた。彼女は注意深く話しを聞き、僕の父の態度に嫌悪感を示していた。僕は、父との気まずい関係については、父よりも僕に多くの責任があると説明した。

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