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報復 第2章 (1) 

「報復」 第2章

6月第3週

その週が終わるまで、スティーブは、ピックアップに乗り込み、どこかに出かけようとするたび、そろそろ彼を連行しにパトカーが来るころだろうと、半ば予想しながら過ごした。あれから2日経っても、真夜中に玄関をノックする音がすることも、建築現場に制服を着た警官が彼を逮捕しに来たりすることもなかった。彼は次第に心が落ち着いてきた。あの日、バーバラと一緒にいた男に、通報しても構わないと苦々しく約束したものの、不安であるには変わりはなかった。地方検事がスティーブに罪を宣告した場合、彼には何ら合法的な弁解の余地がないのは分かっていたからである。

逮捕されるのを待つ間、スティーブは兄のジョンが推薦してくれた女性弁護士のところに通っていた。ジョンに言わせると、彼女は法廷ではブルテリア犬(参考)のように攻撃的らしい。ついこの前も、ジョンの友人の1人を担当し、彼の妻が不貞を行ったという証拠がほのめかし程度しかなかったにもかかわらず、3人の子供の養育権をもぎ取ったという。スティーブは、当事者双方に責任を課さない、単純な離婚以上、何も求めていなかったが、それより先に進み、彼のために極度に攻撃的になってくれそうな弁護士を立てるのも良いかもしれないと思った。そうすることが彼の心境にピッタリするなら(参考)、の話だが。

家の鍵は、金曜日までにすべて、交換した。バーバラの衣類の大半は、30箱程度の衣装箱に詰め込み、彼女の個人的な持ち物も小さな箱に詰めた。スティーブは、その作業にだらだら時間を掛けなかった。衣装棚や引き出しから、クローゼットの横棒に吊るされているものまで、ありとあらゆる衣類を一掃し、手当たり次第に、近くに置いてある箱に放り投げた。

衣類を詰めた箱はすべてテープで止め、ガレージにもって行き、積み上げた。間もなく、彼の元妻の身分になる女が、ここに来て、その箱を持っていくだろう。一応、片付けた後も、何度も箱に入れ忘れた物が出てきた。スティーブは箱を1つだけ開けたままにしておくことに決めた。新しい小物を見つけ次第、その箱に放り投げられるようにである。

土曜日になり、まだ彼は自由の身のままだった。スティーブは、バーバラとやっていたあの馬鹿男は警察に通報しなかったのだと判断した。この3日間、毎日、バーバラから数回にわたり電話が来ていた。だがスティーブは、それには出なかった。電話に表示される発信者の番号が彼女の携帯電話の番号だったり、彼女の親族の電話番号だった場合、いずれも彼は無視した。電話に出ないことでバーバラが怒っているに違いないのは分かっていた。だが彼は気にしなかった。

また電話が鳴った。義理の父親の持っている携帯電話からだと表示されていた。スティーブは、衝動的に、そろそろ沈黙を破る時期が来たと判断した。

「もしもし、ロイド?」

スティーブは静かな声で受話器に話しかけた。向こうでは、少しの間、沈黙があった。

「ああ・・・スティーブ!」

バーバラの父親は、スティーブが電話に出るとは、正直、予想していなかったようだった。

「はい。何か御用でしょうか?」

「ああ・・・スティーブ・・・えっと、今回のことについては私もただただ済まないと思っている・・・つまり、君とバーバラの間の問題についてだが。私は・・・いや・・・私たちは、一度、君に家へ来て、話をしてもらえたらと思っているんだ。私たちが、君の状態を考えているというのは分かっていると思うし、誤解したまま、もっと事情が悪くなるのは避けたいと思っているんだよ」

スティーブは、しばらくの間、何も言わなかった。このコードレスの受話器をテーブルに置いて、そのまま、立ち去ってしまおうかとも考えた。この電話は、受話器を下に向けておくと、自動的に通話を切るようにできている。そうしてしまいたい気持ちになった。

「スティーブ?」

スティーブはさらに少し沈黙したままだった。

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